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むぅむぅダンジョン!事故調査団★★★ すきあらば突撃しちゃう先輩がまじヤバいっす◎  作者: にしのくみすた
第1章

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アリアリ!地底ぬるるん滞在記(その4)

「先輩っ! ストップっす!!」


 私は慌てて叫んだ。

 しかし、覆水盆に返らず。


 突撃した先輩も、マジで戻らず。


 先輩はあっという間に、1万匹のアリが待っているであろう、穴の外へと消えていった。


 隠れている穴の中からは、外の様子が見えない。

 ただ先輩が戦っている音だけが聞こえてくる。


「むぅっ!」


 先輩のかけ声とともに、光の弾が放たれる音がする。

 続けてギシギシとアリの手足がきしむ音と、ベキベキとアリの身体が砕けていく音が聞こえてきた。

 

 音を聞く限りでは、先輩は今のところ優勢のようだ。

 だがそれでも、アリは尽きることなくやって来る。 


「まずいっす……。この状況でどう動くべきか……」


 私は救難信号(メーデー)のスクロールを発動させるか悩んだ。

 このスクロールを使えば、助けを呼べるかもしれない。


 だが――


 それでは先輩を助けるのに間に合わない。

 戦闘音は相変わらず続いており、激しさを増している。


「私は……先輩をひとりには出来ないっす!」


 私は立ち上がり、杖を構えた。


 救難信号(メーデー)のスクロールを取り出して、横たわるモモタちゃんの胸の上に置いておく。


「万が一、私たちがやられたら、モモタちゃんはこれを使ってくださいっす」


 モモタちゃんの解毒が完了するには、もう少し時間がかかる。

 返事は出来なくても、こちらの声は聞こえているはずだ。


「よし……行くっす」


 私は深呼吸をすると、意を決して、穴の外へ出た。

 そこには――



 アリの残骸で出来た、巨大な山。

 そのてっぺんに。


「むぅ! 一丁あがりぃ!」


 にかっとドヤ顔でサムズアップをキメる、先輩の姿があった。


「……えっ?」


 その信じ難い光景に、思わず変な声が出る。


「……先輩、アリ全部倒したっすか?」

「倒した! 私って、強すぎぃ!」


 まじか。

 いやほんとに先輩、強すぎぃ。


「でもね、全部で100匹くらいしか居なかった!」

「それでも充分すごいっす」


 そこらじゅうに転がるアリの残骸の山は、確かに100匹分くらいの量に見えた。

 大量のアリたちは、いまや全てこなごなである。



 ドヤ顔をキメ終わった先輩が、アリ山の頂上から、颯爽(さっそう)と歩いて降りてきた。

 1歩、2歩、3歩。

 私のほうに近づいてくる。


 そして4歩目。

 アリの死骸につまづいてコケた。


「むぎゃっ!?」


 アリ山の斜面をでんぐり返しで転げ落ちてくる先輩。

 私のほうに向かって……いやこれ、


 ぶつかるっ!?


 ばこーん!


 その拍子に、床にあったスイッチが押された。



 〜★〜★〜★〜



「……先輩。モモタちゃんが居なかったら、まじでヤバかったっすよ」

「むぅ、モモタちゃん、ありがとぉー」


 あのあと、毒が抜けて動けるようになったモモタちゃんが来てくれたおかげで、私と先輩は助かった。


 ふたりまとめて粘液トラップにはまり、動けなくなっていたのだ。

 本来は魔物を足止めするためのトラップなので、人間なんて数人まとめて動けなくしてしまうほどの粘着力がある。

 えろトラップ恐るべし。


「これくらい恩返しさせてくださいッ。元はと言えば、私のほうが助けてもらったんですから!」


 モモタちゃんが魔動ナイフを使って、私と先輩についた粘液をはがしていく。



 私はダンジョンの床に仰向けの状態で転がっていた。

 その上に先輩が覆い被さったまま、ふたりとも粘液にまみれている。


 床に仰向けのまま動けない身体に、先輩の心地よい重みを感じる。

 アリとの戦いを終えたばかりの先輩の身体は、体温が高くて、ほてった熱が伝わってきた。

 その(ぬく)みとともに、春の草花みたいないい匂いもする。


「先輩、動かないでくださいよ。くすぐったいっす」


 先輩はどうも落ち着かないのか、私の身体の上で、もぞもぞと動く。

 そのたびに、体温で人肌と同じくらいに温まった粘液が、とろろんちゃぷんと音を立て、ふたりの隙間を埋めていった。


「ねえアオィちゃん」

「なんすか先輩」

「アオィちゃんと一緒にぬるぬるだと、気持ちいいかも」

「……」


 なんですと?

 一緒にぬるぬるだと、気持ちいいかも?


「……しぇ、先輩は反省してくださいっす」

「むぅ、すみましぇぇん……」


 危ない。

 昇天しかけて一瞬噛んでしもた。



「はいッ。これで粘液は剥がれましたッ」

「ふう。モモタちゃん、助かったっす」


 そのあと、無事に動けるようになった私たちは、あらためて状況を確認する。


 倒したアリを数えたところ、やはり100匹ほどだった。

 念のため3人で付近も見て回ったが、他にアリは見つからない。


 穴ぼこで迷路のように入り組んだダンジョン内を歩いているうちに、いつの間にか元の場所へ戻ってきた。 


「むぅ、アリが消えた? 残りの9900匹はどこいったの?」

「残りのアリっすか……。いや先輩、これは――」


 私はそう言いながら、メガネをクイっと持ち上げ、カッコよく髪をかきあげた。

 最後のひらめきを得て、こう告げる。


「この事故の謎は、すべて解けたっす」



<ep4:アリアリ!地底ぬるるん滞在記 了>

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