ギルドへの登録 / 【バッタ偽装魔虫花】と【アリ偽装魔虫花】と特効薬
「では。ここに手をかざして下さい。」
「はい。」
時刻は17時半。
僕は、セキブンリ村にあるギルドの出張所の受付嬢に返答をしながら水晶玉に手を置く。
僕達は、ゼンゾウさん達と別れの挨拶をした後、セキブンリ村に入った。
因みに、ツネさんとフヤさんは、昼前にフヤさんが、今晩のご飯を配ってくれた後、直ぐに、僕達が、ウミシシさん達とお別れをした砦に戻っていった。
ツネさん達の時も、僕達の時も、
お互いに忙しい事もあり、別れの挨拶は、お互いの無事を祈りあいつつ、握手ををするだけの簡単なものだった。
セキブンリ村にあるギルドの出張所から、
嫁はCランク相当の商人を保証するドックダクを、
レイヒちゃんはBランク相当の【魔術師】を保証するドックタグと、シャーコの飼い主である事を保証するドックタグを、
ナシアタ君はBランク相当の冒険者と運び屋を保証するドックタグと、ワンゾウの飼い主である事を保証するドックタグを
シャーコとワンゾウは登録された従魔である事を示す、自分の名前と飼い主の名前が刻まれた首輪を、
僕より先に登録申請を終わらせて、発行もして貰っている。
「犯罪履歴は見当たりません。
では、Bランク相当の回復師を保証するドックタグと、Bランク相当の解術師を保証するドックタグをお渡しします。」
「有り難うございます。」
僕は、頭を下げながら、セキブンリ村にあるギルドの出張所の受付嬢からドックタグを受け取った。
◇◇◇
「めっさ、見られてはるなぁ……」
「小さな村ですからな。
余所から来られた方が珍しいんですよ。」
レイヒちゃんの呟きを聞いた、セキブンリ村の村長とギルドの出張所の所長を兼任しているというナイエモンさんが苦笑いしながら話す。
「それよりも……あの森(ミンボン山脈の樹海)の東側でモンスター氾濫が起きた影響で、皆さんが通る西側は比較的、安全になったとは考えられますが……くれぐれも油断なさらないようにお願いしますね。」
ナイエモンさんが真剣な顔で話す。
「ほれ。
朝、ゼンゾウ経由で頼まれた薬だよ。
治験の結果を報告するんだよ。」
「はい。」
ナイエモンさんの奥さんで、真剣な顔で話す薬師のオヤクさんに返答を返す。
「しっかし……
重症患者を除く【森の瘴気の呪い風邪草】への特効薬が、立ち入り制限林道に生えている魔木に寄生している【バッタ偽装魔虫花】から作れるなんて……思ってもみなかったわ。」
「てっ、事は……僕の勘は当たりでしたか。」
「理論上はね。
チャア帝国で開発された、
【アリ偽装魔虫花】を材料にした重症患者を除く【森の瘴気の呪い風邪草】への特効薬と同じ効果がある筈だよ。
【バッタ偽装魔虫花】を煎じれば【アリ偽装魔虫花】を煎じたのと同じ効果が出るなんて……考えもしなかったよ。」
オヤクさんが呆れたような顔をしながら僕を見ている。
僕がこれに気がつけたのは異能、【異空間加工倉庫】のお蔭だ。
念の為、【森の瘴気の呪い風邪草】の呪いを解呪する事が出来る薬が欲しいなぁ……なんて考えながら、セキブンリ村の柵を見ていたら、
柵に張られていた、【バッタ偽装魔虫花】の押し花で作られた、蝗害を引き起こす雑食道造り飛蝗除けの護符が、重症患者を除く【森の瘴気の呪い風邪草】への特効薬の材料としてヒットしたのだ。
それでゼンゾウさんから、
この村(セキブンリ村)の薬師に【アリ偽装魔虫花】の代わりに【バッタ偽装魔虫花】を使用した【森の瘴気の呪い風邪草】への特効薬を作って欲しい。とお願いして貰い、今に至る訳だ。
因みに【バッタ偽装魔虫花】の押し花で作られた、蝗害を引き起こす雑食道造り飛蝗除けの護符には、雑食道造り飛蝗除けの効果は無いらしい。
ただの迷信の類いだという事を、セキブンリ村の人達も知ってはいるらしいのだが……
止めた年に雑食道造り飛蝗が蝗害を引き起こした場合……なんて考えて、
雑食道造り飛蝗除けの護符作りを止めるに止められなくなっているらしい。
って……いかんいかん、思考が脱線し始めた。
◇◇◇
「僕が【森の瘴気の呪い風邪草】の呪いを解呪する事が出来る。っていうのも、オヤクさんが作ってくれた薬と同じで、あくまでも理論上の話なんですよ。
なので、不測の事態に備えて手札を増やせるのならば増やしたかったんです。
ですから、その……同じ昆虫に擬態する魔花ならば、煎じたら同じ効果が出るのでは?なんていう、妄想にも似たお願いをさせて頂いたのです。」
僕は、それっぽい話をオヤクさんにする。
てか、まぁ……
手札を増やしたかったのは事実なので、半分は本当の話だな。
「フフ。
けど……良いのかい?
特許申請上は、アタシがダメ元で作った物で、あんたは特許使用料を受け取れない。
アタシと提携した治験医として、ビビたる報酬を貰えるだけになるぞ。」
「多くの回復師や解術師と薬師の関係性が、
貴女と、キマベクの村の回復師 兼 解術師のフキエさんのような関係性ならば良いんですがね……」
「フキエの祖父のルカオは、アタシの弟で、
フキエは、そのルカオが急死した事で、いきなりキマベク村の見習い医師から医師に認定されちまったからね……
でっ。彼女は、その責務を果たす為に形振り構わず、悪戦苦闘した結果、
薬師であるアタシを師匠の一人だと考えるような、異端の医師になっちまったんだよ。」
オヤクさんがタメ息を付きながら話す。
「異端ですか……
逆パターンを含めて、それがスタンダードになれば助かる命も増えると思うんですけどねぇ……」
「あんたの言う通りだよ。」
オヤクさんが、そう言いながらタメ息をついていた。
■■■
『出ますよ。』
ナシアタ君の声が携帯電話から聞こえてくる。
僕達は、ナイエモンさんとオヤクさんと別れの挨拶をし、キャンピングカーに乗り込んでいる。
『ナビを見ながらの運転は久しぶりやんな。
事故らんように気をつけてよ。』
『おう。
言われなくても分かってる。』
レイヒちゃんとナシアタ君の会話が携帯電話から聞こえてくる。
「パパは、移動中に異能を使って、アリ偽装魔虫花の採集をするんだよね?」
「うん。そのつもりだよ。」
僕は嫁の質問に答える。
「パパが、【森の瘴気の呪い風邪草】の呪いを受けた人達を助ける為に真剣になるなんて、思ってなかったよ。」
「ミスして、悪評が広がると、今後の旅に支障が出るからね。」
「はぁ……
人助けの為でも、責任感からでもないんだぁ……」
僕の返答を聞いた嫁がガッカリした顔をしている。
「妾達以外、誰も居らぬのが、こんなにも不安な気分にさせるとは思いもよらなんだ。」
バンクベッドの上からムンナちゃんの声が聞こえてくる。
『ホンマやね。
居はったら、居はったで、色々と面倒臭いなぁ……って思うのにな。』
ムンナちゃんの言葉にレイヒちゃんが頷いている。
「ところで……
アタイ達が行く林道はモンスター氾濫の影響は受けてにゃい。っていう認識で良いんにゃよね?」
『【空の目】の映像や、
あちこちの通信機器をハッキングして得てる情報では、
ウチ達の行軍に支障をきたしそうな情報はあらへんよ。』
シャーコの質問にレイヒちゃんが答える。
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