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むぅむぅダンジョン!事故調査団★★★ すきあらば突撃しちゃう先輩がまじヤバいっす◎  作者: にしのくみすた
第1章

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先輩ダンスダンスソリューション★(その2)

「わーッ! むぅさんが燃えちゃいました! 早く火を消さないとッ!」


 突然、先輩の身体が炎に包まれた。

 慌てるモモタちゃんに、私は落ち着いて答える。


「大丈夫っす。もう少し見守りましょう」


 炎はすでに、先輩の身体全体を覆っている。

 そしてそのまま、周りの地面へも燃え広がっていった。


 私はその炎に近づいて、手で触れようとする。


「あ、アオィさんッ!?」


 驚くモモタちゃんの声を聞きつつ、私はそのまま炎に手を突っ込んだ。


 手のひらの中で、炎が赤色に輝きながら揺らめく。

 熱さはまったく無い。


「熱くないので触っても大丈夫っすよ」


 そう言われてモモタちゃんは、恐る恐る手を伸ばした。

 炎に触れたあとも、まだ半信半疑な顔をしている。


「確かに、熱くないですッ……」

「この炎は、先輩の魔法でつくり出したものっす」



 先輩の魔法は、いつでもすぐ使えるというものではない。

 この魔法を使うには、数日間、身を清めて精神統一する必要がある。


 清めるといっても、あくまでも体内の魔力の流れを整えるということらしく、身体についた汗やほこりとかは問題ないらしい。

 あと今は多少の粘液もついてるけど……どうやら大丈夫っぽい。


「むぅさん……綺麗ですね……ッ」


 舞を踊る先輩を見ながら、モモタちゃんがつぶやく。



 炎の広がりは一旦収まり、今は凪いだ水面のような炎の膜が、あたり一帯の地面を静かに覆っていた。

 その中央に立つ先輩の身体は、魔力のオーラをまとっている。


 その薄紅色(うすべにいろ)のオーラが、舞の動きに合わせて揺らめいた。

 オーラの光が少しずつ千切れ、しばし空中に漂っては、静かに消えていく。


 それはまるで、散りゆく桜のように見えた。



 なおも舞い踊る身体から、ぱっと飛び散る汗が、暗闇にきらりと光を放ち。

 揺れる桃色の髪とスカートが、ふわりと華やかに宙を遊ぶ。


 先輩の舞う姿は、どこか神々しい。

 そして美しく可憐だ。



 ――シャラン。


 鈴の音が鳴る。

 続けて先輩の声が響く。


 それは、朗々たる口上だった。



星火燎原(せいかりょうげん)の火よ――」


 シャラン。


「いま烈火となりて、真実を明かし奉れ!」


 言い終えると同時に、先輩は鈴を掲げたまま、ぴたりと静止した。

 先輩を中心に、まわりの炎が波紋のように大きく燃え上がっていく。


「……えぇッ!?」


 先輩の口上を聞いたモモタちゃんが、驚きの声をあげた。


「まさか、()()『星火燎原の魔女』ッ!?」



 先輩の魔法は、正真正銘の超レアものだ。

 こんな魔法が使える人間は、世界でひとりしかいない。


 特に優れた魔法を使う者には、その魔法を象徴する二つ名が与えられる。

 二つ名を持つほどの魔法使いは、ごくわずかにしか存在しない。



 ――星火燎原の魔女。


 それが先輩に与えられた二つ名だった。



「むぅさん……すごいです……ッ!」


 モモタちゃんが声をしぼり出すようにつぶやく。

 先輩の神々しい姿に、圧倒されているようだ。


 私は何も言わずに、先輩を見つめ続ける。



 この奇跡ともいうべき魔法を使いこなし。

 小さい身体に眠る大きな炎で、全ての闇を照らす先輩。


 薄紅色の光をまとって暗闇を舞うその姿は、まさに舞姫だ。



 先輩……。

 最高にかわいいです。



「お待ちどぉー! 終わったよん!」


 先輩が、こちらを振り返って言った。

 火は消えずに、あたり一帯に広がったまま静かに揺らめいている。


「まずは、アリの残した魔力を見てほしいっす」

「むぅ、ほいきた!」


 先輩が神楽鈴を振ってシャラランと鳴らすと、炎がアリの残骸の山へと燃え移っていった。

 よく見ると、その炎の色が変化していくのが分かる。


「むむむぅ……。これは、朽葉色(くちばいろ)ね!」


 先輩の言うとおり、枯れた落ち葉のような色合いの炎が、アリの残骸の上で揺らめいていた。


「この色に、何か意味があるんですかッ?」

「これは、魔力の残滓(ざんし)っす。魔力の痕跡みたいなものっすね」


 私はモモタちゃんに説明を続ける。


「魔物は、種族ごとに違う色の魔力を宿しているっす」

「軍隊アリの魔力は、朽葉色ってことですかッ?」


 私はうなずいた。

 魔物だけでなく、魔導具や魔導鉱石、魔法を使う人間など、世の中にある魔力を宿すものにはすべて、それぞれ違った魔力の色があるのだ。


「先輩の魔法は、この魔力の痕跡を見ることが出来るっす」



<その3へつづく>

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