伯爵の計画
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お父様は才能はあるが貧しくて生活に困っている薬師を探してきた。男爵家の3男だそうでルカ様と言った。アレン様の時といい人をみる目があるので大丈夫な人なのだろう。多分。
「君は腕はあるが資金に恵まれなくて苦労をしていると聞いている。どうだろうか。うちの庭で薬草を育ててみてはくれないかな?」
「伯爵様の庭にですか?」いきなりの話に驚いたルカ様が聞き返した。
「娘が土の加護を持っていてね、裏で野菜を作っているんだが、それを食べている邸の皆の体調が良いんだ。王宮の魔法使い殿に見ていただいたら土壌がいい為だと言われたのだよ。娘はつい最近まで病気がちでね、新鮮な薬草がいつもあるのが良いのではないかと思ってね」
一応調べて連れて来させたが為人が分かっているとは言い難い。今のところの説明はこんなものでいいだろう。仕事ぶりを見ていればどんな人間か分かる。失格なら首にすればいいだけだ。
「そういうことでしたか。私はしがない男爵家の末っ子ですし、興味のあるのは薬草だけです。是非お嬢様の為に薬草を育てさせていただきたいと思います」
「そうか、ありがとう。用意するものがあれば言ってくれるか?」
「出来ましたら薬草を安定して作れるハウスと、計量器やフラスコやビーカーやすりこ木…」
「ああ分かった。専門の商会を呼んで作らせる。道具もそこで注文をしよう。いい薬はいい環境からだ。
全て任せてくれ。悪いようにはしない。
準備があるだろうから君は帰って荷物を纏めて引っ越して来てくれ。使用人に部屋を用意させよう。もちろん3食付きだ」
ルカは降って湧いたような幸運な話に頬を抓った。
今まではお金がないので薬草は山に取りに行ったり、街の薬草屋で萎びかけて安くなった物を買って作っていた。住んでいる所も小さなアパートだった。
食事もまともなものではなかった。
勉強はしたが身分が低く宮廷の薬師になれなかったので、実家からは金にならない仕事だと見放されている。
出来た薬は気持ち程度の料金で医者にかかれない平民や知り合いに分けていた。
それがどうだろう。伯爵様が新しい設備まで整えて雇ってくださるというではないか。
おまけに食住完備だ。給料も良い。ありがたいとしか思えない。
降って湧いたような幸運に感謝し、真面目に励もうと拳を握り締めた。
★☆★
クリスは父が薬師を見つけてきた目的を察した。
自分が医学を学んでいることがいずれ役に立つであろうことも。
(父上、僕は僕の役割をしっかり果たすよ。嫡男としてね)
年齢に似合わないしっかりした考えを持たざるを得なかったクリスは改めて決心を固めた。
この時、ただ漠然と次期伯爵の地位を与えられるだけではない生きる目標をクリスは見つけたのだった。
薬は将来伯爵家を益々繁栄させ国を救う事業になるのだがそれはまだ先の話である。
伯爵はルカに言った通り良質な薬を作りたかった。
娘が体が弱かったので、ありとあらゆる伝手を使って薬を探したが思うような薬を見つけるのは大変だった。
幸いにも娘は魔力過多で薬の必要はなくなった。しかしいつ未知の病原菌が襲い掛かり家族の命を奪うかもしれないのだ。
いざという時の為に備えておきたい。家族や領民を守りたい。それは強迫観念に似たものだった。
そのために立ち向かえる物が薬だ。
フローラの土魔法を活かした薬草作りはその第一歩だった。
野菜だけであの効果だ。薬草ならもっと効果が出るはずだ。
自分たちと同じ様な思いをする人が一人でも少なくなればいい。
伯爵は未来を見据えていた。




