第2集積所での出来事(後編)
「でっ。リザイア湿原での仕事は、どうします?」
「ウチは受けても良え思う。」
「そうね。
ここは、一生懸命、動いてくれたタメルコさんの顔を立てて、受ける事にしよう。」
ナシアタ君の質問に答えたレイヒちゃんの回答に嫁が頷く。
「有難うございます。
タメルコ様もお喜びになられます。」
シタコさんが、そう言いながら、深々と頭を下げてきた。
「ねぇ……私は、どうなるのよ?
貴女達が、ギルドへ、私への制裁を犯罪奴隷落ちまではしなくてもよい。って言ってくれれば……なんとかなるんじゃない?
お願い……助けてよ。」
ナメヨが消え入りそうな声で僕達にお願いをしてくる。
「タメルコさんが言ってはったやん。
ギルドか、自分へしはった措置につきはっては、ウチ達にリザイア湿原の仕事を引き受けさせはる為の特別待遇やないと。
せやから、ウチ達が何を言うても無理やと思うで。」
レイヒちゃんが苦笑いしながらナメヨに返答を返す。
「てかさぁ……
そもそも、なんで、わたし達が貴女を助けないといけないの?」
「ナブサモの言う通りじゃ。
妾達に危害を加えようとした者を助ける理由がない。
寧ろ……後顧の憂いを断つ為に、叶うのならば、主と、その家族を、今すぐにでも皆殺しにして欲しいぐらいじゃ。」
会話に加わってきたムンナちゃんが、タメ息を付きながら物騒な事を平然と言う。
◇◇◇
「ボクオ。シタコ。
貴方達はギルドの通達に毎日、目を通してたのでしょう?
タメルコ様にも言える事だけど……こんな大事な事を隠していた事への罪悪感はないの?
罪悪感があるのであれば、私が犯罪奴隷へ落ちないように、ギルド本部に嘆願書を書いてよ。」
「心配をするところは、そこなんっすか?
ナメヨ様は、貴族派の末席に座るルラレ子爵家の人間として、
ヤドカリ商会の皆様が、ネギハタ高原国の開発局にとって大事なビジネス パートナーであり、キテ・ウミシシ様が彼女達の事を私的なご友人だと思われておられる事を理解した上で、
王族派の片方と懇意にされておられるヤドカリ商会の皆様を敵と呼び。皆様へ対して殺人予告的な事まで仰られんっすよ?
その発言をタメルコ様が、グンフ殿下やウミシシ様に隠すとは思えないっすよ。
ギルドの所有するの犯罪奴隷に落ちるのが嫌?
それだけで済めばラッキーっしよ。
頭の中は、お花畑なんっすか?
俺っちが思うに死罪確定コースだと思うっすよ。」
「ボクオ。言うだけ無駄。
ナメヨ様の凝り固まった選民意識は、最後の瞬間の少し前まで取れないと思うわよ。」
ナメヨの言葉にボクオが驚く。
そんなボクオを嗜めるようにシタコさんが話す。
◇◇◇
「貴女達、ふざけた事を言わないでよ。
私は貴族派の……」
【ガタ・ガタ・ガタ】・【ガタ・ガタ・ガタ】
【ガタ・ガタ・ガタ】・【ガタ・ガタ・ガタ】
【ガタ・ガタ・ガタ】・【ガタ・ガタ・ガタ】
ナメヨが急に真っ青な顔で震え始めた。
「やっと貴族派が解体された。っていう現実を、ご理解なされたみたいですね。」
シタコがニヤニヤした顔でナメヨを見る。
【ガチャ】
「ナアヨさん。
貴女、また、私が居ない間に性懲りもなく……」
「この人は……自分の未来に絶望をして凹んでいるだけですよ。
それよりも……リザイア湿原の仕事を受ける事にしましたので、その打ち合わせの続きをさせて下さい。」
嫁がタメルコさんの言葉を遮る。
「有り難うございます。
ボクオ。シタコ。
ナアヨを拘束して地下牢に閉じ込めておいてください。
これ以上、我々の落ち度でヤドカリ商会の皆様の貴重な、お時間を奪ってはいけませんからね。」
「畏まりました。」×2
タメルコさんの言葉にボクオさんとシタコさんが返答を返す。
「まっ。まっ。ぐぇ。」
「静かに言う事を聞いて下さ~い。
って……返事……出来ないかぁ。」
土下座をしようとしたナアヨは、
シタコさんにかかと落としを喰らい泡を吹きながら気絶してしまった。
そんなナアヨを、シタヨさんはニヤニヤと笑いながら見下ろしていた。
◇◇◇
「最後までお見苦しとこをお見せしました。」
ナアヨは、ボクオさんに右足を掴まれ、無雑作に引きずられて執務室を出ていった。
確か……タメルコさんはナアヨを地下牢に閉じ込めておけ。って言ってたよな……
あのまま、階段を降りて地下まで引きずっていったら……って……どうでも良いか。
「移動ルートの指定はありますか?」
「ボクオとシタコを先導させますので、
立ち入り制限林道に入らずに、職員専用の林道を通り、第3・第4集積所に寄って、【バッタ偽装魔虫花】を受け取って欲しいです。
その後のルートにつきましては、今のところ、特に指定はありませんが、
極力、ギルドの営業所や出張所などに立ち寄り、メールなどを使った貴女達への連絡が無いか確認をしながらシクブツの町に向かって欲しい。との事でした。」
タメルコさんが、ナシアタ君の質問に笑顔で答える。
「そうそう。
ギルド本部からとグンフ殿下・ウミシシ様から、ご伝言を預かっております。
まず、ギルド本部からですが、
当職員の不適切な発言をお詫びします。
また、当職員への事案に対して、適切な対応を取って頂けた事、感謝します。
リザイア湿原の案件は一筋縄でいかない者が多々、居るかと思いますが……
是非、依頼を引き受けて頂き、今回のような対応を取って頂ければ有難い。との事です。
また、グンフ殿下・ウミシシ様からは、国民が不快な思いをさせた事をお詫びする。
また、ギルドへの対応を含め、適切な対応をとってくれた事に感謝する。
これ以上、君達に迷惑をかけないよう、ルラレ子爵家には言い聞かせた。
また、ルラレ子爵家には【王家の暗器】を派遣した。
少しでも、おかしな動きがあれば……直ぐに拷問にかけ、状況を整理した上で適切な処分を取る。
また、君達には、我が国の国内の何処でも通用する殺人許可書を与える。
この殺人許可証がある限り、君達は、どんな理由で人を殺しても、我が国の国内では、全て無罪となる。
許可証は第2集積所にメールをしているので、書面化した物を受け取ってくれ。
との事です。
因みに、これが、その殺人許可証になります。
どうか、お納め下さい。」
タメルコさんが、そう言いながら物騒な事が書かれた書類を恭しい態度で渡してきた。
「ウチ達の事を思いはっての事なんやろうけど……なんちゅうか……愛が重たいわ。」
「だよね……」・「だよなぁ……」
レイヒちゃんの言葉に嫁とナシアタ君が頷く。
「けどさぁ……
折角、くれる。ってんだから貰っとこ。
備えあれば憂いなし。
極力、この許可証の力を頼らなくても済むようにすれば良いだけだと思うよ。」
「じゃな。」×2
ムンナちゃんとワンゾウが、僕の意見に賛同してくれる。
「主達は、甘々にゃ。
人の子は、甘い顔をしたら直ぐに舐めて来るにゃ。
そして、ドンドン、厚かましくにゃるにゃ。
にゃから……今後、生意気にゃ奴に会ったら、ビシバシ、使うにゃ。」
【ゴチン】
「ネッコさんや。
殺すのは……極力、控えましょうね。」
「畏まりましたにゃ。」
嫁に拳骨を食らったシャーコが、荒ぶる魂を鎮めてくれた。
「まぁ……シャーコの言う事も一理あるけどさぁ……
殺人許可証はネギハタ高原国でしか使えない物なんだ。
でっ、僕達は諸国漫遊の旅を続ける者。
だから……ムカついたら、殺人許可証を使って殺しまくる。なんていう、楽をする事に成れてしまうわけにはいかないんだよ。」
「確かにエンクルの言う事にも一理有るにゃね。」
シャーコが頭をさすりながら、僕の言葉に頷く。
「兄さんが一番、怖いわ。」
「言えてる。」
レイヒちゃんと嫁がジト目で僕を見てくる。
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