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余命僅かの令嬢は婚約解消を望みます  作者: もも


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8/22

 再びの

お読みいただきありがとうございます

「ああ、フローラ。本物だ…。生きている。夢じゃないよね?本当に元気になったんだね。良かった!!

連絡はいただいていたけど実際に見るまでは安心できなかった。

生きていてくれてありがとう!」


そう言って私のいるサンルームに飛び込んできて抱きついたのはアレン様だった。心なしか痩せた気がする。目の下に隈があるし泣きだしそうだ。


突然の出来事に驚いた私は棒のように立っていた。

腕を背中に回しても良いのかさえ分からない。

それでも声をかけなければいけないことは分かった。


「アレン様、勝手に婚約解消をお願いしてごめんなさい。

魔法使い様に見ていただいたら魔力過多だと言われたの。訓練をすれば生きていけるみたい」


「良かった!!これからも生きられるんだね。君の家から婚約解消の話が来た時にはこの世から色が消えたと思った。

いくら善意からだとしても婚約を解消したいなんて、僕の何が悪かったのだろう、嫌われることをしてしまったのかと絶望に染まったよ…」


私の肩の上から聞こえてきたのは震える声だった。


「…そんなことは爪の先ほども思っていないわ。アレン様が側にいてくれたから生きていられたの。こんな私と婚約しているのは申しわけないと思って、お父様にお願いをしたの。そんなに傷つけてしまうなんて思っていなくてごめんなさい…」


「じゃあ僕のことを嫌いになったわけじゃないんだね?」



「嫌いだなんて思ったことなんてないわ。契約の婚約者なのにそれ以上の誠意をアレン様は見せてくれたもの。だから幸せになってもらいたくて解放して差し上げてとお父様にお願いしたの」


それを聞いたアレン様は頭を上げ、泣きそうな顔をくしゃっとさせた。


それを一瞬でなかったように立て直し、さっと跪き赤い薔薇を一本と小さな箱を差し出した。

箱の蓋を開けると紫色の小さなアメジストの指輪が光っていた。


「契約だから優しくしていた訳じゃないよ。君の側にいるのが僕の幸せなんだ。好きだよフローラ。

病気の時でも君は我儘一つ言わなかった。無理をして笑っているんだろうなと胸が締めつけられた。

元気になったフローラと普通のデートをしたい。君が喜ぶような所へ連れて行きたい。だからもう一度僕と婚約をしてください」


「こんな私で良いの?勝手なことを言って今まで迷惑ばかりかけてその上傷つけてしまっていたのに……。

アレン様の周りにはもっと健康で綺麗な方がいるのではないの?」


「迷惑だなんて思ったことはないよ。フローラが良いんだ。初めて会った時から好きだった。君に婚約を解消されても諦められなかった。フローラ以外は綺麗だと思ったことはない。君は可愛い」


「…アレン様…」ポポポっと頬に熱が集まった。


胸の中では告白された嬉しさで熱いものが暴れまわっているのに、言葉にできなくて私は薔薇を受け取ることしかできなかった。


アレン様は私の指にそっと指輪を嵌めてくれた。


それから優しくハンカチで頬に伝う涙を拭いてくれた。私はいつの間にか泣いていたらしい。


そこへお母様の元気な声が飛び込んできた。


「いい雰囲気のところをお邪魔してごめんなさいね。アレン様いらっしゃい。フローラ上手くいって良かったわね」

お母様が悪戯っぽく後半をこっそり囁いた。私は胸が一杯になり頷くだけしかできなかった。


「お邪魔しております。夫人、伯爵様はいらっしゃいますか?」凛とした顔でアレン様が聞いた。


「いるわよ。アレン様が来ていると知って執務室で待っているわ」


お母様が苦笑交じりで言った。





 お父様は私たちの再婚約を許可してくださった。

幸い両家の話し合いだけでまだ教会には届けていなかったらしく、婚約は継続されたままだった。両親には私の気持ちは筒抜けだったようだ。恥ずかしい。






 アレン様は王立学院で文官コースに進み王宮の官吏を目指す。


私の目標は魔法使いだ。お師匠様の様な魔法が使いたい。

いずれは結婚して2人で力を合わせて生きていきたい。


勉強は引き続き家でリンドバーグ夫人に教えてもらうことになった。学院に行くにはまだ時間がある。

淑女教育やダンスもこれからだ。

家は継がないけれどアレン様の隣に立っても恥ずかしくないようになりたい。





 お師匠様は厳しいが私とクリスは頑張って付いていっている。魔法は楽しい。私は土と火と光の属性があるという。土は土壌を豊かに出来る。光は治癒だがそこまでは強くない。ちょっとした傷が治せる程度だ。クリスは水と風だ。


指先に魔力を巡らせて放出する時の気持ちの良さは半端ない。これだけの魔力が身体の中で行き場をなくしていたのだ。具合が悪かったのも分かる気がする。



試しに伯爵家の庭園の土を豊かにしてみた。庭の土に念を込めて祈った。

途端にしおれかけた薔薇のアーチが活き活きとするようになった。他の木の緑も濃くなり枝を伸ばした。



私は嬉しくなり思わずクリスとハイタッチをした。

魔法って素敵、生きているのって楽しい。



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