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むぅむぅダンジョン!事故調査団★★★ すきあらば突撃しちゃう先輩がまじヤバいっす◎  作者: にしのくみすた
第1章

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春ウサギ美味し夏の山(その1)

「お仕事おわりぃ! アオィちゃん早くぅ!」

「先輩、走るとまた転ぶっすよ」


 一日の仕事を終えた私たちは、夜の街へと繰り出す。


 普段なら、先輩は団長と一緒におなじ自宅へ帰るのだが、今日は私に着いてきた。

 一緒に買い物をしたいらしい。


「足りないスクロールをいくつか補充するっす。解毒のやつとか」

「びよよん(ふだ)もね!」


 街の大通りから横道へ入ったところに、冒険者向けのお店が立ち並ぶ路地がある。

 杖、防具、鉱石、魔導具……いろいろな専門店が並ぶなかで、私たちはスクロールのお店に入った。 


「いつもの解毒スクロールと、回復のやつをくださいっす。あと、びよよん……蜘蛛糸のスクロールも」


 店員からスクロールを受け取り、代金を支払う。

 スクロールは、魔力を込めれば様々な魔法が使える便利なアイテムである反面、かなり高価だ。

 1枚で数ヶ月、あるいは数年暮らせる値段のものもザラにある。


 だが、美味しい食べ物と仕事道具には、金に糸目をつけないのが冒険者というもの。


 まあ、危険なお仕事であるゆえに、お金もそこそこは稼いでいる。

 そのぶん、命を守る仕事道具には、お金をかけて当然と言えるだろう。



 買い物も終わったので、先輩は帰るのかと思ったが、そうではないらしい。

 なんかずっとついて来る。


「私はご飯にするっすけど」

「私も行く! アオィちゃんが食べるもの、私も食べたい!」

「いつも外食っすけど」

「レッツゴー! アオィちゃんの行きつけのお店!」


 そんなわけで、先輩をいつものお店に連れて行くことにした。

 冒険者ギルドのすぐ近くに、そのお店はある。 


 先輩を連れ『うさ焼き亭 うさ』と書かれた暖簾をくぐる。

 お店へ入ると、肉を焼く香ばしい煙の匂いがした。


「むぅ。うさ焼き? ウサギ焼くの?」

「最初はみんなそう言うっす。入れば分かるっすよ」


 お店の中はたくさんの客で賑わっている。

 地元で愛される飲み屋、といった雰囲気の店構えだ。


 私と先輩は空いていたカウンター席に座った。

 カウンターの奥を見た先輩が、思わず口を開く。


「う、()()()()、焼いてる……!」


 そこでは、筋肉隆々、むっきむきマッチョなイイ身体をした寡黙な店長(マスター)が――



 ウサ耳を付けて串を焼いていた。



「ここは豚肉の串焼きのお店っす」

「むぅぅ……どおいうコンセプトのお店?」


 先輩がとまどっているところへ、店員の女の子が近づいてきた。


「はいー、らっしゃい! お、今日はお連れさんも一緒?」

「そうっす。連れは初めてなんで、串盛り合わせで。私はいつものやつ」


 店員さんもウサ耳だ。

 丈の短いスカートのメイド服に、よく見るとウサしっぽも付いている。

 黒いウサ耳をぴこぴこさせながら、店員さんが尋ねてきた。


「アオィさん、飲みものは何にします?」

「レモンサワーで。先輩は何飲むっすか?」

「……えーと、レモンソーダ!」


 店員さんは注文を確認すると、今度は違うお客さんに呼ばれて忙しそうに飛んでいった。


「この店のマスターは元冒険者なんすよ。だからお客さんにも現役の冒険者が多くて、情報収集にはもってこいっす」

「むぅ。それより、ウサ耳とメイド服が気になる……」

「食べたら気にならなくなるっすよ」


 先輩が半信半疑な顔をしているうちに、注文した飲み物が届いた。

 まずは、ふたりで乾杯をする。


 そのあと、先輩の串焼きが運ばれてきた。

 豚串が5本の盛り合わせだ。

 先輩はその中からひとつ手に取り、ぱくりとかじりつく。


 ひと噛み……もしないうちに、金色の瞳を見開いた。


「とろけた! やばぁー!」


 すごい勢いでぱくぱくと食べ続ける。


「むむむーん! うますぎ! これは、星みっつ!」

「気に入ってもらえて良かったっす」


 この店の豚串は絶品だ。

 お仕事で各地を訪れるたびに、美味しいものを食べ歩いている私が言うのだから、間違いない。


 豚の角煮のように濃厚な味わいだが、最初に噛もうとすると、ぷりっと弾力のある歯応えを感じる。

 その固まりが弾けると、途端にじゅわりと甘い油の旨みが、口の中に一気に広がっていく。


 あとはもう、噛むごとにしあわせだ。

 焼いたタレが絶妙に香ばしくて、胸焼けせずに食べられるのも推せるポイントだと思う。


 ウサ耳もメイド服も正直めっちゃ謎だが、ひと串食べればそんな些細なことは気にならない。

 美味さで他を黙らせる。

 それがこの『うさ焼き亭 うさ』の流儀なのだ。

 

 豚串に夢中な先輩を微笑ましく見守っていると、私の注文した料理も運ばれてきた。


 箸を手に取り、さっそく食べようとする。

 すると。


「え、アオィちゃん……なにそれ?」


 先輩が、まるで変なものを見たかのように尋ねてきた。



<その2へつづく>

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