14話 ばとんたっち♡
「おーい、ハーヴェル!こっちだ!」
俺は大きく手を上げ、ハーヴェルを呼ぶ。
皆、何事かと俺の手を上げた先を見つめる―
ハーヴェルは立ち止まり、訝しむような顔をして、
「・・・何の用だ?」
こちらにやっと聞こえるほどの声で答える。
「ああ!お前との対戦をご所望している奴らがいてな?」
「なに!?」
すると、速足でこちらまでやって来る。
―くくく
周りから見えないように、顔を手で覆い隠すが、その場にいる誰もが皆、ハーヴェルに注目し、誰も俺のことを気にするやつなどいないようだ。
「——で、誰だ、そいつは。イシュバーン。」
「ああ。そこの二人だ。」
驚いた様子でハーヴェルを見るゴルダとユーディスを顎で示す。
「お前と模擬戦を一発やりたいんだとよ?」
「・・・なるほど。そういうことなら、受けて立とう。」
ずいっと前に出るハーヴェル。
「―そういうことで、問題ないな?」
俺は、躊躇うような表情をしているゴルダに言う。
「お、おう・・・。けどよぅ?」
「強い相手が良いんだろ?」
そう言って俺はニヤリと笑う。
―勝ったな
「ゴルダ、俺は引くぞ?問題ないな?」
ユーディスと呼ばれた男がそう言うと、その場から引き下がろうとする。
「ま、待てよ!ユーディス!!」
急に狼狽え始めるゴルダ。
―しかし、ハーヴェルを見て突然態度を変えたな?
俺が見る限り、ハーヴェルはいつものハーヴェルである。スーパーハーヴェルになったりはしていない。念のため魔眼を発動させるが、その様子も、いつも見慣れた様子のハーヴェルである。
「・・・俺と戦いたいのだろう?」
さすがはハーヴェル、やる気に満ち溢れている。
「くそ!覚えていやがれ!」
何故か俺を睨むゴルダ。
「おいおい、俺が何をしたっていうんだよ?アルトリウスの猛者と戦いたいという貴様の要望に応えただけにすぎんぜ?」
手を広げ、why ?のポーズをとる。さすがにそれは言いがかりが過ぎるというものだろう。
しかし、周囲を見ると、どちらかと言うと、俺を引き気味で見る者が多いようだった。
―どういうことだ???
流石に、異文化すぎてついていけんぞ?
「あんなやつは放っておいて、さあ!俺と模擬戦をやろう!」
「・・・くそぉ。やってやるよぉ!」
何故ゴルダがそこまで嫌がるのか、俺にはさっぱり分からない。
というわけで、ハーヴェルとゴルダの模擬戦がめでたくここに開幕するのである!
途中、コルティスの教師も来たが、特に止める様子もなく、良い機会だからと模擬戦を行うのを許可するようだった。
演習場の中央にある石板の上に上がる二人。
「ハーヴェルといったな?模擬戦のルールを説明するぞ?」
先ほどのユーディスと呼ばれた男がハーヴェルに話しかける。
「まず、武器はこの木剣だ。一応、被ダメージ吸収の結界はあるが―。きっとお宅らの学院にあるような高度なものではない。急所への攻撃は控えてくれ。あと、魔法は身体強化以外の魔法は控えてくれ。それに・・・。」
「―随分と要求が多いのだな?」
ハーヴェルが少し呆れた様子である。
「いや・・・。すまない、始めよう。」
できれば手加減してやってくれとユーディスが小声で言うのが聞こえた。
ハーヴェルはそれには答えず、ゴルダの方へ木剣を向ける。
ゴルダの武器は、木で模したバトルアックスである。一見すると、大男がバトルアックスを構えて威圧感は抜群であるように見えるが、ハーヴェルの前に委縮しているのが明らかだった。
―やれやれ
あんなでは、万が一つにもハーヴェルに勝つなどできんだろう。よく俺にあんなデカい態度で出ることができたものだ。
気になることは、ハーヴェルが現れてから場の空気が変わったことだ。ゴルダが俺に絡んでいたときには、いつものことか、というどこか間延びした空気だったのに、ハーヴェルが現れてからというもの、ゴルダやユーディスはもちろん、周囲の者もどこか張り詰めた雰囲気になったのだ。そして、ハーヴェルはハーヴェルでそれを当然のこととして捉えているようにも見える。
俺はもう一度ハーヴェルを魔眼で見るが、やはりそこにはいつもと変わらないハーヴェルがいるだけだった。
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