第17話 バドの道も一歩から
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「なんだ、これは...?」
一体、何が起こっている?俺はさっきまで体育館にいたはずだが...
「もしかして、『夢』だったのか?」
夢にしてはリアルだったし、夢って感じが全くしなかった。
いや、そもそも夏希とあんなにイチャイチャしながらバドミントンをできるわけないか。
「はぁ、気を取り直して学校へ行く準備をするか......ん?」
『午前 8:20』(SHR開始まで残り20分)
「...うん、終わった」
─数十分後。
「はぁ、はぁ、はぁ」
全速力で廊下を駆け抜ける。
SHR開始まで後、1分と言ったところだろうか。
「転校してきたばかりで遅刻はまずい!夏希に嫌われる!!」
『遅刻する人にはバービー100回やってもらうわ』
それもまた良っ...こんな状況で冗談は辞めてくれ俺。
そんなことを考えているうちに教室が見えてきた。
間に合う!
「ガラッ」と思いっきりドアを開け教室へ入る。
そして、それと同時にチャイムも鳴る。
「お、ギリギリセーフだね!碧生」
「すみません、先生」
よし、ギリギリセーフだ。これなら許容範囲内だろう。
「(ジーッ)」
「ん?」
どこからか目線を感じたが気のせいか?
まあ、俺のことを見る奴なんていないか。
「ではではSHRを始めます。号令」
「起立、気をつけ、礼」
「「「お願いします」」」
「お願いしますっ」
そんなこんなで今日も楽しい楽しい学校生活が始まる。
朝からバタバタで疲れた。が、そんなことを言っている場合ではない。
今日も放課後までにできるだけ夏希と話しができるように立ち回らなければ。
─そして、特に変わったことはなく、あっという間に放課後へ。
「碧生は今日から部活か。頑張れよ」
「あぁ、飛彩も頑張れ」
「にしても、夏希さん目当てで本当にバド部に入るとはな。正直お前にはビックリだよ」
「まあ別にバド自体も好きだし、気になってはいたから、夏希さんのことだけじゃなくて、スポーツとしても楽しんで来ますわ」
「なんか変なことしたらネット越しから飛んでくるからな」
「それはどうも。てかあれ?冬馬は?」
「わからん、まあトイレだろ」
「んじゃまあ、俺らだけで先に行っちゃいますか」
そして俺たちは体育館へ向かう。
近くなるにつれて聞こえる、シューズが床で擦れる「キュッ」という音。
なんとも懐かしい。はずなのだが、あの夢を見てしまったため、そこまで懐かしさが感じられなくなってしまっている。
はて、あの夢と同じくらい夏希とイチャイチャできるだろうか。
「それじゃあ、またな碧生」
「あぁ、また」
体育館の出入口で俺は飛彩と別れる。
「さあ、気張ってこう」
自分の頬を両手で「パチンっ」と叩いて気合いを入れていると。
「船橋くん、よく来てくたね」
「あ、猪原先生!こんにちは、今日からよろしくお願いします!!」
「うん、よろしく。それで船橋くん、入部届けを提出しに来てくれた時は詳しく聞かなかったけど、なんでも元々やってたスポーツはバスケだったとか。なぜウチに?」
ヤバいな、早速ピンチだ。流石に、顧問の先生に『夏希がいたから入りました!』なんて言えない。
なにか言い訳を考えなければ...
「先生!こんにちは」
すると、後ろから美しい声が聞こえる。
後ろを振り返ると...
「な、夏希さん...!」
あれ、なんで夏希が後ろに?教室にいなかったから、先に行っていたと思ったのだが...
「こんにちは、橘さん。こちら、今日からウチに入部した『船橋碧生』くんです」
「どうも、こんにちは」
「こ、こんにちは」
「それで先生、さっきの話しなんですが」
「さっきの話し?」
「えぇ、碧生くんがウチに来た理由。それ、私知ってます」
「...えっ」
ちょっと待て。来た理由を知ってる?
夏希に理由を教えた覚えは無いが...
いや、教えられるかぁ?!本人に言えるかぁ?!こんなこと!
まさか、あの2人(飛彩か冬馬)のどちらが言ったんじゃないないだろうな?
...そういえば、冬馬の奴、放課後いなかったな?
アイツか...?
「へぇ、そうかい。それで、来た理由は?」
猪原先生が興味深そうに、俺を見てくる。
そして夏希は人差し指を立てながら笑顔で。
「それは......」
「ストーーーップ!!!」
俺は大きな声を出し、話を断ち切り、夏希の手を掴んで。
「ちょっと夏希さん、お話しに行こうか」
「え、ちょっと?!」
夏希を連れて、その場を急いで離れる。
「...行ってしまった。なんだかアオいね〜」
─夏希を連れて体育館倉庫の中で。
「...女の子を体育館倉庫《密室》に連れ込むなんて、嫌らしいわね」
「言い方に問題があると思...いや、確かに連れ込んでるか」
「それで?何かご用??」
夏希が目を細めて「ニヤリ」とした表情で言う。
「単刀直入に言うけど、夏希さんって俺がバド部に入った本当の理由、知ってるの?」
「えぇ、聞こえちゃったもの。『私目当てで入った』って」
...終わった。全てが終わった。
そして迂闊だった。この人の耳の良さを忘れていた。
「......」
「まあ、おかしいとは思ったのよね。小学校からやってる人が、なんで急にバドミントンって。ただそれが私目当てってなると辻褄はあうよね〜」
体育館倉庫、という名の密室の中で流れる地獄の空気。
今、この瞬間にも胃が破裂しそうだった。
それ故に、俺は何も言えなかった。
「図星、か......碧生くん、本当に私に惚れちゃったみたいだね?」
「本当にごめん、こんなことして」
「いや、いいんだよ。だって私たち『友達』でしょ?まあ、今キミは『友達』以上の関係になろうとしているんだろうけど??でも、どうしてここまでする必要が?」
「ここまでしないと夏希さんには届かないって思ったんだ。夏希さん、クラスで大人気じゃん?休み時間とか常に周りに人がいて話に行けなくて。でも、」
「部活ならいっぱい話せる、と」
「...うん」
夏希は一度、深く目を瞑って深呼吸してから言う。
「はぁ〜、案外、可愛い理由で良かった。確かに私の周りは人がいっぱいいて、とても話に行ける隙なんてないもんね。でも一つだけ言わせて」
「それだけの理由でバド部に入るのはオススメしない」
わかっていたことだ。確かにそれだけの理由でバド部に入るのは良くない。
それでも。俺はキミの近くにいなきゃ、ダメなんだ。
俺しか救えない。守れない。
だから。
「それだけの理由なら、ね」
「?...というと?」
「俺、バドミントン上手くなってみせるよ。夏希さん認められるくらい。だから、俺の努力しているところを見ててほしい。カッコイイところを見ててほしい。そして、」
「夏希さんを絶対に越してみせるよ」
「ほーう。私も舐められたもんだねぇ」
「どう?これならバド部に入る理由も充分じゃない?」
「確かに、そうかもね。でも結局、私が理由になっちゃってるけど」
「それは...」
「まあ、惚れた女を越すために頑張るっていうのも、良いのかもね」
「そろそろ、練習始めるぞー」
猪原先生の声が聞こえる。そろそろ練習が始まるようだ。
「それじゃあ、行こうか。私に惚れてバド部に入った碧生くんっ」
「それ、やめて...」
「ふふっ」
そして俺たちは体育館倉庫から出る。
「あ、もう一つ聞くの忘れてた」
「?...なに?」
夏希は俺の顔を見て、最後の質問をする。
「碧生、バトミントンは、好き?」
「...あぁ、当たり前さ。好きな人がいるからって、好きな競技じゃなければ、いくら俺でもこの部活には入ってないよ」
「...そう」
その時の夏希はどこかホッとした安堵の表情を浮かべていた。
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-あとがき-
データが、消え...た......




