帰途で
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順調に馬車は走り出し峠に差し掛かろうかという時に外が騒がしくなった。
野盗が襲って来たのだろうか?それにしては揉めるような声や剣の音が聞こえない。
護衛が馬車の窓をトントンと叩いた。
「どうした、何かあったのか?」
お父様が馬車の扉を開け素早く外へ出て聞いた。
「旦那様、この先で崖崩れが起きたようです。遠回りになりますが他の道を行くことをお許しください」
話は馬車の中まで聞こえた。
「崖崩れなの?直せるかもしれないわ。クリス、力を貸してくれる?お父様はいざという時の為に後ろで見ていて」
「良いけど、どうするの?」
「ああ、気をつけるんだよ」
お父様はどっしり構えている。少しは認めてくれたのかな。
私は崩れ落ち山になった土砂に向かって手をかざした。
「土よ、元の場所に戻れ」
その途端映像が逆再生したかのように土や岩、大木が一瞬で崖の中に戻った。
「姉様凄い!!」「お嬢様の魔法か?!」弟と護衛達の声が重なった。
「クリス、まだ残っている木を風の力で切り刻んで崖に埋め込んで!」
「任せて!」戻しきれていない小枝が崖の中に吸い込まれた。
その場所は崖崩れなど無かったように、元のきれいな道に戻っていた。
「クリス凄いわ!!」
私たちはお互いを褒めあった。
「子どもたちよ、見事だった。ここはすぐに頑丈な補強を手配しよう。2度とこんなことが起きないように」
お父様が約束してくださった。
後続の馬車の人たちがぽかんとして見ていた、
徐々に助かったという事が分かったのだろう、感謝の言葉と拍手が聞こえて来た。
「お嬢様、坊ちゃま凄いです。ご立派です」
「旦那様方、道を直していただきありがとうございます。
私は商人で荷物を運んで王都に行く途中でした。
遠回りしなければと思っておりましたが、このまま進めそうで助かりました。荷台には旬の野菜を積んでおりましたので。
お礼と言っては僅かでお恥ずかしいのですが、受け取っていただければ嬉しいのですが」
そう言って差し出されたのは箱に入ったオレンジだった。甘い匂いがしている。
「当たり前のことをしただけだ。気を使わなくていい。これも売り物なのだろう?」
「ですが、遠回りをしていれば腐るところでした。あっ、貴族の方に食べ物を渡すのはだめでしたか?大変失礼なことをいたしました」
「そんなことはない。ではありがたくいただこう。ゴウ受け取ってくれ」
ゴウと呼ばれた護衛が受け取った。
鼻の聞くクリスが「匂いに異常はありません」と言ったのでオレンジは荷物と一緒に積まれた。
貴族は毒殺の可能性があるのでむやみに貰った物は食べない。
オレンジは邸で毒の検知が出来る者に判別させてから食べられるかどうか決まる。一家で食べて毒殺されるなんてあってはならないからだ。
あの男性は善意の人だろうが例外はない。
美味しそうな甘い匂いが鼻の辺りに残っている。
よおし、魔法で毒の感知が出来るようになるぞと決めた。
食いしん坊ね、ですって?いいの、貪欲に魔法を覚えたいのだもの。
それから私たちは何事もなかったかのように道を進み、王都へ帰ったのだった。
邸の前で待っていたのはお母様とアレンだった。使用人達は後ろに並んでいる。
「お帰りなさい。あなた、フローラ、クリス。無事で良かったわ」
「ただいま、心配かけたね。皆無事だ」
「「お母様ただいま帰りました」」
「お帰り皆無事で良かったわ」お母様の言葉に護衛達が嬉しそうだ。
「フローラお帰り。無事で良かった」アレン様が近づいてきて言った。
伸ばした両手は家族の前だと思い出し恥ずかしくなったのか行き場なく下ろされた。
「アレンわざわざ出迎えに来てくれたの?」
「顔を見るまで心配で家でじっとしていられなかったんだ」
耳の先を赤くしたアレンが告げた。
「ありがとう」
ふんわりと心が温かくなった。
「話は後でゆっくりすればいいわ。まずは邸の中に入りましょう」
生温い空気を壊すようにお母様が言った。
「そうだな、早く入ろう。埃を落とさなくては」
「お母様の好きなタルトタタンがお土産よ。それでお茶にしましょう。アレン少し待っていてね」
「ああ、ゆっくりでいいよ」
そう言うと私たちは汚れを落とすために湯を使い着替えた。
私たちはその後サロンで領地の話や、帰りに魔法で崖崩れを直した話で多いに盛り上がったのだった。




