モンスター氾濫の様子と蝗害の予測 / 幽霊の一団
【ブヒュュー】・【ブヒュュー】・【ブヒュュー】
【ブヒュュー】・【ブヒュュー】・【ブヒュュー】
【ブヒュュー】・【ブヒュュー】・【ブヒュュー】
【カタカタカタ】・【カタカタカタ】・【カタカタカタ】
【カタカタカタ】・【カタカタカタ】・【カタカタカタ】
【カタカタカタ】・【カタカタカタ】・【カタカタカタ】
時刻は1時。
キャンピングカーの窓へ吹きつける、風や雪は激しさを増していく。
『森や!
森が見えてきはったで!』
『あぁ。
キャンピングカーを走らせるのがキツイ。って思ってた。
ギリギリ セーフだな。』
『ホンマやね。』
レイヒちゃんとナシアタ君の興奮しながら話す声が携帯電話から聞こえてくる。
◇◇◇
【空の目】の映像には、キャンピングカーが鬱蒼とした森の中に吸い込まれていく姿が映しだされていた。
その直後、風や雪が窓を叩きつける音が弱まった。
【バシ・バシ・バシ】・【バシ・バシ・バシ】
【バシ・バシ・バシ】・【バシ・バシ・バシ】
【バシ・バシ・バシ】・【バシ・バシ・バシ】
キャンピングカーの窓から擦るような音がする。
キャンピングカーの窓から外を見ると、
室内灯の灯りが漏れ出した灯りに照らさた木の枝がぶつかったり、弾かれたりするのが見える。
『森の中に入ったで!
取り敢えず、吹雪はどないかなった。
せやけど……高原と違うてモンスターや動物を見つけるんが難しくなった。
せやから、外に出はる時は、今まで以上に気をつけてや。』
レイヒちゃんの淡々とした口調で話す声が携帯電話から聞こえてくる。
「悪霊にも気をつけるにゃ。
瘴気の濃度が跳ね上がったにゃ。」
レイヒちゃんの指示にシャーコが追加の指示を出してくれる。
「了解。」×3・『了解。』
ワンゾウ以外が、1人と一匹の指示に、短い返答を返す。
どうやらワンゾウは、
明日の朝から夕方にかけて行って貰う、番の仕事を見据えて眠りについてくれているようだ。
◇◇◇
『ムンナちゃんの言ってはった通りにしはったんかは分からへんけど……
久しぶりにキトナガエ帝国の西側を【空の目】でみたら、
猫系。熊系。狼系。犬系。ハイエナ系などのモンスターがミンボン山脈の樹海の方へ移動しはってはる。
それと……
群れの先頭が、アース ドラゴンなどといった地を這うドラゴン系のモンスターに代わり、
その後ろを猿系モンスターやリス系モンスター。 それと……ウサギ系などの小型の草食系モンスターに代わってはる。
そんでもって、大型の草食系のモンスターは、その群れの後ろをゆっくりと付いていってはるわ。』
「大型の草食系のモンスターをミンボン山脈の樹海に、どれだけ戻せるか否かが、被害を減らせるか否かを分けるじゃろうな。
大型の草食系のモンスターをミンボン山脈の樹海へ戻せる数が少なければ……
町や村の街壁や柵が破壊され、町や村に侵入を許すだけでなく、
餌不足と身の危険を感じた、熊系。狼系。犬系。ハイエナ系などの長距離移動を苦にしない、腐肉食を厭わぬ肉食系や雑食系のモンスター達が、小規模なモンスター氾濫を再び起こす可能性も出てくるからのう……」
ムンナちゃんが、サラッと恐ろしい話をする。
「そんな事になったら、生態系は滅茶苦茶になりそうだね。
僕達が、今、通ってる立ち入り制限林道は、雑食道造り飛蝗っていう、厄介な昆虫系モンスターが居るんでしょ?
東西の端と端とはいえ……影響は出ないの?」
「ミンボン山脈の樹海の大湖の小島に居るオビ家の者達は、雑食道造り飛蝗の天敵となる、雑食道造り飛蝗喰い鳥を繁殖させるプロじゃ。
じゃから、ニンムシュが、オビ家の者を、タカシュンレイ・コンファンの失言に対して、連帯責任を言い渡し、粛正でもしない限り問題は無いじゃろう。
そして……妾は、ニンムシュがオビ家の者を粛正する程の大バカ者では無いと信じておる。」
ムンナちゃんが僕の質問に淡々とした口調で答えてくれる。
『ニンムシュなんかに期待しはって問題無あらへんの?』
「あぁ。
ニンムシュをはじめとした神仏の代理人達は隙あらば、自分以外の神仏の代理人を殺そうと虎視眈々と狙っている。
そんな中、自分の縄張りの中心となっておるキトナガエ帝国の国力を落としたとは考えぬ筈じゃ。
それに……サブアウの縄張りとなる、アマズトモエ連邦や、ギルドの直轄地となるギルドのテチス山脈支店に被害が出れば、サブアウに攻め込む口実を与えたり、
ニンムシュが実権を握っているギルドのアタルトイ支部の実権をギルド本部に奪い返されてしまう口実を与えてしまう。
それだけじゃない。
キトナガエ帝国の北側に位置する、ベシアセ連邦などの国々は、ニンムシュの支配から逃れようとして、ナヤクラース連邦と仲を深めておると言われておる。
そして、ネギハタ高原国や、ワコク連邦。それに……キトナガエ帝国の南北の辺境の領主達などは、
このままキトナガエ帝国が中心となる経済圏にいるべきか否かについて、ニンムシュのベシアセ連邦に対する対応を伺おるとも言われておる。
そんな中、自分の失態で、雑食道造り飛蝗による蝗害を発生させるような事はせぬ。
この件に関して、妾がニンムシュを信じておるのは、こういう理由があるからじゃ。」
レイヒちゃんの質問にムンナちゃんが淡々とした口調で答える。
「自分が大好きなニンムシュが、自分の身に危険を及ぼすような事はしない筈。っていう事ね。」
「その通りじゃ。」
嫁の言葉にムンナちゃんが頷く。
◇◇◇
【シャー】・【シャー】・【シャー】
【シャー】・【シャー】・【シャー】
ダイネットの窓に取り付けられたカーテンが閉まっていく。
「皆。
室内の灯りを消したらダメにゃよ。」
『せやな。
ウチは、ナシアタのサポートに専念するわ。』
シャーコの指示にレイヒちゃんが反応する。
「どうしたの?」
『幽霊の群れが居はる。
今んとこ敵意は感じられへんけど……警戒するのに越した事はあらへん。』
「幽霊の集団が悪霊化する事例も無くも無いにゃ。
あやつ達が、そうならぬ事を祈るのみにゃね。」
『せやね。
とりあえず、ギルドのセキブンリ村の出張所から貰うた、幽霊の集団を見つけたら上げろ。って言われてた信号団を上げとかんとな。
ナシアタ。悪いけど……一瞬だけ、キャンピングカーを止めて。』
『おう。』
レイヒちゃんの言葉にナシアタ君が短い返答を返す。
◇◇◇
【バシューン】・【バシューン】・【バシューン】
『乗ったな。出るぞ。』
『良えよ。』
レイヒちゃんが素早く信号団を上げ、キャンピングカーに乗り込んだようだ。
キャンピングカーは、再び、ゆっくりと動き始める。
『めっさ、こっちを見てはるけど……敵意は感じられへんよ。』
『だとしても……気味悪いな。』
レイヒちゃんとナシアタ君の会話が携帯電話から聞こえてくる。
ビビりの僕が、運転席か助手席に居たら、漏らしてたかもしれないな。
「あの幽霊達は、霊道からはじき出されたように見えるのう……
【空の目】の映像に齧りつきながら見て無かったとはいえ……
霊道がパンクする程の被害が発生したようにも思えぬ。
いったい、何が起こってるのじゃろうか……」
「他の場所で起こった、何かの影響。って線もあるにゃよ。」
不思議そうな顔をしながら話すムンナちゃんに、シャーコが別の可能性を話す。
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