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むぅむぅダンジョン!事故調査団★★★ すきあらば突撃しちゃう先輩がまじヤバいっす◎  作者: にしのくみすた
第1章

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アリアリ!地底ぬるるん滞在記(その1)

 私たちが再びダンジョンに向かったのは、3日後だった。


「先輩、準備はいいっすか?」

「むぅ、バッチリ! 3日間カンペキに清めてきた!」


 南渓谷のダンジョンは、私たちが暮らす王都の、南端にある。

 王都をぐるりと囲む、巨大な環状城壁のすぐ脇に、地下への入口があった。


 私は入口の前に建っている小屋へ近づき、窓口の女性に声をかける。


事故調査団(トライスター)、2名っす」

「はい、いつもご苦労さまです」


 どこのダンジョンにも、入口に『ベースキャンプ』と呼ばれる受付がある。

 ここでは冒険者ギルドから派遣されたダンジョン管理人が常駐し、冒険者の出入りを管理しているのだ。


 ベースキャンプでの手続きを終えると、私たちはダンジョンへと入っていく。

 地下1階層は、多くの冒険者たちで混雑していた。


「今日も賑わってるわね! 楽しそう!」

「この階層は、ほとんど観光地っすからね」


 このダンジョンは、初心者の練習場所として人気だ。

 浅い階層は、壁も通路もレンガで整備されていて、それほど危険な魔物も出ない。

 連日たくさんの冒険者たちが、のんびりと探索を楽しんでいた。


 しかし、7階層からは話が変わってくる。

 ここから中級者レベルとなり、岩がむき出しの荒れたエリアが広がっていて、危険な魔物も出没するようになるのだ。

 そのため7階層以下は、初心者だけでの立ち入りは禁止されている。


 私たちはダンジョンをひたすら下り続け、しばらくして7階層までたどり着いた。


「第2キャンプ、到着ぅ!」

「ここでいったん休憩するっす」



 7階層の入口には『第2キャンプ』と呼ばれる休憩所があった。


 ここは無人だが、通信器が置いてあり、魔導回線を通してベースキャンプと連絡を取ることが出来る。

 7階層より先へ潜る場合は、ここで申請が必要だった。


 私は通信器に魔力を流し、呼び出しボタンを押す。


「こちらキャンプ(ツー)っす。応答願います」


 ややあって、声が返ってくる。


「――こちらベースキャンプ。パーティーネームと目的地を申告してください。どうぞ」

「トライスターっす。8階層への潜行許可、願います」

「――潜行許可、了解(ロジャー)。8階層には引き続き、軍隊アリの大量発生に対する注意報が発令されています。お気をつけて」


 申請を終えたところで、すこし休憩を取ることにする。

 狭いキャンプ内に置かれていた小さな長イスに、ふたりで並んで座った。


 私はポーチから水筒を出し、飲み口についているフタを取り外す。

 このフタが、カップとしても使えるようになっているのだ。


 カップにお茶を注ぐと、紅茶のいい香りがふわりと辺りに広がった。

 湯気が立ち上るカップを、先輩に手渡す。 


「熱いっすから、気をつけて飲ん……」

「あちっ!」


 私の注意を最後まで聞かずに、先輩はお茶に口をつけた。

 当然ながら熱かったようで、悲鳴があがる。


「先輩、人の話を聞かないからっすよ」

「むぅぅ……」


 熱いままの紅茶を飲んだ先輩は、舌の先をすこし火傷したらしい。

 舌をぺろと出して、なぜか私に見せてくる。


「いや、見せなくていいっすから」


 そんな先輩を横目に、私は水筒から直接お茶を飲むことにした。

 火傷しないように気をつけながら、紅茶をすこし口に含む。


 先輩は舌を出したまま、部屋の空気で冷やそうとしているようだ。

 そのままの状態で、私と目が合う。


 たぶんこれは『てへぺろ』のつもりなんだろう。

 先輩は舌を出したまま笑おうとして、にへら、とへんてこりんにヨレた笑顔になっていた。


 ……え?

 そんなかわいい顔、この世に存在していいっすか?


「アオィちゃん何してんの?」


 先輩の怪訝そうな声で気づく。

 私は口が半開きのまま、飲んだお茶が口元からこぼれていた。


「もぅ、私の方ばっかり見てるからぁ! アオィちゃんも人のこと言えないわね!」


 はい、その通りです。先輩。


 私は何事もなかったかのような顔で口元のお茶を拭き、完璧に平常心を装う。

 これしきのアクシデントで、カッコ悪い姿は見せないのだ。


「先輩、そろそろ行くっすよ」


 そう言って、立ち上がろうとした。

 そのとき。



 ビィーッ、ピピピッ!

 ビィーッ、ピピピッ!


 突然、部屋の空気を切り裂くような、鋭い音が響いた。

 すぐに通信機から、切迫した声が続く。


「メーデー、メーデー、メーデーッ!! 8階……あッ、アリが――」


 雑音まじりの声が、唐突に途切れる。

 音声が不明瞭だが、どうやら声の主は女性らしい、ということだけは分かった。


救難信号(メーデー)っす!」


 私はすぐに通信器のボタンを押し、返答する。


「どうしたっすか!? 応答願います!」


 だが、それ以降の返事はなかった。


「むぅぅ……。8階層ってことは、アリに襲われたのかも!」

救助隊(ダイバー)を待ってたら間に合わないっす! うちらで向かいましょう!」


 私はそう言うと、すぐに荷物をまとめて第2キャンプを出る。


「先輩、行くっすよ!」

「むぅ、よし来た! お助けだぁ!」


 そうして私たちは、さらに地下へと潜り始める。

 要救助者の待つ地下8階層へと、急ぎ足で向かうのであった。



<その2へつづく>

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