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ヤドカリ姫は異世界の扉をひっそりと開ける  作者: モパ
【第2章】モンスター氾濫と紛争
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出発前

「おっ。


これがゼンゾウさんが言わはってたリークやろな。


やっぱ、ウチ達はツイてはるみたいやね。」


時刻は10時30。


キマベクの村の出張所へ回し車の特許申請をしに行ってくれていた嫁達に状況説明を聞いた後、ノートパソコンを弄っていたレイヒちゃんが、ニヤニヤしながら顔を上げた。



因みに、ナシアタ君とムンナちゃんとシャーコはバンクベッドで就寝中で、

僕・嫁・レイヒちゃん・ワンゾウがダイネットで話をしている。



「なに?なに?

詳しく教えて。」


「良えよ。


キツカン男爵が、ギルドの通信機器を使うて、ネギハタ高原国 第2近衛連隊の第20中隊の隊長のチョカ・ズクダニが自分の領地を通って、秘密裏にミンボン山脈の樹海へ行った事を、

ネギハタ高原国の宰相が大臣を兼任してはるネギハタ高原国の内務局にリークしはったわ。


そんでもって、

彼等を通してしまった理由は、

ゼニシツ貿易商会とアンガイ商会と一緒に来はったズグニダから、

自分達の行軍を見て見ぬフリをしなければ、キツカン男爵への融資を止めはる。って脅されたからや。とも書いてはったわ。


それと……

この話はグンミ殿下にも了承して貰うてはるさかい、ネギハタ高原国政府に助けを求めても無駄や。って言われはった事で、正常な判断が出来ひんようになってもうたとも書いてはったわ。



なんで、グンミ殿下達が、こんな事をしはったんかは、実際のところは、分からへんけど……


ウチが、あの森(ミンボン山脈の樹海)で見かけはった時は、ネギハタ高原国 第2近衛連隊の第20中隊の連中は、ウミシシさん達を殺しはる気、満々やった。


でっ。もし、それがグンミ殿下からの殺害命令が発端やとしたら……

兄さんが見はったゼニシツの反応から察するに、グンミ殿下達の立場が、かなりマズイ事になりはるんやと思う。



でっ。ウチの思ってるようになってくれはったとしたら、

回し車の件で、これ以上、ゼニシツから横槍を入れられる事はあらへん。ちゅう事や。」


嫁の質問にレイヒちゃんがニヤニヤしながら答える。



「ケイゴロウさん達は、良い人そうだし、そうなってくれたら良いわね。」


「せやね。


ついでにウチ達の懐も温め続けてくれはったら最高やね。


今んとこ、姉さんの異能で衣食住が安定してるとはいえ……


姉さんの異能に頼りっぱなしの生活は、

何かの拍子で姉さんが異能を失いはる事になったら、たちまち生活が立ち行かなくる。ちゅう、リスクだらけの生活やからな。


姉さんだけやのうて、誰がポンコツになっても、なんとかなるような仕組みを、出来るだけ早う作っときたいもんな。」


「だね。」


レイヒちゃんの言葉に嫁が真剣な顔で頷く。



■■■



【コン・コン・コン】



キャンピングカーの扉をノックする音が聞こえてくる。



『フヤです。

握り飯と、従魔達の夕方の餌をお持ちしました。』


頭の中にフヤさんの声が響き渡る。



「はぁい。」


僕は、そう言いながら、キャンピングカーの扉をあける。



「どうぞ。

袋は、明日の朝にでも返して下さいませ。」


フヤさんが、笑顔で布の袋を渡してくれる。


「分かりました。

有り難うございます。」


「では。これで。」


フヤさんと、

彼女の後ろで折り畳み式の台車を押して来たらしいキュチョロウ君がペコリと頭を下げる。



「わたし達も少し寝ますかね。」


「だね。」


僕は嫁の言葉に頷く。



時刻は11時。


ワンゾウは運転席横の補助席に置かれたドライブボックスで、レイヒちゃんはバンクベッドで仮眠中だ。


嫁と僕も、ダイネットをベッドモードにして、何時でも寝れる準備をしていたが、

フヤさんが握り飯を配る。っと言っていたので寝ずに待っていたのだ。


これで、訪ねて来る予定の人も居ないし、2~3時間ぐらいになるだろうけど、仮眠が取れそうだな。



■■■



「さてと。


皆。好きな具を入れてね。


ムンナちゃんは、遠慮せず味見してね。」


時刻は15時。



嫁が異能で、各々の元の世界で暮らしていた家を再現した異空間ハウスの中から、フヤさんが配ってくれた塩むすびの中に入れたら美味しくなるような具材を持ち寄る事にした。



梅干し・塩昆布・明太子・かつお節&醤油・鮭フレーク・高菜・シーチキン & マヨネーズ・海苔などの、定番メニューの具材がダイネットの机の上に並んでいる。


塩むすびが1人、10個だったのはビックリしたが……

色々な具材を入れたら、明日の朝までには食べられそうだ。



走りながら食べられるように、

2個づつ、笹の葉に包まれた塩むすびは、具材を混ぜ込んだり、海苔を巻いた後、1個づつ、サランラップで包む事にした。



「フヤの絶妙な塩加減の握り飯だけでも旨いものを、更に、旨くするとは恐れ入ったわ。」


ムンナちゃんが、具材を味見しながら、目を丸くしている。



「旨いのう。

飯の心配が無いだけでも有難いのに……幸せな生活じゃ。」


「だにゃ。

モンスターや獣達が、大人しく人間に使役されておる理由が痛い程、良く分かったにゃ。」


ワンゾウとシャーコが、フヤさんが配ってくれた茹でた鳥肉を嬉しそうな顔で食べている。



■■■



【コン・コン・コン】



キャンピングカーの扉をノックする音が聞こえてくる。



「ケイゴロウだ!

挨拶に来た!」


時刻は16時。


そろそろ出発の時間だな。なんて思っていたところに、ケイゴロウさんがやって来た。



「わざわざ、有り難うな。」


レイヒちゃんが、そう言いながら、キャンピングカーの扉を開ける。



「当然の事だ。


嫁も君達に挨拶が出来ない事を残念がっていた。


もし、我が国を、再び、訪れる事があれば、是非、寄って欲しい。


これは……親交の証として贈呈させて頂く。」


「懐中時計か。

有り難うな。」


ケイゴロウさんから、懐中時計を貰ったらしく、レイヒちゃんがお礼を言っている。



「訪ねて来て貰った時に門番が粗相をしたら困るからな。


その懐中時計には、我が家の家紋が彫ってある。


訪ねて来られた際は、その懐中時計を門番に見せて欲しい。」


「了解や。」


レイヒちゃんが元気な声で返答を返す。



「では、これにて失礼する。

また、会おう。」


「せやね。

ほな、また。」


レイヒちゃんは短い返答を返した後、キャンピングカーの扉を閉めた。



「律儀な人だったわね。

この国の人は、良い人と悪い人の落差が激しすぎるわ。」


「せやな。」


嫁の言葉にレイヒちゃんが笑いながら頷いている。



■■■



『出るわよ。』


イココ団の狼系の獣人で【無能者】のナツムちゃんの声が頭の中に響き渡ると、キャンピングカーがゆっくりと動き始める。



僕達の隊列の位置は、殿(しんがり)ではなく、元の真ん中の位置に戻った。



『今日はトラブルが無いと願いたいけど……

何が起こるか分からない。

油断しないでね。』


『了解。』×6


ナツムちゃんからの念話で送られた指示に、

乗り物を運転するドライバー達とレイヒちゃんが念話で短い返答を返す。



「【空の目】の映像を見る限りでは、瘴気の濃度が少しづつ下がってきておる。


モンスター氾濫が起こらない可能性が出て来おったし、

悪霊達も昨晩と違うて、波長が合わない者にまで目視させたり、干渉したりする程の力は無いじゃろう。」


ムンナちゃんが淡々とした口調で話す。



「だと良いわね。」


『せやね。

平和が一番やもんな。』


嫁の言葉にレイヒちゃんが頷いている声が携帯電話から聞こえてくる。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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