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むぅむぅダンジョン!事故調査団★★★ すきあらば突撃しちゃう先輩がまじヤバいっす◎  作者: にしのくみすた
第1章

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アリアリ!地底ぬるるん滞在記(その3)

「待ってました! おやつタイムするべし!」


 先輩はそう言うと、自分のポーチを漁りはじめた。


「たしかに、カロリー補給しておいたほうがいいっすね」


 ダンジョンでのカロリー不足は、思わぬ体調不良や事故につながる。

 何が起こるか分からない過酷な環境であるがゆえに、こまめな補給が大切なのだ。


 ポーチを探っていた先輩が、何かを取り出す。


「あった! ぷりんバー!」


 先輩が手にしていたのは、この前も食べた『固形ぷりんバー』だ。

 炙ると美味しくなるやつ。


「この前おいしかったから、持ってきた!」

「お、いいっすね。今度は先輩が炙ってくださいよ」


 私は魔導ライターを取り出し、念のため動作確認をする。


 ――チャッカリン、ぼっ。


 小気味よい音がして、すぐに着火した。

 いったん火を消し、ライターを先輩に手渡す。


「むぅ、炙りはおまかせあれ!」


 先輩は左右の手にライターとぷりんバーを持ち、お互いを近づけた。

 魔導ライターは、点火スイッチを押しながら、魔力を流すことで着火する仕組みだ。


 先輩が点火スイッチを押す。

 続けて魔力を流そうとした、そのとき。


「むぅっ!?」 


 手を滑らせて、ぷりんバーを落としそうになった。

 先輩は慌ててキャッチして、事なきを得る。


 だが、魔導ライターの点火のほうが、中途半端になった。


 ――チャ……リン、じゅぼ。


 いつもの小気味よい音ではなく、冴えない着火音。

 それでも、火はついた。


 魔力が不安定な状態で着火したため、変な音がしたのだろう。


「むぅぅ……危なかったぁ」


 先輩は気を取りなおして、ぷりんバーを炙り始める。 

 甘いぷりんの香りが漂い始め、いい感じに焦げ目がついたところで、先輩はぷりんバーを半分に割った。


「はい、アオィちゃん。おいしいよん!」

「ありがたくいただくっす」


 私はモモタちゃんの様子を見守りながら、ぷりんバーを口に入れた。

 炙ったことで、食感がもちもちになり、ほんのり暖かい。

 ほっとする甘味が口に広がり、緊張がすこしゆるむ。


 隣からは、もっくもっくと先輩がぷりんバーを齧る音が聞こえてきた。

 ダンジョン内に訪れる、ひと時の平和な時間。


 ――そこに、なにやら不穏な音が割り込んでくる。


「……なんか音がするっすね」

()()()がぷりんバー食べすぎの音?」


 口いっぱいにぷりんバーを頬張ったまま、もがもが返事をする先輩。

 そんな先輩はいったん置いておき、かすかに聴こえる音に耳を澄ませる。


 たしかに先輩がぷりんバーを齧る音も聞こえるが……。


 ギシギシ。

 ギシギシギシギシ。


 この音は――



「先輩! アリっす!!」

「むぐぅ!?」


 突然、ダンジョンの暗がりから、大量のアリが姿をあらわした!

 私はすぐに立ち上がり、冷静に状況を確認する。


 先輩はぷりんバーを喉に詰まらせながらも、なんとか立ち上がって杖を構えた。


 アリは隊列を組んでこちらに向かって来る。

 かなりの大群だ。


 私と先輩だけなら応戦できなくもないが、動けないモモタちゃんを守りながら戦うのは難しい。

 この場は――


「いったん退却するっす!」

「わかった!」


 私はモモタちゃんを抱き上げ、そのままアリと反対方向に走り出した。

 先輩はアリをギリギリまで引きつけながら、弾を撃って足止めすることで時間を稼いでいる。


「通路が穴ぼこだらけで、出口が分からないっす!」


 壁に空きまくった穴ぼこのせいで、ダンジョン内は迷路のように入り組んでいた。


 必死で逃げているうちに方向感覚も無くなり、今どこを走っているのかも分からない。

 モモタちゃんを抱えながら逃げているので、あまりスピードも出せなかった。 


「むぅ! このままだと追いつかれそう!」

「マズいっすね。穴ぼこの陰に隠れましょう!」


 入り組んだ通路を何度も曲がった先に、隠れるのに良さそうな横穴を見つけた。

 モモタちゃんを抱えたまま、急いでその穴に逃げ込む。


 穴の奥は袋小路になっていたが、3人が隠れるのには問題ない大きさだった。

 そこで身を隠し、息をひそめる。


 穴の外からは、軍隊アリたちの関節がきしむ、ギシギシという音が聞こえてくる。

 1匹、また1匹とその音が近づいては遠ざかっていった。

 それが、途切れること無くひたすらに続く。


「アオィちゃん、これって……」

「そうっすね。被害者から聞いたのと、全く同じ状況っす」


 私はそう言いながら、頭をフル回転させた。

 目を閉じて集中し、思考を巡らせる。

 

 ――あの被害者たちと同じ状況だということは、外には1万匹のアリがいるはずだ。

 これから、どう対処するべきか。


 1万匹のアリに戦いを挑めば、さすがの私たちでもタダでは済まない。

 そもそも、この状況を引き起こした原因は、いったい何だ?


 私はこれまでの行動を思い返して、なんとか原因を探ろうと必死だった。

 だから、考えることに集中しすぎていたのだ。


 もっと重要なことを忘れるくらいに。



「そうか! わかったっす! アリを呼び寄せた犯人は――」


 そのひらめきを口に出そうと、目を開けたとき。


 あれ?

 視界の先に、先輩はいなかった。


「むぅぅぅーーーーーーーーっ!!!」


 謎の叫びがダンジョンに響きわたる。


 決して忘れてはいけない、先輩の悪癖。

 そのとき先輩は――



 1万匹のアリに向かって、突撃していた!


「先輩!? あーーーッ!!」



<その4へつづく>

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