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むぅむぅダンジョン!事故調査団★★★ すきあらば突撃しちゃう先輩がまじヤバいっす◎  作者: にしのくみすた
第1章

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桃栗サンネン柿ヘタレ(その4)

「私と付き合ってくださいッ!」


 女の子が、私に向かって真剣な顔で叫んでいる。

 え? いきなりどうした?


「アオィちゃん、モテモテだね」

「いや先輩、これモテと違う……と思うっす」


 まずは落ち着いて、話を聞くことにした。

 私と先輩は自己紹介をしたあと、女の子に名前を尋ねる。


「モモタ・マロンリップですッ。よろしくお願いします!」

「むぅ? モモ・マロン? 桃なの? 栗なの?」

「えっと……私は、柿が好きですッ」


 モモタと名乗る女の子は、栗色のボブヘアに、柿色のマリン帽を乗っけていた。帽子にはかわいい桃のピンバッジが付いていて、つぶらな瞳によく似合っている。

 抹茶色のスカートから覗く足には、たくさんの絆創膏が貼られていて、初々しい。


「付き合ってほしいって、どういうことっすか?」

「私に、ダンジョン探索を指導してほしいんですッ」

「モモタちゃんは、どこまで潜れるんすか?」

「南渓谷のダンジョンなら、地下6階層まで行けますッ。今回は……ツノネズミ相手に、ちょっとヘマしちゃいましたけど」


 なるほど。初級者から中級者になりかけってところか。

 ツノネズミに手こずるようでは、軍隊アリと戦っても美味しいエサにされるだけだろう。


「ツノネズミが余裕で捌けないなら、6階層もまだ早いっすね」

「ぐうッ。で、でもでも! もう冒険者になって3年目で、本当はひとりでもツノネズミくらい倒せるんですッ。最近はコツもつかんできて……!」

「落ち着くっす、モモタちゃん」


 私は諭すような口調で名前を呼んだ。

 それに反応したモモタちゃんが、グッと姿勢を正す。


 怒られると思ったのだろう。

 その栗色の瞳には、不安と、諦めの色が滲んでいた。


 このくらいの初心者は、自分の力を過信しがちだ。

 冒険者の誰もが通る道と言える。

 きっと今までも周りから何度も注意され、その度に落ち込んでいたのだろう。


 誰にも自分を認めてもらえない――そんな、諦めの色をした瞳だった。



「ダンジョン探索って、楽しいっすよね」

「え……ッ?」


 私の言葉が意外だったのか、モモタちゃんは驚いた声を出した。


「本当に楽しいことって、誰にも止められないっす。他人にも、自分にも」

「あ……は、はいッ」


 モモタちゃんが、はっと何かに気づいたように目を見開く。

 そして、私の言葉に強く同意した。


 私はなるべくやさしい声で伝える。


「モモタちゃんの冒険心、私にはとてもよく分かるっす。でも、焦っちゃダメ。命は大事にしてください」


 私はそう言って立ち上がり、ぽんぽん、とモモタちゃんの頭に手を乗せた。


 モモタちゃんはくすぐったかったのか、身体をぎゅっと縮めて、斜めがけの柿色カバンをむぎゅ、と抱きしめていた。

 なぜか顔が赤いようにも見えるけど、気のせいかも。


「むぅ、冒険心! 私にもわかる!」

「先輩はもっと自重してくださいっす」

「むぅぅ。すみましぇぇん……」


 なぜか、ぽやんとしているモモタちゃんに、アドバイスを伝えておく。


「まずは4階層あたりで、仲間を組んでしばらく潜ってみるといいっすよ」

「……あ、はいッ。アオィさんは、いまどこに潜っているんですか?」

「いまは、南渓谷の8階層っすね」

「8ッ……すごい」

「8階層まで来れるようになったら、また相談に乗ってあげるっす」


 そう聞いて、モモタちゃんは安心したようだ。


「はい! ありがとうございますッ、アオィさん」


 そう言うモモタちゃんの瞳には輝きが戻っていた。

 よかったよかった。


 去り際に、モモタちゃんが目をそらしながら何かをつぶやく。


「アオィさんッ。今度一緒に、その……指導とかじゃなくて……ッ」


 でも、その言葉はとても小声で、全然聞き取れなかった。

 聞き返したら、モモタちゃんはぺこりと勢いよくお辞儀だけして、慌ただしく行ってしまった。



「モーテモーテやーんけー」

「いや先輩、これモテと違うっす」


 あくまでも冒険者として尊敬されているのだろう。     

 まあカッコいい私を尊敬しちゃう気持ちは分かる。

 私、冒険8年目のプロなので。


「そもそも、先輩の方がモテるじゃないっすか」


 そう、先輩はモテるのだ。

 おもに私だけに。


「むぅ、そうかなぁ? でも……」


 先輩は少しだけ何かを考えたあとで、私のほうを向く。

 そして金色の瞳で私を見つめると、にかっと笑いながら言った。


「私は、ひとりだけにモテればいいかな!」

「……」


 せ、先輩……!

 そのひとりに、立候補いいですか?


 アオィ、いきまーす!



「……じゃあ、帰るとするっすか」


 うん。落ち着け私。

 

 私はそんなモテキャラじゃない。

 プロの冒険者たるもの、自分の力を過信してはいけないのだ。



 え、ヘタレ?

 まあそうともいう。



<ep2:桃栗サンネン柿ヘタレ 了>

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