これまでの『時を遡って、キミと。』
─宇宙に広がる星々の輝きは一つ一つ異なっている。
─その中で一番輝き、美しく見えたのが。
─『橘 夏希』。
─彼女だった。
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─彼女を好きになったのは中三の頃だった。
体育でバドミントンの授業をしている時。
サーブやラリーもできなかった俺は試合にも出られず、広い体育館の隅でひとり練習をしていた。
そんな中、話しかけてくれた人が。
それは親友でも教師でもない。
黒茶色のボブカット、小さな顔。
真っ白な肌の『美少女』。
まだ話をしたことがないのに彼女は優しく、笑顔でバドミントンを教えてくれた。
上手く出来たら褒めてくれて、ミスをしたら慰めてくれて。
たまに近くの距離になって香る香水のような匂い。
これが俺への情けだということはわかっていたが、それでも彼女のことを俺は好きになった。
─あれから数か月。
俺たちは高校一年生になった。
好きになって自分からアプローチをしようとしていたものの、まだまともに話したことすらなかった。
話せない理由を言うならば、夏希の周りには常に大勢の人がいるからだ。
割って話に行けば周りにいるクラスメイトから嫌な目で見られるのは容易に想像がついた為、声を掛けられなかった。
このままでは好きという気持ちを伝えられる関係になるどころか友達にすらなれない。
そう危惧した俺が考えた一つの策は、連絡先の交換。
連絡先を交換すれば周りの目など気にする必要はないし、時間関係なく話すことができる。
その為、どうすれば夏希と連絡先を交換出来るかについて親友たちと話をしていた。
すると。
─『ねぇ』
透き通った綺麗な声が聞こえてくる。
まるであの時、一人でいた俺に話しかけてくれたように。
美少女の夏希がまた話をしに来てくれたのだった。
そしてこの後、俺たち二人はそこで楽しい時間を過ごした。
メールアプリのグループについての話。
設定しているアイコンと壁紙についての話など。
意外にもトークは盛り上がり、目的としていた連絡先も交換することが出来た。
こうして俺たちはようやく友達になることが出来た。
─それから放課後では早速メールでのやり取りがスタートした。
直接話せない分、トークは弾む。
途中、夏希が家を通り過ぎてしまうくらいには。
夢中になり過ぎて家を通り過ぎてしまったため、トークを終わりにすることを夏希から告げられる。
そして最後に
─『言い忘れてたんだけど』
というメッセージが送られてきた。
しかしその続きとなる文章は約四時間経っても送られてはこなかった。
途中俺からもメッセージを送ったが全く反応はなかった為、後日学校で話を聞こうとするも。
彼女は学校に来なかった。
それも三日続いて。
─夏希が学校へ来なくなって三日目の放課後の帰り道。
偶然、夏希の姉の千秋さんと遭遇した。
容姿は夏希が大人になったような感じで、とても美人な人だった。
そして服装は黒のワンピースに真珠の白のネックレス。
嫌な予感がした。
そしてその予感は当たることになる。
その時、初めて千秋さんから夏希の訃報を聞かされた。
最初は信じられず無言の状態が続いたがそれも長くはもたず。
俺は目から涙を流し、その場に倒れ込んだ。
ようやく友達になれたのに。
これからだっていうのに。
千秋さんは俺を慰めつつも、ある物を見せてくれた。
それは夏希のスマホ。
そこには送信されず下書き保存されたメッセージが残っており、それには『言い忘れた事』の続きとなる文が。
─『学校でも全然、私に話しかけて良いからね!
もし、私に直接言いにくいことがあったら、
ここにでも良いから何でも言ってね!
すきだよあおいくん』
これが俺に向けた最後のメッセージだった。
夏希は近年頻発していた通り魔事件の被害に遭っていたと言う。
推測だが夏希はメッセージを作成していた途中で通り魔に襲われ、最後に書かれたひらがなの一言は意識が薄れる中で書いた言葉だったと察した。
それを思うと吐き気が止まらなかった。
俺の為に最後の力をと。
─訃報を聞かされた後、途方に暮れながらも帰り道をフラフラと歩く。
途中、電柱や人にぶつかりながらも。
いつもは10分くらいで着くアパートにもこの日は1時間くらいかかった気がした。
ようやく着いたアパートの階段を上り、自分の部屋の前を見ると。
郵便受けには宛名や宛先も記載されていない謎の『白い手紙』が入っていた。
しかしその手紙から香る香水の匂いにだけは心当たりがあった。
この匂いは夏希の香水の匂いだった。
中三のあの時も、連絡先を交換していた時も香っていたこの匂いだけは忘れはしなかった。
そして、俺は直ぐに手紙を開け中身を確認する。
文頭には『拝啓 碧生くんへ』と書かれていた。
すると背後から肩を軽く叩かれる。
咄嗟に後ろを振り向いたその時。
ナイフで腹部を刺されたのだった。
口から出る血。
腹部から溢れ出る血。
白の手紙が赤く染まり始める。
犯人は手紙をマッチで燃やし立ち去っていった。
手紙を燃やしたということは恐らく夏希の死にも関与していたか同一犯の可能性があるが、もはや考える意味はない。
なぜならもう、死ぬから。
死んで夏希と会えるなら別にそれでいい。
そう思いながら俺は永遠の眠りにつく。
しかし俺は目覚めてしまった。
それも約二年前の過去の世界で。
─こうして意図せずタイムリープを果たした俺、『船橋 碧生』は最悪の未来を変えるべく動き出した。
全ては彼女を橘夏希を救う為に───。




