デート
あの方アレン様に気があるのかな?でも婚約者とデートをしていると言ったのに妹扱いするなんて礼儀がなってないわ。
好かれたいならそれなりに動かないと。
絶対渡さないけど。
「せっかくのデートなのに気分の悪い思いをさせて悪かった。昨日は友人が分からないところがあるというから、教室で教えていたんだ。
その時に近くにいたのだろう。あれに教えてはいないよ。信じてくれる?」
「分かった、信じるわ。でもアレン様がモテても無理もないわ。優しいんですもの」
同級生をあれ呼びするところに彼の関心のなさが分かって嬉しい。
心が狭いな、私。
「僕はモテないよ。優しくするのはフローラだけだ。
あれで伯爵令嬢だ。甘やかされているから他人は自分の思うように動くと思っている。厄介な存在だ。
気分が悪いからあれの話はもうやめよう。もう一つ行きたい所があるんだよ。そこへ行こう」
5分ほど手を繋いで歩くと雑貨屋に着いた。文房具やぬいぐるみ髪飾りやハンカチ等色々な可愛らしい物が店内に溢れている。
「まあ、可愛らしい物が沢山あるのね。素敵!」
「この中からお気に入りが見つかると良いんだけど」
沢山の商品の中にそれはあった。書きやすそうな硝子のペンだ。緑色があったので手に取ってみた。良さそう。
「それはうちの店でも人気があるのですよ」いつの間にか近くにいた店員さんにお勧めされた。アレン様に手に取ってもらった。
「いい感じに手に馴染むね」
「ではこれと紫色の物をいただくのでプレゼント包装にしてください」
今日の記念にペアで持ちたい。お互いの色のペンで勉強をしているのを想像して口元が緩んでしまう。
店員さんにそう告げると、ミラがさっと支払いを済ませた。
そこへさっきの令嬢が入ってくるのが見えた。
が、店頭で転んだようだ。あんな所に躓くところがあったかしら?アレン様を見ると悪い顔になっている。
もしかしたら足元に氷魔法を張ったの?それで転けたのかしら。
店の人や侍女が手を差し伸べている内に出てしまいましょう。証拠は消したはずよね?
私たちは2度目の面倒事を無事に回避して店から出ることに成功した。
馬車に乗り込んだ私たちは安心して話をした。
「さっきのアレン様の仕業でしょう?」
「これ以上絡まれるのはごめんだからね、巻き込まれる前に手を打った。自然に転んだとしか見えないよ。せっかくの初デートなんだ。邪魔なんてさせるものか」
「ありがとう」
「あれくらいどうってことはないよ。フローラを無視するなんてあり得ない無作法だからね。それよりこれを受け取って」
そう言って取り出したのは小さな赤いリボンの掛けられた箱だった。開けると紫水晶の髪飾りが入っていた。
「綺麗!でもこの前指輪をもらったばかりなのに良いの?」
「大丈夫、心配しないで」
アレン様は優秀だから特待生で学院に通っている。普通に行くのとでは違い随分経済的なはず。だから貰っても良いのかな。
「ありがとう、嬉しいわ」
せっかくの好意だ。遠慮しないで受け取っておこう。私はさっき買ったペンを差し出した。
「色違いで買ったの。お揃いって嬉しいなと思って…」
「お揃いなんだ。嬉しいよ、ありがとう。勉強が捗るよ。ねえ、そろそろアレンと呼んで欲しいな」
破壊力抜群の笑顔に私は溶かされそうになった。
「ア、アレン」
「うん、良いね。呼び捨てって特別な感じがして胸にくるものがある。フローラ髪に着けさせて」
そう言って隣に座り直したアレンの手が伸びてくる。髪に手が……心臓がものすごく早く鼓動を打っている。頬が熱を持ってくるのが分かる。
「よく似合うよ。今度は指輪も着けてくれると嬉しい」
今日は平民風のワンピースだから指輪は着けて来なかった。アレンの紫色の宝石だ。
鼓動は中々大人しくなってくれなかった。
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