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余命僅かの令嬢は婚約解消を望みます  作者: もも


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19/22

サンダース子爵家の長男と次男の話

読んでいただきありがとうございます

 ジルはサンダース子爵家の嫡男として生を受け教育をされてきた。目立つほどではないが清潔感のある整った顔立ちと誠実な人柄で人気のある令息だった。


婚約は政略で伯爵家の2女であるクラウディアだ。

家の繋がりを重視したものだが2人の仲は良かった。

だが災害が起きサンダース子爵家が没落寸前になると婚約は破談になった。


ジルが15才の時だ。クラウディアも同じ年で復興を待っていては行き遅れるというのが伯爵家の判断だった。


可愛い娘が苦労をするのは忍びないというのが建前だが、本音は巻き込まれたくないということなのだろう。


彼女はきっと金のある貴族家に嫁ぐ。


ジルは悔しさに歯を食いしばった。



「我が家は見捨てられたのだ」というのが子爵家の総意だったが、抗うわけにはいかなかった。

相手は格上の伯爵家だ。

没落するかどうかという崖っぷちにいる家がどんなに足掻いても勝ち目などない。



ジルは天災とタイミングの悪さに我が身を呪った。


意を決して父親に伝えた。

「父上私に縁談を探してください。資金援助が受けられるのならどんな女でも構いません」


「そんなことを言うな。やけになってはいけない。国に災害援助の申請を出している。今さえ乗り越えれば道が開ける」


「ですが、このまま手をこまねいている場合ではないでしょう」


「他にも手は打っている。心配するな。お前の縁談を決めた私に見る目がなかったのだ。許してくれ」


「父上のせいではありません。私に何が出来るか分かりませんが現地に行きやれることをやって来ます」


と言うと日持ちのする食料や薬、水、蒸留酒を馬車3台分に詰め込み領地へ出発した。

ジルの頭の中は嫡男の責任感で領地を何とかしたいという思いで一杯だった。



 現地は悲惨だった。雨で流された家が多く住民は教会や領主邸に避難していた。作っていた小麦が流され農民の多くは生きる気力を無くしかけていた。


そこへ物資と大勢の男手を連れた次期子爵が現れたのだ。

ジルは領民の心に火を灯した。


「ジル様来ていただき皆を代表してお礼を申しあげます。どんなにありがたく嬉しいことか…」

本邸の年嵩の家令が声を詰まらせて挨拶をした。


「すまない。これくらいしか持ってこれなかった。当分これで凌いで貰いたい」


そう言って差し出したのは馬車に積まれた大量の支援物資だ。


「これだけあれば当分やっていけます。各避難場所に分配しましょう。女子衆(おなごしゅう)に調理は任せましょう。男どもは泥の片付けに行きます。みんなスコップを持ったか?」


「待ってくれ、今着いたばかりだ。護衛たちに休憩をさせてやってくれ。お前たちもあまり食べていないのではないか?何か腹に入れていけ」


「気が急いておりました。申しわけありません。確かに腹が減っては戦えませんな。では遠慮なく食べましょう」


そう言うと床に座り王都から持ってきた固くなってしまったパンを薄いスープと一緒に食べた。持ってきた食料は直ぐに調理に回された。


作業が終わるとまともな食事が待っている。そう思うと片付けにも力が入る。

皆の顔には少しだけ明るさが戻った。



 ひと月過ぎ、跡取りとしての責任から寝る間も惜しんで復興のために働いていたジルの元へ、父親から3男のアレンの縁談が整い復興支援が出来るようになったという連絡が来た。


「えっアレンが婚約?相手はマクミラン伯爵家か、大金持ちじゃないか。支援が来るのももうすぐだと言うのか?」


連絡に来た使者と顔を見合わせほっとした。


ジルは安心したと同時に、まだ7歳の弟に重荷を負わせてしまったことを申し訳なく思った。相手の令嬢は5歳、病弱で起き上がることもままならないという。

弟は都合の良い話し相手として婚約したのだ。申し訳なさが半端ない。この恩は一生かかって返そう。

この時ジルはそう決めた。


しかし肩の荷が降りたのも事実だった。

これで子爵家は助かり5才下の次男クロウは騎士の道に進める。アレンは頭が良いので文官だろうか。


サンダース家に光が射した瞬間だった。



 マクミラン伯爵家からの支援は物資からお金まで多岐にわたった。

取り敢えずの復興から本格的な物に舵を切ることができる。

貴族のプライドを捨てて泥まみれになって作業していたことが報われた。


本格的な支援物資が届き温かいスープや美味い肉が手に入り、ジルは領民と一緒にぽろぽろと涙を流して食べたのだった。


「旨い」

それが久しぶりのまともな食事への感想だった。


次期子爵家当主ジルの領民からの信頼は絶大なものになっていた。


3男のアレンが婚約で家に貢献したのに兄たちは何をしていたのかを書かねばと思いここで一気に書きました。長男は真面目で一直線でしたね。

次男のクロウは騎士として生きながらコミュ力の高さで他家との交渉に才能を見せるという裏設定です。

子爵は今まで足元を見られていた家との駆け引きをマクミラン伯爵家という後ろ盾を得て一気に反撃をする腹黒だったという設定にしました。その為素早くフローラに仇なすグレンダ侯爵令嬢のことも潰しました。書いてはいませんが、子爵は支援金を確かなものにしてから領地へ行きジルや領民を労っていて、本格的な復興の指揮をとました。

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