【サイドストーリー】滅び(前編)
『リーとオカウから、皆を連れて集合したい。って念話が来たぞ。』
『呼んで良い?ねぇ……呼んで良い?』
俺が使役している集合リスのタペとストの声が頭の中に鳴り響く。
時刻は0時。
こんな夜更けに何を言ってるんだ。とは思うが……
こいつ達が妙なイタズラをした事はない。
イワツギ様は、俺と、ブモウとヘキコを送り出される時に、
皆で隠し通路の入り口がある地下室に固まって寝る。と仰られていた事から考えると……
何かしらのトラブルが起きたのかもしれない。
『本当に、全員、集合してるんだな?』
俺はリーとオカウに念話を飛ばす。
距離が離れるほど、マナの消費量が激しいので、遠距離に居る従魔との念話は多用したくは 無いのだが……ミスは許されないからな。
『爺様、ママ上、ムキムキ野郎、姉御の舎弟、小娘1号・2号(オウキレ&ベニキレ)。皆、一緒だよ。
早く呼んでよ。ここ危険。』
リーの声から焦りが見える。
『タペとストいけるか?』
『うん。『集合』。』×2
タペとストが術式を詠唱すると、俺以外、誰も居なかったトラックの荷台のコンテナの中に、
イワツギ様、妻、トウザム、モクオ、オウキレ、ベニキレ、リー、オカウが現れた。
◇◇◇
『たった、今、イツワギ様達が合流した。』
俺は、俺の乗るトラックを運転するヘキコと、
俺達の乗るトラックの後ろを走るトラックを運転するブモウに念話を飛ばして、状況を報告する。
『何があったのですか?』
ヘキコの声が頭の中に響き渡る。
『昼前に、外交部(キトナガエ帝国の外交部)から、
ニンムシュ様が、タカシュンレイ家の領地の領都にワームホールを繋いで、攻める準備を整えられたので、
隠し通路がある地下室から、領都の外に繋がる下水道を通って、何時でも逃げ出せる準備をしておけ。という指示が来た事を共有しましたよね?』
『はい。
その後、直ぐ、諜報部からも同じ指示が来ました。
ですから、協力者達には、速やかに領都を出るように指示を出しました。』
ヘキコが、イワツギ様に念話を返す。
『でっ。その作戦が……
ほんの少し前に実行に移されたのです。
しかも……
モクオやトウザム。オウキレやベニキレが言うには、ワームホールは街壁の外ではなく、中に繋がれていたという話です。
念の為、集合リスのリー達を使役しているムアラタを副領都へ使いに出す。という体で、領都の外に出しておいて正解でしたよ。』
念話で語られているイワツギ様のお顔からは安堵の表情が見て取れる。
■■■
俺達は30分をかけて隊列を組み直した。
ブモウが、小瓶に封印していた寒冷地仕様のクアッドを出して先導してくれる。
1台目のトラックの運転手は妻。
助手席にはペットキャリーバックに入れられたタペとストが乗り込み、2列目には俺とイツワギ様とトウザムが座る。
このトラックは先刻までブモウが運転していたトラックだ。
ヘキコが運転している、2台目のトラックの助手席には、ペットキャリーバックに入れられたリーとオカウが乗り込み、2列目にはモクオが座っている。
因みに、俺が乗り込んでいた空のコンテナには、
イツワギ様が小瓶に封印されておられた大使館の重要書類を入れた木箱などを小瓶から出した物が、非常食と一緒に乗せられている。
そして、オウキレとベニキレが、
小瓶に封印していた寒冷地仕様のクアッドを出し、
2人乗りをして殿を務めてくれている。
『最速で、タカシュンレイ家の領地から脱出してくれ。』
イツワギ様が念話で短い指示を出される。
『畏まりました。
では、ベシアセ連邦の領土に入ります故、我が国(キトナガエ帝国)の貿易商会の者に偽装します。
折衝が必要な時は、私が商会長として矢表に立ちます故、皆様は上手く話を合わせて下さい。』
ヘテコが念話でイツワギ様に返答を返しつつ、俺達に指示を出す。
『了解。』×8
俺達はヘテコに短い返答を念話で返す。
◇◇◇
「タカシュンレイ家の領都は徹底的に破壊されているのだろうな……」
「ニンムシュ様は、拡声の魔術を使用され、
ギルド本部が出した声明や、私の出した声明へ対して返答すらも寄越さなかったシオスの港町以外の町や村に住むタカシュンレイ家の領民を全て根絶やしにする。と、ご宣言されてましたから……
きっと、そうなるのでしょうね。」
「ギルド本部の声明に一般人が返答など返せる訳がないし、
そもそも、俺達ですら、ニンムシュ様が声明を出された事を知らない。
タカシュンレイ・ナキコクや、タカシュンレイ・コンファンは、ニンムシュ様に何をされても自業自得だとは言えるが……
民にまで連帯責任を追及するのは理不尽な話だよ。」
「そうですね。
奥様達の一団が、既に祖国(キトナガエ帝国)へ戻っている事を祈るばかりですね。」
「だな。」
イツワギ様と妻が話している。
ニンムシュ様が、どのような声明を出されたのかは分からないままだが、
ニンムシュ様は、我々が想定していた以上に、タカシュンレイ家に、ご立腹をなされたている事だけは分かった気がした。
ーーーーー
【タン・タン・タン・タン】・【タン・タン・タン・タン】
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【タン・タン・タン・タン】・【タン・タン・タン・タン】
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【タン・タン・タン・タン】・【タン・タン・タン・タン】
【タン・タン・タン・タン】・【タン・タン・タン・タン】
【タン・タン・タン・タン】・【タン・タン・タン・タン】
【タン・タン・タン・タン】・【タン・タン・タン・タン】
【タン・タン・タン・タン】・【タン・タン・タン・タン】
魔力弾のライフルを撃つ音が、あちこちから聞こえてくる。
蒸せ返るような熱気と血と汗の臭いが、この町(タカシュンレイ家の領都)を埋め尽くす。
現役の近衛兵。警備兵。冒険者。傭兵に加えて、
退役軍人やギルドの職員。運び屋や行商人など、それなりに戦闘が出来る者も居るには居るのだろうが……
感知の魔術で見回している限りでは、寝込みを大軍に襲われた事や、
ニンムシュ様が立てられた、街壁を無効化して攻め込む作戦が、この町の住人達にとって想定の範囲外だったせいなのか、
この町の住人達は抵抗らしい抵抗も見せずに虐殺の憂き目にあっている。
『この町の財産は、全て、キトナガエ帝国のモンスター氾濫の復興費用に充てます。
気に入った住民を捕まえて性の捌け口にするのは構いませんが……
金目の物を着服しないようにお願いしますね。』
ニンムシュ様からのご指示が頭の中に響き渡る。
『和解をするつもりはありませんので、
タカシュンレイ・ナキコクや、その他の貴族や大商人等についても捕まえて来ても報償金は出しません。
ですから、この町の住人達の言葉にも耳を貸さず、誰であっても殺して差し上げて下さい。』
ニンムシュ様からのご指示が頭の中に響き渡る。
『精鋭部隊の皆様。狩りの時間です。
ワームホールをナキコクが居らっしゃる城壁の中の広場に繋ぎますので宜しくお願いしますね。』
ニンムシュ様からのご指示が頭の中に響き渡る。
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
「ウォォォォォー」・「ウォォォォォー」
俺達は、そのご指示に蛮声をもって応える。
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