12話 おっぱい猫と飯くれにゃーん♡
そんな風にして飯を食い始めたとき、
「・・・にゃーん。」
どこからともなく猫の鳴き声が聞こえてくる。
―猫?
これはレティのお供の猫のデイジーではないか?どこかで聞いたことのある猫の鳴き声である。
ふと茂みの方を見ると、果たしてそこにいたのはやはりデイジーだった。
「にゃーん。」
その目は俺の持つ魚パンをじっと見つめている。それくれにゃーと言わんばかりである。
「・・・やらんぞ?」
俺は猫から魚パンを隠すようにする。
「・・・にゃっ!」
抗議してくるぬっこ。
「おいおい、レティに言って買ってもらえよ。」
あえて立ち上がって魚パンを食う。まあ、こいつが本気になれば、俺が立ち上がったところで意味はないのだが。
「・・・ケチだニャー。」
不満そうだ。何を隠そう、こいつは喋るのである。
「何を言うか。キャットフードで我慢しろ、キャットフードで。こいつは俺のだ。」
そう言うと、もう一口パンを齧る。
「・・・ニンゲンの癖に偉そうなんだにゃ。」
―何ですと?
ぬっこの分際で人間様に何を言うか!
「何か?お前はお猫様だとでもいうのか?」
「そうにゃ。お猫様にゃ。」
ふんすっと胸を張るぬっこ。
良いことを思いついた。
―こいつ、前に俺がモフろうとしたときに威嚇してきたんだったよな?
「・・・なあ、お猫様よ。俺に貴様をモフらせよ。さすればこいつをやらんわけではないぞ?」
あと一口ほど残っているパンをぬっこに見せつける。
「・・・にゃーん。」
少し迷った素振りを見せたが、ゴロンとお腹をこちらに見せるぬっこ。
―勝った
我が勝利を確信する。
「ふふふ。そーれそれそれ。」
もふもふもふもふもふもふもふもふ
「もう充分ニャ!それくれニャ!」
「おいおい、まだちょっとじゃあないか?」
―まあ、いいか
どうやら本当に腹を空かせているらしい。デイジーの腹の上に食べかけ魚パンをポンと置く。
すると、器用に腹の上のパンを咥え、するっと俺の腕の中から飛び出し、少し離れた位置に着地する。
デイジーが忙しなくその口を動かしてパンを食うのをしばらく見つめている。
「デイジー~~~」
少し離れた場所でぬっこを呼ぶ声が聞こえてきた。この声はレティか。
「おい、お前の飼い主が呼んでいるぞ?」
「――いいにゃ。そのうちこっち来るにゃ。」
食べるのに夢中になっているようだ。
「―あ!こんなところにいた!!」
デイジーを見つけ、こちらに走って来る。
「・・・あ、イシュバーン・・・。」
そして俺に気が付くレティ。
「―よう。そこのお猫様に俺のパンを奪い取られてしまってな?」
「デイジー!何てことするの!?」
「にゃにゃ!ちゃんと対価は支払ったんだにゃ!ひどいにゃ!!」
そう言って俺をうらめしそうな目で見るぬっこが一匹。
「あんな短時間じゃあなあ~?」
思わず、ニヤニヤと笑ってしまう。
「・・・レティ、こいつ嫌な奴にゃ。」
「―もう!後で何か買ってあげるから!・・・あの、ゴメンね?」
「いいさ、ちょうど暇つぶしもできたしな?」
短時間ではあったが、パンの食べかけでデイジーのもふを体験できたのだ。
「・・・それなら良かったんだけど。てか、普通にうちのデイジーと話してるね?」
そう言うと、レティはデイジーをひょいっと抱える。
「そりゃ魔法使いならば、そういった使い魔を持つこともあるだろう。」
もちろん、実際には、このデイジーは使い魔ではないことも知っているが、レティ本人から直接聞いたわけではないので黙っておこう。
「あはは・・・。そうだよね?でもお礼に何かご馳走するよ?」
そう言うと、レティは腕の中のデイジーをひと撫でして、小さな声で、メッとデイジーに注意する。
「礼には及ばん。パンの切れ端程度だからな。」
「・・・でも。そうだ!ラズリーたちと同じ宿に泊っているんだよね?」
「ああ。だが、どうするつもりだ?」
「お夕飯、何か持って行くよ!――待ってて!ラズリーに確認してくる!」
そう言うと、レティはデイジーを抱えて後者の中へ走っていった。
「おい、ちょっと待てレティ!!」
レティを呼ぶが、その声にレティが振り向くことはなかった。
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