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余命僅かの令嬢は婚約解消を望みます  作者: もも


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17/22

 自己嫌悪

読んでいただきありがとうございます。

 馬車の中はハンカチで口を押さえて吐き気を我慢した。

隣に座ったアレンがオロオロしているが自分のことで手一杯だ。彼には背を向けて座った。

誰のせいだと思っているのだろう。

放っておいてくれれば良いものを。


顔色が悪いまま邸に着いたフローラは、玄関にいた家令に運ばれて食べた物を全部トイレで戻した。苦しくて苦しくて仕方がなくて涙が出た。


あれくらいで感情的になるなんて情けない。大失敗だ。淑女教育のやり直しだ。

リンドバーグ夫人に叱られる。

「何も身についていませんでしたね」と言う声が聞こえてくる気がした。


自己嫌悪に陥ったフローラはベッドの中に潜り込み布団を被った。





 アレンは馬車を下りた時に手を差し出したのにフローラから身を躱され落ち込んだ。


迂闊だった。幼馴染とはいえ親しい訳でもない令嬢を呼び捨てにし、頬を触らせてしまった。

何故とっさに振り払わなかった?

昔から知っていたとはいえ油断をしすぎた。


痛恨のミスだ。

フローラの両親に説明して謝罪するつもりで面会の申し込みをした。

殴られるのも覚悟の上だ。




暫く待たされた後、会うことができた。明日以降に延ばされなくて良かったと心の底から感謝した。


執務室に入るといつもと変わらない伯爵と夫人が座っていた。



「今日は私のミスでお嬢様を傷つけてしまいました。申し訳ありません」

入り口でアレンは深々と頭を下げた。


「フローラは帰ってくるなり部屋に籠もったままで要領を得ないの。詳しく教えてくれるかしら」心配そうな夫人が口を開いた。


メイドや護衛から報告が上がっているはずなのに、アレンから直接聞いてくれる伯爵夫婦の気持ちがありがたい。



アレンはカフェを出てからのことを包み隠さず報告した。


「私の完全なミスです。申し訳ありませんでした」


「分かりました。つい忘れそうになるのだけどあの子は元気になってまだ1年もたたないの。今にも死にそうになることが何度もあって随分甘やかしてしまったわ。

淑女教育も途中で、まだこれから。

貴方はそれでも良いのかしら?

そんなあの子の側にこれからもずっといてくれるのかしら?」


「彼女が元気になって油断してしまいした。その隙を突かれからかわれたのです。情けなくて仕方ありません。

守ってあげないといけなかったのに、自分が傷つけてしまうなんて最低です。

ですがこれからは違うと誓います。

心身を鍛え直し覚悟を持ってお守りします。

信じていただけましたらこれからも側にいることをどうかお許しください」


「君はまだ若い。間違えることはあるだろう。だが娘は可愛い。他人に傷つけられるのを黙って見ているつもりはない。

あの子が社会でやっていくという自信が付かなければ、このまま自由に魔法を使わせてやるだけでも良いと思っている。

我が家にはそれだけの力がある。よく考えてみてくれ。

君が違う道を選んでもマクミラン伯爵家は邪魔などしないと誓おう」


言われた途端にぞっとした。伯爵の考えひとつでフローラと別れることもあるのだという暗い未来が見えた。


「このような事態を引き起こし大変申し訳ありませんでした。

もう女性は寄せ付けません。

王宮官吏になってフローラ嬢と穏やかに暮らしていくつもりでいます。

私の給料だけでは贅沢はさせてあげられないかもしれませんが、住むところとメイドは雇えるように考えています。

生活の心配のないように投資の勉強もしていてそれなりの結果を出せています。

どうかこれまでと同じく彼女の側にいることをお許しください」


アレンは床に頭を付けフローラの両親に許しを乞うた。


「君がそこまで考えていてくれるのなら言うことはないが、娘を貶めたいという女は多い。見た目が幼いから自分の方がと思うのだろう。

今日はモーリス侯爵令嬢だったか?私は手をこまねいているつもりはないよ。

君に近付いて来ているのはそういう類の女性ばかりじゃないかね。

娘は淑女教育がまだまだだから上手く躱せない。私も相手が分かれば潰すが。

今回のようなことがあると娘が落ち込んで傷つくのは想像に容易い。

もしも魔力が無意識に攻撃的になれば相手を危険に晒すかもしれない。

それでも君は側にと願うのかね?」


「私の側にいて欲しいのはフローラ嬢だけです。彼女が攻撃的になるのは私が原因です。

そんなことはさせません。

手を汚すのは私がやります。裏で潰すのも厭いません。

後で彼女の部屋の前に行かせて貰えませんか?挽回させてください。彼女が泣いていると思うと居ても立ってもいられません」


お前が泣かせたのに言うかと叱られるのを覚悟で申し出た。


僕の周辺のことは全て伯爵家に知られていた。

そうだよな、あんなに可愛がっているんだ。調べない訳がない。

それにしてもこんな子爵家の三男のどこが良くてちょっかいをかけて来るのだろう。卒業をすれば平民なのに。


女の考えていることは分からない。


その点フローラは裏表がない。素直だ。


そんなことを考えていると夫人から声がかかった。


「やってごらんなさいな。失敗したら当分会うのを禁止します。それでも良ければどうぞ」と。


夫人は微笑んでいるが目が笑っていなかった。

怒っている。完全に怒っている。僕は背中に冷や汗が流れるのを感じた。



グレンダはマクミラン伯爵家とサンダース子爵家から抗議を受けた侯爵が、婚約者のいる男性に言い寄った恥ずかしい娘だと怒り狂い、遠方の修道院へ入れました。

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