1話 ちょっと鍛錬
夕食後、俺は部屋に戻り、一人考える。
「まさか、俺に模擬戦を挑もうなどというのではあるまいな?」
模擬戦を挑まれた所で、断るのは簡単である。
しかし、ソフィアに対しては既に一度模擬戦を回避している。
もし模擬戦を挑まれた所で、断ることは簡単であるが、流石に塩対応がすぎるのではないか、と思う。現に、ソフィアには世話になりっぱなしである。
ソフィアには俺の実力を見せてはいる。あの執事との立ち合いの際に、ソフィアもそこにいたはず。
しかし、あの執事の戦闘力があってこそ俺はある程度本気で戦うことができたし、それに、体術はできれば隠しておきたい。切り札は多い方が良い。突発的に何があるか分からない状況で、あえてそれを見せたくはないのである。
—だが、いつもの感じで模擬戦をするとすれば
模造剣を持ち、迅雷も雷切も体術も使用できない、サンダーボルトのみを使用することしかできない俺を想像する。
「・・・まずソフィアに勝つのは無理だろう。」
デフォルトイシュバーンはおそらくアルトリウス最弱である。実際にソフィアの実力を見たことはないが、ラズリーの話ではかなり戦闘能力も高そうである。それに、さすがに俺の実力をある程度把握しているソフィアに、デフォルトイシュバーンで挑むことは考え物である。
まだソフィアが俺に模擬戦を挑むと決まったわけではないが、何か対策を考えておくべきだろう。
——何かないか?
俺にとって最も良いのは、いつもの魔力変換をした電撃を弱めて放ち、相手のスキを作り、そこに模造剣で一発叩き込むという、模擬戦用の戦闘スタイルを作ることである。そうすれば、俺の魔法の訓練にも剣の訓練にもなる。
本来、達人というのは相手に応じて自分の実力を調整できるものだ。俺のように、無手で本気を出せば相手に勝てるが、その場合相手を殺してしまう危険がある、というのは、達人とは程遠い。
達人を目指すかどうかはさておき、できれば、相手の実力に応じて自分の実力を調節して、その上でエレガントに勝つ、といった理想的な自分を追求したいのである。
『ふっ。まだ俺は実力の半分も出していないんだがな?』
そんなことを言いつつ、格好よく勝ちたいのである。
——言ってみてえ!!!
「・・・であれば、鍛錬か。」
—だが、何をどう鍛錬する?
さすがに今すぐ剣の実力を鍛えるのは無理がある。剣の技術を伸ばすには少なくとも月単位を考えなければならない。
「であれば、やはり魔法だろうな。」
魔力変換の電撃を極力弱めて、相手のスキを作る程度の電撃を放つ。
—鍛錬の方向性は決まった
次に決めるべきはどうすればそのような魔法を身に着けることができるか、ということである。
「・・・そういえば、あのとき—」
あの極寒の船の上で、少量の魔力を継続的に熱に変換することができたよな?あのときは無我夢中だったが、あれは技術として
——試してみるか
これまでは電撃を上手く弱めることができなかったが、何とかなるかもしれない。
まず、蛇口を絞るように小さな魔力で全身を覆う。そして、それを電気に変換するのと同じような要領で、熱に変換するのだ。
ブゥゥゥゥゥゥゥウン
すると、少しずつ体の周囲が温まっていく。ただし、これで継続的に温めてしまうと、茹で上がってしまう。ちょうどある程度まで温めれば、それを維持するように———
「・・・」
すると、今までより少し温かい程度で一定に保つことができた。
—よし
ある程度魔力を調節して、それを熱に変換することは問題なくできる。もしかすると、あのギリギリの状況で俺の魔力操作の力が開花したのかもしれない。そして、これは歩いたりしても途切れることはないようだ。
—あとは
同じように蛇口を絞った魔力を電撃に変換して、狙った所に放出するだけ!!
手を伸ばし、空中を狙う!
パチンッ
電撃が弾けたが、狙いからは少しズレがあった。
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