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むぅむぅダンジョン!事故調査団★★★ すきあらば突撃しちゃう先輩がまじヤバいっす◎  作者: にしのくみすた
第1章

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アリアリ!地底ぬるるん滞在記(その2)

 私と先輩はダンジョン内を走りながら、要救助者を探す。

 地下8階層は、以前と変わらず穴ぼこだらけだった。


救難信号(メーデー)の発信元は、このあたりっすね」

「早く早く! 急いでお助けぇ!」


 ダンジョンへ入る際には、ベースキャンプで『救難信号(メーデー)のスクロール』が配布される。

 これを使うと、ダンジョン内にある最寄りの通信機に警報が送られる仕組みだ。


 警報と同時に、ある程度の位置情報も通知されるので、私たちは発信元のエリアを探し回っていた。


「どこっすかね? 穴ぼこが多すぎて道が複雑っす」

「もしもーし! いたら返事してぇー!!」


 先輩が大声で呼びかける。

 探すエリアが絞られているとはいえ、それでもかなり広いのだ。



 しばらくのあいだ呼べども返事がなく、途方に暮れかけたとき。

 それは見つかった。


「いた! あそこっす!」


 私はいったん通路の影に隠れた。

 先輩が飛び出さないように手を掴んでおく。


 そして、3匹の軍隊アリと、それに囲まれている女の子を確認した。


「むぅ! あれ、モモタちゃんじゃん!」

「……そうっすね」


 アリに襲われていたのは、この前ギルドで出会ったモモタちゃんだった。


 モモタちゃんは、ダンジョンの穴ぼこの隙間に仰向けで横たわっている。

 その小さな身体を2匹のアリがくわえて、ずるずると引きずっていた。

 恐らく、隙間に隠れていたところを見つかって、引きずり出されているのだろう。


 そして、もう1匹のアリがモモタちゃんの上に乗っかり、尻についた毒針を身体に突き刺していた。


「むぅぅ! やばやばぁぁ……!」

「先輩、落ち着いてください。奴らが毒針を打ったということは、すぐに獲物を食べるつもりはないっす」


 モモタちゃんは横たわったまま、毒で動けないようだった。

 意識はあるが、叫ぶこともできず、目は虚ろに見える。


「アリは獲物を動けなくして安全なところへ運んでから、じっくり卵を産み付けて苗床にするっす」

「うげ! もっとやばぁぁぁ!」


 あの状態だと、モモタちゃんは自力では逃げられないだろう。

 アリを叩くしかない。


「大丈夫、まだ時間はあります。私がモモタちゃんを確保するっす」

「おっけ! むっ、むぅ、むぅっ!」


 先輩はむぅむぅ言いながら、もう今すぐにでも突撃しようとして、身体がぴちぴちと跳ねている。

 私が手を掴んでいるので、かろうじて飛び出さずに済んでいるだけだ。


 釣りたての魚を掴みあげた漁師の気持ちである。

 新鮮な先輩をこのまま持って帰りたいが、今はそれどころじゃない。


「先輩はアリを引き離して、殲滅してください。いいっすね?」

「まかせて!」


 その返事を聞いてすぐ、掴んでいた手を離した。

 放たれた先輩が、アリに向かって全速力で突撃する。


「むぅぅーーーーっ!」


 先輩が叫びながら光の弾を放つと、いちばん手前にいたアリの身体に穴があいた。

 残りの2匹のアリは一瞬おどろいた様子だったが、すぐに先輩を迎え討つ姿勢を取る。


 先輩はそのままアリの(ふところ)へ一直線に飛び込んだ。

 そこに、アリの鋭いアゴが振り下ろされる。


 それは確実に先輩の身体をつらぬくコースだった。

 痛恨の一撃が、無慈悲に先輩を襲う。


 かと思いきや。


「むぅっ!」


 先輩はギリギリのところで、突然真横に吹っ飛んだ。

 アリの攻撃が、空振りに終わる。


 先輩は、地面へ向けて光の弾を連射していた。

 その反動で、真横に跳ねて回避したのだ。


 焦ったアリたちは、先輩を追いかける。

 私はその隙に、モモタちゃんを助け出した。


 モモタちゃんを抱えて少し離れた場所へ移動し、地面に横たえる。


「すぐ解毒するっす。もう大丈夫すよ」

「……」


 モモタちゃんはアリの毒によって身体は全く動かせず、言葉も話せない。

 つぶらな瞳から、ただ涙だけが流れていた。

 私はモモタちゃんの上着の裾をめくり、お腹に解毒のスクロールを貼って発動させる。


「アリの毒は死ぬような毒じゃないっすけど、身体だけ動かなくして、意識ははっきりしたままだから厄介っす」


 そう。意識はあるのだ。

 襲われる本人にとっては、これがかえって恐ろしい。


「生きたままアリに襲われるのは、怖かったっすね」


 私はやさしくそう言いながら、モモタちゃんの顔に流れる涙をそっと手で拭った。

 そしてしばらくのあいだ、モモタちゃんの横に座り、胸のあたりに手を置いて軽くトントンと叩き続ける。

 これで、少しでも気持ちが落ち着けばいい。


「モモタちゃんの具合はどう?」


 残りのアリを殲滅した先輩が、心配そうに近づいてきた。


「ケガは大丈夫そうっす。けど、解毒にはしばらくかかるっすね」

「モモタちゃん、がんば!」


 先輩の励ましに、まだモモタちゃんは反応できないようだったが、涙はもう止まっていた。


「いま近くをぐるっと見てきたけど、今のところ他のアリの気配は無さそう!」

「それなら、モモタちゃんが回復するまで、ここで少し休憩するっすか」


 私がそう提案すると、先輩は私の隣に座る。

 そして、私の方を向いてウインクしながら言った。


「待ってました! おやつタイムするべし!」



<その3へつづく>

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