新たな依頼と唐突な別れ
『行軍をストップするわよ。
16時30分まで休憩に入って。
フヤさん。
ご飯の指示を宜しくお願いします。』
時刻は7時。
イココ団の狼系の獣人で【無能者】のナツムちゃんの声が頭の声が頭の中に響き渡る。
『今日も、30分程度で出来る、簡単な麺入りのスープと麺無しのスープを作ります。
出来ましたら、お呼びしますので、私がお呼びしましたら、全員、飯盒を持って集まって下さいませ。
朝は麺入りのスープを食べて下さいませ。
それと……
今日も、後程、握り飯を配りますので、夕食の時に、麺無しのスープと一緒に食べて下さいませ。
以上です。』
『了解。』
フヤさんからの念話で送られた指示に、
乗り物を運転するドライバー達とレイヒちゃんが念話で短い返答を返す。
『補足をする。
そこにある、セキブンリ村へは、代表者のみが入る。
それ以外の者は、村の外で野営の準備を始めてくれ。』
『了解。』
ゼンゾウさんからの念話で送られた指示に、
乗り物を運転するドライバー達とレイヒちゃんが念話で短い返答を返す。
■■■
時刻は8時。
今日も、ワンゾウ・オギン・ギンマルは、楽しそうに回し車を交代で回している。
僕達は、それを見ながら、フヤさんの作ってくれた朝ご飯を食べている。
今日もフヤさんは、
僕達のご飯だけでなく、ワンゾウ・シャーコ・オギン・ギンマルと、サンスジ商会の2匹の雷豹のアラレゾウとオカキコの為に鶏の鳥モモ肉を茹でて渡してくれた。
フヤさんから受け取った、
茹でた鶏の鳥モモ肉をキャンピングカーの中に居るシャーコに届けたら、いつも通り、目をキラキラさせていた。
それに対して、ワンゾウ・オギン・ギンマルは…… 昨日までと同様、回し車の順番待ちの間に、食事こそはしているが……その目は回し車に釘付けだ。
◇◇◇
「良かった。
ヤドカリ商会の皆も、まだ、起きていたようだね。」
センメさんが、慌てた顔で駆け寄って来る。
「どないしはったんや?」
レイヒちゃんが小首を傾げながら質問をする。
「セキブンリ村のギルドの出張所の通信機器に、入ってたツネ殿宛のメールの中に、
我が国(ネギハタ高原国)の政府とギルドの支店。ギルドのテチス山脈支店と、アマズトモエ連邦政府とギルドの支店から連名で、
君達への新たな依頼と、君達が新たな依頼を引き受けてくれた場合の我々への指示等が入っていた。
取りあえず、地図を見せながら話させて貰うよ。」
センメさんが、そう言いながら、後ろを振り返る。
シュウゼさんとフクコさん。シキカカちゃんとサンエモン君が、折り畳み式の机を運び、
その後ろをクルクルと巻かれた大きな筒状の紙を持ったスジミちゃんが居る。
その他には、ツネさん。ゼンゾウさん。イココちゃん。ホンイちゃんも居る。
「姉貴……
トラブルが発生したの?」
ホンミちゃんが不安そうな顔で質問をする。
「大惨事に巻き込まれたわ。
唯一の救いは……一番の厳しい依頼をされているヤドカリ商会に拒否権も与えられている事ぐらいね。」
ホンイちゃんが、そう言いながら、憐れむような目で僕達を見る。
◇◇◇
「ヤドカリ商会への依頼は、
ここから東に向かった先にある砦から、オワトブ村とシモナカトブ村を繋ぐ街道の途中にある関所まで続く、立ち入り制限林道を通り、
そこから街道をひたすら西に向かい【森の瘴気の呪い風邪草】の呪いによる風邪が猛威を振るっているアマズトモエ連邦へ入り、ギルドが指定した村々に入り、治療を施して欲しい。」
そう言いながら、ゼンゾウさんが、折り畳み式の机の上に広げた地図を指でなぞる。
因みに地図は、スジミちゃんが持っていたクルクルと巻かれていた大きな筒状の紙だった。
『依頼を受けても、ナカナカトブ村との距離が、半径100キロ圏内の場所を通る。
せやから、立ち入りが制限されてはる理由を聞いても問題あらへんそうやったら依頼を受けても良え思うで。』
「立ち入りが制限されている理由を教えて下さい。」
嫁もレイヒちゃんの念話を聞いたのだろう、ゼンゾウさんに質問をしてくれる。
「早熟木の群生地なんだ。
早熟木は普通の木の10倍で育つ魔木で木材として重宝されているんだが…
樹液がブラッド ベアやキラー ヒヒ。昆虫系のモンスター等を引き寄せる。ってのと……雑食道造り飛蝗の繁殖地なんだ。
まぁ……この季節は、ブラッド ベアや、雑食道造り飛蝗を含めた昆虫系のモンスターは、冬眠やサナギで過ごしている筈だから、
注意すべきはキラー ヒヒぐらい。という事で、選抜された早熟木を伐採するチームのみが、春になるまでの間だけ立ち入りが許可されるエリアなんだよ。
君達には、夕方までに立ち入り制限林道に入る為の許可証を渡す。
また、君達がオワトブ村のギルドの出張所で行う予定だったギルドへの登録も、この村(セキブンリ村)の出張所で済ませて貰う。
だから、この依頼……引き受けて貰えないか?」
ゼンゾウさんが、そう言いながら、深々と頭を下げてきた。
◇◇◇
「わたしは、この依頼を受けても良いと思う。」
「ウチもや。」
嫁とレイヒちゃんが頷く。
「じゃ。決まりだな。
エンクルさんも問題無いですよね?」
「うん。」
僕はナシアタ君の質問に頷く。
「せやけど……ウチ達が抜けて大丈夫なんか?」
「今、レモカラ辺境伯爵が私兵を12名ほど応援に寄越してくれています。
ここだけの話、戦力として君達や、私とフヤの穴埋めが出来たとは思えないですけど……
彼等と、我が国(ネギハタ高原)とギルドのテチス山脈支店との国境線にある砦で合流すれば、
オワトブ村への荷を運ぶ依頼を帰り道も含めて筒がなく完遂される事は難しくない。とも思ってます。」
レイヒちゃんの質問にツネさんが苦笑いしながら返答を返す。
「今の時期、木こりや運び屋。医療従事者や料理人。それらを護衛する者達が集まった伐採チームが入っているとはいえ……
危険な場所に、道案内も付けずに、地図だけを渡さざるえない事をお詫びさせて貰うよ。」
センメさんが、そう言いながら、頭を下げてきた。
「まぁ……色々と大変そうですもんね……
この状況でモンスター氾濫なんか起こってしまったら……
マジで不味い事になりそうですよね……」
僕は、敢えて、キトナガエ帝国の西部でモンスター氾濫が起きた事を知らない体で返答を返す。
「残念ながら、ほんの少し前に、キトナガエ帝国の西部でモンスター氾濫は起きたらしい。
その為、ネギハタ高原国軍と冒険者。運び屋の混成部隊を援軍として派遣する調整に入っているらしい。
また、ミンボン山脈の樹海の再調査も必要となり、
今回、結成されたグンフ殿下の調査団が、再召集され、
ネギハタ高原国 第2近衛連隊の第20中隊の鎧を着込んだ悪霊や、少数のスケルトンやリッチなどのモンスターなどを討伐する為に結成された部隊と共に、ミンボン山脈の樹海に入る事となった。
そのせいで、君達だけでなく、ツネ殿とフヤさんも、
今日をもって、このチームを抜ける事となったよ。」
センメさんがタメ息をつきながら話す。
「お2人の補充は?」
「無い。
シュウゼ殿とフクコ殿に、ツネ殿とフヤさんの代わりを務めるように。っていう指示が出ている。
そうそう。
君達のカーゴトレーラーに入れていたシュウゼ殿とフクコ殿の荷物の一部を小瓶に封印して欲しいんだけど……
お願いする事は出来るかい?」
センメさんが申し訳なさそうな顔で話す。
「良えよ。
ウチが、シュウゼさんとフクコさんの荷物の一部を小瓶に封印したるわ。」
レイヒちゃんが笑顔で答える。
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