どうかもう一度
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フローラの部屋のドアをノックしたが返事がない。拒否されているのだろう。
戸惑っているとメイドがやって来てドア越しに声をかけた。
「お嬢様、ミラでございます。入ってもよろしいでしょうか?」
「今は誰にも会いたくないの。1人にして」
覚悟を決めたアレンはドアの前で話をすることにした。
ミラは気を利かせて声の聞こえない所まで離れてくれた。
「フローラ、僕だ。ドアは開けなくて良いから話だけ聞いて欲しい。
さっきのことは全て僕が悪い。僕の未熟さが招いた結果だ。
モーリス侯爵家には家から正式に抗議をする。
君のことだから感情的になったと自分を責めているかも知れないがそれは違うからね。
君を守らないといけないのに傷付けてしまった僕はなんて最低なんだろう。情けないよ、ごめんね」
「………」
「僕ときたら何故か癖の強い女ばかりに絡まれるんだ。どうしてなのかさっぱり分からない。これからはお面のような表情で過ごすよ。
裏表がなくて素直な女の子は君だけだ。初恋なんだ。会った途端恋に落ちた。好きなんだフローラ。
ねえまだ怒ってる?怒ってるよね。完全に僕のミスだもの。ごめんね。…フローラが許してくれるまで毎日謝りに来る」
「………」
「自分の馬鹿さ加減が嫌になる。このまま君の部屋の前に穴を掘って埋まってしまいたい…ごめんね」
「……嫌いに…なってないの?私のこと…嫌いになったでしょう。醜いことを言ったもの」
「!! 嫌いになんてなるもんか。君が怒って当然のことをやらかしたのは僕だ。
好きだよ可愛いフローラ。僕が好きなのはフローラだけだ。
僕は王宮の官吏になって出世し、君に生活の苦労をさせないようにするつもりだ。
今でも投資で資産は稼いでいる。好きな魔法を使ってフローラは楽しく暮らしてくれればそれでいい。
君が側にいてくれればそれだけで幸せなんだ」
そっとドアが開いた。僕は素早く中に入り逃さないようにフローラを抱きしめた。
お湯に入ったのかいい匂いがする。柔らかなアイボリーの室内着を着ていた。
「臭くない?」
よく洗ってもらったがさっきの匂いが残っていないだろうか、不安なフローラは小さな声で尋ねた。
「全然。とってもいい香りがする。フローラを取り戻せたのかな。失いそうで怖かった」
アレンは肩に顔を乗せ深く息をした。
「アレンが私以外の女性と親しいのは嫌。あの人見せつけるようにアレンに触れたわ」
また泣きたくなってきた。さっきの場面がフラッシュバックする。
「親しくもないのに昔からの知り合いってだけで迂闊に名前を呼んだ僕が悪い。触らせたのは完全なミスだ。許してくれる?もう決して間違えない。君だけを愛してる」
そう言いながら顔を覗き込むなんてずるい。私ってチョロい。
「やきもち焼きで淑女じゃないのにいいの?」胸に顔を押し当て尋ねる。
「妬くのは嬉しいけどこんなふうに体を壊すから駄目だよ。無理に淑女にならなくていいよ。僕が隙を見せないようにするから。仲良しアピールが足りないようだ。もっと頑張るよ」
髪を優しく撫でながら甘やかしてくれる彼が好きだ。
(でももっとって今でもかなりいちゃいちゃしてるみたいだよ。
メイド達の私達を見る目がハートになっているんだけど)
アレンには分からないかもしれない。だから口に出して言ってみた。
「あのね、今でもいちゃいちゃしてるらしいよ。邸には私たちの恋を見守る会まであるみたい」
「見守る会?何それ。甘々成分が足りないから変な女に絡まれるんだ。もっと見せつけよう。ぴったりと離れなければ付けいる隙がないって分かるだろう?
離れているときに近づいてきて来たらどうするかな?
僕の婚約者はフローラですと書いた紙を胸に張って歩きたいくらいだ。
でも婚約者だと言っても絡まれるんだよな。君以外にはもっと氷のように冷たい男になるよ」
胸に紙を張ったアレンを想像して、笑いがこみ上げてきた。
フローラは「ふふっ」と笑えるくらいには回復をした。
「なんで笑ってるのか分からないけど、フローラは笑顔が似合うよ」
蕩ける蜂蜜のような瞳で彼女を見た。
アレンは額にキスを落としながら、
愛しい人の笑顔を守ると改めて誓った。
雨降って地固まる?仲直り出来て良かったね。フローラが好きなら泣かせちゃ駄目だよ。アレンもっとしっかりして!




