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ヤドカリ姫は異世界の扉をひっそりと開ける  作者: モパ
【第2章】モンスター氾濫と紛争
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早起きと雑談 / 不穏な空気

「ふぁぁ。

静かになると眠くなるね。」


時刻は9時。


嫁が欠伸をしながら、窓の外を見ている。



30分ぐらい走ると、絶え間なく聞こえていた、【コーン・コーン】という、木を切る音が途絶え、森の中は静寂に包まれていた。



『木こりさん達は、200キロぐらい先まで居はらんよ。


このペースやと、この道の先に居はる、一番、近い木こりさん達の仕事現場に着くんは、7~8時間前後やね。


せやから、今の内に寝ときなはれ。』


レイヒちゃんの声が携帯電話から聞こえてくる。


「うん。

そうさせて貰うよ。」


嫁がレイヒちゃんに返答を返す。



因みに、僕と嫁はバンクベットの上に居る。


寝相が悪くてもダイネットに落ちないように合言葉を言わないと通れない結界が、バンクベッドの先に張られているので安心だ。



■■■



トイレに行きたくなって、ふと目が覚めた。

携帯電話を見ると15時を表示していた。


隣では嫁が、まだ、寝ている。


起こさないように結界を抜けて、バンクベッドからダイネットに降りる。



「エンクルが先に起きるとは珍しい事もあるものじゃ。」


「トイレに行きたくてね。」


揺れる車内をムンナちゃんが座っている方とは逆側を通りながら異空間ハウスの扉を開ける。


開けた先には廊下があり、トイレと風呂の入り口が右側にある。


異空間ハウスの中に入ると床の揺れが止まる。


僕はトイレの扉を開き、トイレの中に入った。



◇◇◇



「2度は寝しないのか?」


トイレから出てダイネットの椅子にムンナちゃんと向かい合うように座ると、ムンナちゃんが声をかけてきた。



「うん。

もうすぐ目的地でしょ。

そしたら晩御飯になるだろうからね。」


僕は笑顔でムンナちゃんの質問に答える。



「そうか。」


ムンナちゃんは、そう言いながら嬉しそうな顔をしている。



「主達の世界は平和なんじゃろ?

主の目には、この世界は野蛮な世界に映っておるか?」


「実際に全てを見て回った訳じゃないけど……


僕達の居た国では、この世界よりも、一般市民が他国の情報を仕入れやすい環境だった。


でっ。その開示されている情報が正しいと仮定した場合……僕達の世界の全ての場所が平和だった訳じゃない。


たまたま、僕達の住んでいた国が平和だった。ってだけだよ。



しかも、その平和を生涯、享受する事が出来る保証もなかった。


それに……地震などと言った自然災害が多い国だったし、犯罪者が全く居ない訳でもない。


身分による格差はなかったけど……貧富の差は普通にあった。



まぁ……僕が見聞きした限りでは、

チートな能力が無い一般市民にとっては、僕達の国の方が住み良い気もするけど……


この世界の何処かの町や村に、ガッツリ、腰を据えて生活をした訳ではないから、実際のところなんとも言えないな。



確かに命を取られる心配は、少ないとは思うけど……

人生に疲れて自◯する人が多い事や、子供を産み育てる余裕が無い人が沢山居る事も、僕達の国の問題点の1つに上げられていたぐらいだからね。



とどのつまり、

何処の世界。何処の国とかに限らず、内容は違えど、何かしらの問題を抱えているものだと思うよ。」


「何処の世界。何処の国にとかに限らず、内容は違えど、何かしらの問題を抱えているものだと思うよ。かぁ……


確かに、言われてみれば、そんな気がしてくるのう……


やはり、ユートピアは夢の中の世界なのやもしれぬな。」


ムンナちゃんが苦笑いしながら話す。



「だろうね。

てか……ユートピアは、誰にとってのユートピアか。って事。


多分……万人がユートピアだと思えるような場所はないんじゃないかな。」


「かもしれぬな。」


ムンナちゃんが、そう言いながら苦笑いしていた。



◇◇◇



「グワーア・グワーア」・「グワーア・グワーア」

「グワーア・グワーア」・「グワーア・グワーア」

「グワーア・グワーア」・「グワーア・グワーア」



ムンナちゃんと話していると、気味の悪い鳴き声が、窓の外から聞こえてきた。



「何?何?何?」


嫁がバンクベッドから叫ぶ声が聞こえてくる。



「魂食いアオサギという、

夕暮れ時から明け方まで現れて、成仏が出来ぬ弱い魂を喰らうモンスターじゃ。」


ムンナちゃんが、淡々とした口調で説明してくれる。



『てっ。事は……

今晩も幽霊が出る。って事やね。


この先に居はる、木こりさん達が、昨日みたいに、快く、ご一緒させてくれはったら良えんやけど……』


レイヒちゃんの溜息をつきながら話す声が携帯電話から聞こえてくる。



■■■



『ヨツク傭兵団の主計長をさせて頂いておりますジョフサと申します。

掲げられておられる旗から察するにヤドカリ商会の方々だと思いますが合っておりますか?』


『せやで。』


時刻は16時。


頭の中に響き渡る女の人の声に、レイヒちゃんが念話で返答を返す。



旗は基本、運転席横に棒を差して掲げるらしいが、最近は、僕達の世界を真似してか、ナンバープレートがある辺りや、

トラックのコンテナの右左のどちらかの上部に貼り付けたりする人も居るらしい。



因みに、僕達のキャンピングカーは、

前はナンバープレートのある辺りに小さい旗を、

後部には、ドアが無い事もあって、大きな旗を上部に貼り付けている。



『鑑定させて頂いても宜しいでしょうか?』


『良えよ。

そんかし、ウチ達も鑑定させて貰うで。』


『問題有りません。


寧ろ、我々が嘘をついて無い事を知って頂く為に鑑定をお願いしたいです。』


ジョフサと名乗る女の人の元気な声が頭の中に響き渡る。



◇◇◇



『有り難うございました。

皆様がヤドカリ商会の方々という事が分かりました。』


『お互い様や。礼はイラへんよ。

てか……傭兵団の人達が、ちゃんと許可、取りはって木こりの仕事をしてはるとは思わんかったわ。』


レイヒちゃんの声が頭の中に響き渡る。



『どうやって調べられたのかは分かりませんが……


我々、ヨツク傭兵団の団員は土木・建築・架橋・障害物除去・人外地での通信などの技術を持った工兵が主要メンバーとなる傭兵団なのです。


ですから、事前に本業の依頼が来ない限り、毎年、冬になると演習と実益を兼ねて、この立ち入り制限林道で木こりの仕事をさせて頂いているのです。



まぁ……今年に限って言えば、

キトナガエ帝国の西部で起こったモンスター氾濫の復興作業に参加した方が実益があったでしょうけどねぇ……


ドタキャンが出来る期間を過ぎてましたので、泣く泣く、この仕事に従事させて頂いて……って、これ……


ギルドには内緒ですよ。』


ジョフサと名乗る女の人の元気な声が頭の中に響き渡る。



『さよか。

でっ。えらい焦ってはるように見えはるけど…本題は?』


『フフ。

流石ですね。


ですが、その……身の上話的な話をさせて頂いたのには訳があります。


この辺りは霊道が通っている上に、瘴気の濃度も濃い事もあって、時々、魂食いアオサギを見かけます。


ですが、その……

私は、20年近く、ほぼ、毎冬、この立ち入り制限林道で木こりの仕事の補佐をさせて頂いているのですが、その……


日が高い内から魂食いアオサギが群れて行動するのを初めて見ました。



ですから、ほんの少し前に、この異変の報告と、

明日の朝から向かう予定だった、ここから60キロ程度、離れた場所にある第2木材集積所へ避難させて貰う旨をギルドのネギハタ高原国支店にメールで連絡しました。


そうしましたら、

16時半まで、ここに待機し、それまでに貴女達、ヤドカリ商会の皆様が来られた際は、第2木材集積所まで、我々と一緒に来て頂いて欲しい旨を伝えて欲しい。という指示を受けました。


ですから、その……我々と一緒に来ては貰えないでしょうか?』


ジョフサと名乗る女の人の真剣に話す声が頭の中に響き渡る。



『嘘はついてはらへんみたいやね。

皆、勝手に決めて悪いけど……この人達について行くで。』


「了解。」×3・『了解。』


僕達は、レイヒちゃんからの念話に短い返答を返した。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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