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409●『果てしなきスカーレット』(2025)①真の主人公は聖青年! この作品は彼の死の瞬間に脳裏を巡った、走馬灯めいた“夢”!

409●『果てしなきスカーレット』(2025)①真の主人公は聖青年! この作品は彼の死の瞬間に脳裏を巡った、走馬灯めいた“夢”!




◆まだ観ていませんが、作品についてわかること



 『果てしなきスカーレット』(2025)、略して『果てスカ』。

 先月(2025年11月)下旬に公開されてから三週間余り。

 じつは、まだ観に行っていません、ごめんなさい。

 迷っているうちに日が過ぎてしまいました。

 ネットの評判が、なんだか作中の“死者の世界”並みに煉獄化してるみたいで、どっちを向いても地獄の業火で大炎上のこき下ろし大喜利状態。

 圧倒的な否定派の絨毯爆撃に、その三十分の一ほどらしい肯定派が、懸命にゲリラ戦で耐え忍んでいる有様ですね。


 こんな現象は初めてです。

 ニッポンのアニメ史が始まって以来の椿事でしょう。

 あれほど前評判の高かった超大作劇場アニメが、まさかの閑古鳥!

 しかしこうなると、映画館へ行くのが恐くなってしまふ……

 誰かを誘う勇気が湧いてきません。

 行って観て、打ちのめされたらどうしょう?

 それ以上に、作品と監督に怒りでも感じたら、もっと救われない気分になります。


 観るべきか、観ざるべきか……それが問題だ。


 私たちをここまでハムレット気分にさせてくれるアニメ、類を見ませんね。

 あわてて足を運ばず、しばらく様子を見ることにします。


 ただ、いずれにせよノベライズの小説本は買いますし、将来DVDが出たら、必ず買おうと思っています。


       *


 で、作品の感想を述べさせていただきます。

 といっても、肝心の作品をまだ観ていませんので、もう山ほどあるネットの反響やネタバレ評価やインタビュー記事などを読んだ感想です。


 しかしあまりに量が多いので、“当たらずとも遠からず”になるような気がします。


 作品未見の、しかも浅学非才、ド素人の私でありますが、以下が、2025年12月中旬における、『果てしなきスカーレット』の解題コメントです。

 凄く無責任な試みですが、こやつめ(私)を成敗しようとお考えにならず、何卒、スカ嬢のパパみたいに寛大なお心で「許して」やっていただきますよう、伏してお願い奉ります。


       *



◆矛盾だらけの作品世界、その正体とは



 まず結論から。『果てしなきスカーレット』の作品的本質とは……


① まず、真の主人公はスカーレット嬢でなく、坊主頭の聖青年です!

② この作品の物語は、聖青年の死の瞬間に彼の脳裏を駆け巡った、走馬灯めいた“夢”だったのです。


 そう解釈すれば、スッキリするのではありませんか?


 この作品に対する批判点の多くは、「あまりにも前後の矛盾が多いこと」です。

 そもそも生きているはずの悪玉クローディアスが、毒殺されたスカーレットに先回りして“死者の世界”に君臨していたことから、作品の基本的設定が、ガラガラと崩れていきます。

 なんじゃこれは? ですよね。

 後付けでなにか説明があるらしいですが、これほど大きな謎をシレッと放置していたら、観客のストレスが大きすぎて、落ち着いて鑑賞することができないでしょう。


 その他、過去も未来も時空間の制限がノーリミットの、“何でもあり”世界のはずなのに、そこにいるのは中世デンマーク人かそれに近い人ばかり。

 そこへ不可解にも、21世紀日本人の聖青年が、違和感満載で登場するようです。

 で、つきものの疑問ですが、言葉の問題はどうするんだろう?

 なぜかみんな、日本語が達者だったりして。

 いやとにかく、グローバルなはずの“死者の世界”にしては、中世ヨーロッパ人しかいないという、思いっきりローカルなかたより方をしているのが、フツーに不思議です。


 しかしこうした世界設定の大いなる矛盾をまとめてスカッと解消する方法が、少なくともひとつあります。


 真の主人公はスカーレット嬢でなく、聖青年だ!


 物語ストーリーの全てが、聖青年ただ一人の頭の中に、彼自身が創り出したバーチャルでリアリティのある幻想であり妄想、まるで走馬灯のように駆け巡る“夢”だったとすれば、説明がつくでしょう。


 『果てしなきスカーレット』の物語の最初から最後までが、聖青年の頭の中に創られた仮想現実的な“夢”であると仮定しましたら、どう考えても辻褄つじつまの合わない事象や登場人物が、御都合主義的に登場したり消えたり、気侭勝手に行動していても、問題がありません。

 つまり、歴史的な“夢落ち”で終わった、アリスの“不思議の国”みたいなものなんですよ。

 もひとつ、こちらも歴史的な“夢落ち”で終わった、魔法使の“オズの国”(映画版)みたいなものなんです。


 聖青年は21世紀のニッポンで死んだとされます。

 ならばこの物語は、彼が息を引き取る、いまわのきわに脳内を駆け巡るように映された、人生最後の“夢”と考えてもよいでしょう。


 特筆すべきは、この“夢”が、スカーレット嬢の視点から語られていたことです。


 聖青年が一人で勝手に見る“夢”ですから、それでも良いのですね。

 彼の潜在意識に、人生の中でかなえたいと希求していた“願い”が“夢”となって結実したのです。だから、たいていが彼の願いをかなえる方向に進みます。


 聖青年は、きっとシェイクスピアの『ハムレット』を芝居か映画で観たことがあったのでしょう。

 あの主人公ハムレット青年のように、復讐心にさいなまれて人生の幸福を見失った人物こそ、死の世界へ旅立つ夢の中で、救いたい……と彼は思ったのです。

 そこに、自分が好意を寄せていた少女の面影が重なって……

 ハムレットに代わる、憤怒と復讐心の女傑スカーレットが、夢の中に誕生した(合成された)のではないかと思います、生成AIの如く。


 そして死の瞬間、ほんの数秒の間に、彼は長い夢を見た。

 

 スカーレットを中心とする壮大な復讐劇の中に、21世紀の自分が入り込み、彼女とともに冒険し、悩み苦しみ、戦い、そして彼女のタマシイを救う物語を。


 そうすることで、聖青年は、あまりにも早すぎる、自分自身の死の理不尽さを“許す”、つまり、運命を許容することができたのではないかと思います。


 『果てしなきスカーレット』の物語で起こる出来事のすべてが、まだ生きたいのに、生きることをあきらめるしかなくなった彼のタマシイを救うために、神様(もしくは彼自身)が彼の心の銀幕に映し出した“運命を許すための啓示”だった……


 そう考えれば、作品中のわずらわしい無数の矛盾点が、「そういう“夢”だったから」と説明できるのではないでしょうか。


 とりわけ違和感のカタマリとされる“渋谷ミュージカル”のペアダンスの場面。

 あれも、スカーレットのような少女と心を通わせることができたら、二人であんなふうに踊ってみたい……と聖青年が意識下でずっと願っていた願望を“夢”に見たのだということで、納得できるのではないかと思います。


       *



◆“聖青年”の正体とは


 そして次に、私が注目しましたのは……


 聖青年ただ一人が、この“死者の世界”では際立った“異物”であることです。

 中世ヨーロッパからやってきたとしか思えない人間たちのタマシイが、生前のままに暴力と殺戮を繰り返し、憎み合い、復讐し合う地獄絵図の世界。

 そこに現れた聖青年は、ひとりだけ21世紀日本に育った、善意に満ちて利他的で思いやりにあふれた(ただし、脳内お花畑の)能天気青年。

 しかし善人です、理想の人物です。

 果てしなくスカスカの空虚な砂漠のように荒れ果てたスカーレットの心を抱擁し、優しく導く、好青年タイプの天使。


 物語の中で、彼一人だけが、21世紀の日本人。

 そして男性。


 彼は異質な世界でただ一人浮き上がった存在であることから、作品世界にとっては傍観者にとどまり、作品世界に積極的に変革をもたらす革命家にはなりえない、無力な存在であると思われます。

 しかし、憎悪と憤怒と激情に駆られて戦うことしか知らないスカーレットの心を救うことのできる、救済者たりえることはできたのですね。


 傍観者にして救済者。


 しかし聖青年は、物語の結末に影響を与えます。

 最後には彼が、物語世界の行く末を決定する、スカーレットにとってはまるでキリストのような、神の預言者に匹敵する役割を果たしたのではありませんか?


 彼は触媒カタリストとなって物語世界に化学反応をもたらし、そして自らは変化せずに、いずこかへ去ってゆく存在なのでは。


 そうだとしますと……


 聖青年は、監督様なのです。


 おそらく、細田守監督ご自身のスピリットが、聖青年に反映されている。

 そう解釈してよろしいかと考えます。


  (細田監督様、失礼がありましたらお詫びいたします。何卒お許し下さい)


      *


 聖青年=細田監督。 


 そう仮定しますと、次の謎に対する答えも、おのずと明らかになりますね。


  “死者の国”の正体とは?



     【次章へ続きます】


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