奇跡
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真っ青になったお父様は
「……魔力過多?…8歳の時に教会へ連れて行って判定をしてもらったが、そんなことは言われなかった。魔力は僅かだと…。
病気だとばかり思っていた…。医者は身体が弱いとしか言わなかった。
…私はフローラに必要のない…薬を飲ませていたのか…?」
と言って膝から崩れ落ちた。
魔法使い様は気の毒そうな顔をして言った。
「病弱だと医者が診断したのだろう?薬は命を繋ぐのに必要だったのだよ。身体に害はないものだったはずだ。魔力過多なんて強い魔力を持つ者にしか分からないからな。
多分魔力は教会に行った時にはまだそれほど強く発現していなかったのだろう。だが今は器より魔力が多くて持て余しているからこんなことになっているのだ。
このままだといつ魔力暴走を起こし周りを巻き込んで爆発させてもおかしくはない状態だ。コントロールの仕方を教えてやらないと命の危険が大きい」
それを聞き真っ青を通り越して真っ白になったお父様は
「娘を助けてください。お願いします。コントロールの仕方を教えてやってください。上手くできるようになれば娘はこれからも生きられるのですよね?」
と縋りつかんばかりの勢いで頼んだ。その隣でお母様と弟も泣きそうになって魔法使い様を見つめている。
「それはもちろんだ。娘さんはかなり衰弱しているのでこれから暫く眠って貰う。その間に身体の中の魔力循環が良くなるように手を貸そう。
だが直ぐに治るわけではない。明日から毎日仕事の隙間を縫って見に来る。領地へ行くのはやめて貰いたい」
と言い高熱で意識が朦朧とした私に向かい手をかざした。
温かい何かが身体の中に入ってきた私は気持ちの良さに意識を手放した。
こんなにぐっすり眠れるのはいつぶりだろう。いつも痛みとの戦いだった。それは寝ているときでも例外ではなかった。身体が熱く痛くて苦しくて目が覚めることが度々だった。
私は暖かで真っ暗な世界の中でひたすら眠りをむさぼった。まるで母の胎内にいるようだった。
余命僅かだと言われた娘に希望が芽生え、家族は手を取り合って泣いた。
魔法使い様に感謝をした父親は高額のお礼を渡しこれからの契約も結んだ。
★☆★
目を覚ますと身体が以前より楽になっていた。
「喉が渇いたわ。お水が飲みたい」と呟いた私の声は掠れていた。
「お嬢様お目覚めになったのですね。良かったです!」
側に付いていたメイドが急いで抱き起こしコップに手を添えて水を飲ませてくれた。水は美味しく身体に染み入るようだった。
「旦那様や奥様にお知らせしてきます」メイドが泣きそうな顔で部屋を出ていった。
「フローラ、目が覚めたのね。良かった。あなたあれから2ヵ月も眠っていたのよ」お父様とお母様がすぐに息を切らして部屋に駆け込んできた。
「私たちの可愛い子、魔力過多だと気が付かず辛い思いをさせてしまいすまなかった。これからは魔法の勉強ができる。そうすれば生きられるんだ。なんてありがたいのだろう」
泣きそうな顔のお父様とお母様に代わる代わる抱きしめられた。
魔力過多?そんなことが起きていたとは思わなかった。
私はこれからも生きていられるの?
家族やアレン様と一緒に?
なのにそう考えた途端、婚約は無くなったのだと思い出した。
それも私の願いのせいで。
「…お母様…私、婚約を解消してしまったわ…」
私は自分の引き起こした現実に呆然とし、えぐえぐと幼児のように号泣をした。
「そうね、してしまったわね」お母様は苦い物を飲み込んだような目で私を見つめ抱きしめてくれた。
「でも今は魔力の使い方を覚えるのが先よ。生きることを第一に考えるの。アレン君のことは考えてみるわ」
お母様の言う通り生きていくことが最優先だ。
彼のことは諦めなくては。彼ほど私に尽くしてくれた優しい人はいなかった。
病気の婚約者と過ごした8年間は彼にとってどんな時間だったのだろう。
きっと気持ちが沈んだことも何度もあるだろうに嫌そうな顔は見たことがなかった。
その人との婚約を解消したのは私だ。この先そういう人が現れるとは思えない。一生彼を想いながら生きていこう。それだけで充分だ。
魔力過多になる程なら魔法で生きていけるかもしれない。それで身を立てよう。両親が私に使ってくれたお金だっていつかは返せるかもしれない。
アレン様はもう15才だ。これから学院で健康で綺麗な令嬢を見つけて恋をするだろう。
今まで散々迷惑をかけた。家の借金の為に私の世話を押し付けられていたのだ。
幸せになって欲しい。
後僅かで死ぬと思っていたのだ。それなのに健康な身体を手に入れた。
奇跡が起きたとしか言えない。
生きていることに感謝して生きていこう。
優しい両親に恩を返したい。
諦めきれない想いに蓋をし、私は前を向いて生きて行くことにした。




