姉弟の絆
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魔法使いの名はロラン様。筆頭魔法使いだそうだ。20代前半だろうか。黒い髪と黒い瞳の整った顔立ちの人だ。ロラン様は忙しい時間を縫って通ってくださることになった。
指先から出される光を浴びると身体が楽になっていくのが分かる。
まずは体力を普通の人並みに戻してからコントロールの勉強を始めることになった。
本当にありがたい。これも惜しみなく愛情を与えてくれた両親のおかげだ。
今まで遊んであげられなかった弟とも遊びたい。
と思う反面アレン様のことが胸をよぎる。今頃どうしているのかな。幸せに暮らしているのだろうか?誰かと一緒に笑っているのだろうか?
胸の痛みは私の罪の意識だろう。
初恋だった。
でも決めたのは自分だ。
そう思い胸の痛みから目を背けた。
弟も魔力は人並みにあったので魔法の勉強を始めることになった。
高度な部分をお師匠様に教えてもらえることになったのだ。
「私は時間がないので基礎からは教えられない。そっちは自分たちで勉強をするように」
と言われたので、家庭教師の先生に教えてもらうことになった。
先生は昔からの私たちの家庭教師で幅広い知識をお持ちのリンドバーグ夫人だ。
厳しい方だが出来ると褒めてもらえる。私はやる気になった。
病弱だったので勉強は偏りが大きい。耳で覚えた語学は得意だが、簡単な計算以外の数学になると分からなかった。
これから身を引き締めて勉強をしていこうと決めた。
勉強は楽しかった。知らないことを覚えるのは楽しい。分からない所は弟が教えてくれる。ちょっと得意そうな顔で。
「姉様、ここはこういうふうに考えるんだよ。式を覚えてしまえば簡単なんだ。この国の周辺にはこんな国があるんだ。あっその花は根に毒があるから気を付けて」
博識な弟のお陰で苦手は少なくなり、一緒に散歩をしていても勉強になる。
「クリスは色々なことを知っているのね。領主になるための勉強もしているのでしょう。姉様が時間を取らせていないかしら?」
「何を言っているのさ。姉様と生きる為に沢山勉強をしているんだ。姉様はずっとこの家で僕と暮らすんだ。何の心配もいらないよ。良い?分かった?」
まだ幼いふっくらした頬を膨らませて偉そうに言ってくる。
何?この優しさ、突っ張っているが可愛いしかない。抱きしめてもいいよね?
嫌がっても姉様はぎゅっとしちゃうんだからね。
私は頷きながらにっこりと笑いクリスを抱きしめた。
思わず後ずさりしそうになっていたけど何とか我慢してくれたみたい。
顔が真っ赤だ。
弟が可愛い過ぎるんですけど。
良かった!こんなことも知らずに逝ってしまわなくて。
この子が恋をするところやお嫁さんをもらうところまで見たい。
姉様は頑張るよ。
君に迷惑をかけずに生きていけるように魔法を会得したい。
そうすればクリスを守ってあげられることもあるかもしれない。
弟にも随分寂しい思いをさせてしまったのだと体が楽になり漸く私は思い至った。
両親の愛情を独占していた姉が妬ましいと思わなかったのだろうか。
真っすぐ育った天使のように優しいクリスと楽しい思い出を沢山作りたいと心から願った。
★☆★
僕の名前はクリス。姉様は生まれた時から病弱だった。直ぐに高熱を出して何度も死にかけた。その度に両親は姉様に付きっきりになった。
「お父様、お母様僕も見て」
そう何度も言いかけたけど熱にうなされる姉様は苦しそうで可哀想で、慰め合う両親を見たら口に出すことはできなかった。
姉様の婚約者のアレン様が来てくれるようになってから、両親は漸く僕を見てくれるようになった。
彼は姉様の王子様だけでなく僕のヒーローにもなった。
僕は姉様が少しでも健康になるように、医学を勉強をすることにした。
いつか役に立つと良いなと思ったから。
それなのに姉様は又意識をなくした。
いよいよお別れかと皆が覚悟をしたあの日、
王宮から魔法使い様が来て姉様は魔力過多でコントロールさえ出来れば生きていけると言ったんだ。
その時のことは忘れられない。
奇跡って起きるんだと僕は神様ではなく魔法使い様に感謝をした。




