プロローグ:わたしたちの悪い癖(その3)
「むぎゃぁーー!」
先輩の悲鳴がダンジョンに響きわたる。
私はすぐに近くへ駆け寄って先輩を見た。
床にぺたんこ座りをした先輩は、全身ぬるぬるだった。
「うわー先輩、えろトラップっすね」
「むぅぅ……」
スイッチを踏んだことでトラップが作動し、床から大量の粘液が染み出していた。
とろんとろんの粘液にまみれまみれの先輩。
粘液にまみれた先輩は、けっこう見どころが多い。
「むぅー。アオィちゃん、たしけてぇー」
金色の瞳を潤ませながら上目づかいで見つめてくる先輩。
粘液のせいでうまく身動きができていない。
かわいさ、にじゅうまる◎
「先輩、なかなか気持ちよさそうっすけどね」
「むぅー。その銀色の目は節穴かー!」
仕方なく私はえろトラップの除去に取りかかる。
えろトラップなんてものは、本来は無い。
私と先輩が勝手にそう呼んでいるだけだ。
「先輩、動かないでくださいね。粘液をはがしていくっす」
「むぅ、そもそも動けましぇぇん……」
私はポーチから魔導ナイフを取り出し、先輩の身体にまとわりついた粘液をはがしていった。
魔力を流すと、ナイフが青く発光する。
その光が、粘液を蒸発させるように取り除いていく。
「はい先輩、終わったっすよ」
立ち上がった先輩は、動けるようにはなったものの、ずぶ濡れだった。
服に染み込んだ粘液まではどうしようもない。
先輩のかわいいピンク色のワンピースが濡れ、下着が透けている。
今日は私がとくにお気に入りの下着だ。ベリグゥ。
「あとはしばらく放っておけば、乾いて粉になって取れるっすから」
「ありがとぉー。たすかったぁー」
先輩は濡れたワンピースをべちべちと手で叩いて形を整えている。
いろいろありがたい感じに透けてるけど、気づいてないっぽい。
先輩はそういうとこ、鈍感だから。ベリグゥ。
「先輩、今日の突撃は、どうだったっすか?」
「最高にアツい戦いだった! 私って、強すぎぃ!」
調子にのる先輩、かわいすぎぃ。
「戦いっていうか、一方的な虐殺だったっすけど」
「むぅー。もともと討伐対象の軍隊アリだったんだからいいじゃない」
「はいはい。じゃあさっそく、お仕事をはじめるっすよ」
私は先輩をうながして、アリの残骸が転がるダンジョンの調査を開始する。
これから始まるのは、私と先輩がダンジョンの奥深くで、まじめにお仕事をする話だ。
決して私と先輩のいちゃいちゃラブコメとかではない。
私はただ。
かわいすぎて、まじでヤバい先輩を――。
ひそかに愛でずにはいられない癖なだけ、なのだ。
<プロローグ:わたしたちの悪い癖 了>




