【サイドストーリー】最悪の状況の一歩前(前編)
「マキジコ家のご当主であられるマキジコ・タツニゴ様からタレコミがあったという、
彼のご息女マキジコ・タゼヨ様や、デント・ウチユが証言しているという内容と、
先程、ゲニラ・イレナが証言してくれた内容とが、完全に一致しましたわよ。」
時刻は8時。
ゲニラ・イレナの取り調べを行ってくれた、
【王家の暗器】の長官。フバタ・イラが淡々とした口調で報告をくれる。
「そうですか……」
俺は苦虫を噛み潰した顔を意識しながら返答を返す。
今回の件の本当の黒幕。
【拝金騎士団】のトガリコ殿の話は、今のところ出て来てはいない。
チョカ・ルビョが、彼女の立てた策を自分の考えた策として皆を動していたのだろうな。
【コン・コン・コン】
「どうぞ。」
【ガチャ】
俺が返事をすると、俺専用の執務室の扉が開く。
「宰相。
チョカ家の当主のビョファ様へ、グンヨ殿下の言伝てを伝えてまいりました。」
俺専用の執務室の扉を閉めると、
【王家の暗器】のミミメが不機嫌そうな顔をしながら報告をくれた。
「ご本人に、直接、伝えたのですか?」
「いえ。
時間が時間ですので……
文をしたためた物を門番にお渡ししました。」
「でしたら……
チョカ・ビョフョ様の家に査察をする者を送り込むのではなく、
大至急、王宮に来るように召喚状を出す事で陛下と調整された方が宜しいかと思います。」
リクルル様が、ブレーンとして貸し出してくれている【拝金騎士団】のソウソパ殿が策を授けてくれる。
◇◇◇
「何故に、そんな判断をされたのだい?」
「グンヨ殿下は、今回の件が決め手となり、
彼女の最大の後ろ楯であるマキジコ家が、彼女を見限って、ナヤクラース連邦に亡命なされようとされているという事や、
マキジコ家のご当主のマキジコ・タツニゴ様が、ご息女のマキジコ・タゼヨ様やデント・ウチユの証言を、宰相にタレコミされておられるという事や、
ゲニラ・イレナ殿が【王家の暗器】の取り調べを受けている事や、
ゲニラ・イレナ殿が、その取り調べに対して、とても協力的な事をご存知ではない筈のですよね?
仮にご存知だったとしても……
ミミメ殿やカベショウ殿。彼女の侍女やメイドを外に走らせた形跡は無いため、その情報をグンヨ殿下が自ら、チョカ家の当主のビョファ様へ、お伝えはしていない筈だという事です。
この状況で、王宮に呼び出したチョカ家の当主のビョファ様に、
グンフ様の調査団から外された事に堪えた第2近衛連隊の第20中隊の連中が、グンヨ殿下にお願いをして、自分達を鍛え直す為にクビタゴ盆地へ演習をしに行かれた事になっているのにも関わらず、
ネギハタ高原国 第2近衛連隊の第20中隊の鎧を着込んだ悪霊や、
少数だがスケルトンやリッチなどのモンスターなどが、瘴気の靄もやの向こう側に居るという報告が多数、入って来ている事について、何か心当たりはないか?という質問をすれば、
チョカ・ズクダニ様のスタンド プレーだという事にするという設定に、後々、矛盾が出ないように『心当たりがない。』と、お答えする筈です。
そのお言葉さえ頂ければ、王宮に呼び出したチョカ家の当主のビョファ様を、お返して良いと思います。
何故ならば、これから、フバタ・イラ殿に話を聞いて頂く予定のチョカ・ルビョ様と、その取り巻きの方々を含めて、誰が嘘をつかれておられるのかが、分からないからです。
しかも、同じ情報を聞いても、捉え方は人各々(ひとそれぞれ)です。
同じ事柄について色んな方に、ご質問をしたところ、全然、違う事柄について話されておられるように聞こえたが、
ギルドから【審議判定の魔道具】を借り受けて、再度、調べても誰も嘘をついておられなかった。なんて事も、時々ですが、起こるらしいですからね。」
フバタ・イラの質問に、ソウソパ殿が笑いを堪えながら答える。
「でっ。
結局、何が言いたいんだい?」
「チョカ家の当主のビョファ様。もしくは、そのご息女のチョカ・ルビョ様や、その取り巻きの方々の中で、後日、聞き取り調査の結果に齟齬がある。という理由で、再度呼び出しをかけた際に、嘘をついていた者の中から、誰を主犯にするかを決めれば良い。って話です。」
フバタ・イラの質問に、ソウソパ殿が笑いを堪えながら答える。
◇◇◇
「そうそう。
宰相にマキジコ・タツニゴ様からメールが届いてましたよ。
彼は、家族と、主だった従者と、従者のご家族様を連れてナヤクラース連邦に亡命を、ご希望なされておられるようなのです。
そして、ミンボン連邦政府と、
ミンボン山脈の樹海で最凶と呼ばれているチョニチ傭兵団の捕縛を手伝う事で、ナヤクラース連邦への亡命の手続きを行ういう密約も結んだらしいのです。
でっ。その約定により、チョニチ傭兵団の捕縛を手伝った際に、メスム・エハ殿を見つけて、何故、チョニチ傭兵団と行動を共にしているか。という聞き取りをした際に、
第2近衛連隊の第20中隊が、グンフ殿下の調査団よりも優れた調査をミンボン山脈の樹海で行って鼻を明かす。
そして…… それが不可能な場合、グンフ殿下の調査団を殲滅して調査結果を奪い、彼等の功績にする為に、秘密裏にミンボン山脈の樹海に向かったらしいのですが、その……
第2近衛連隊の第20中隊は、悪霊の襲撃にあって壊滅し、
メスム・エハ殿自身は、なんとか逃げ延びたらしいのですが、チョニチ傭兵団に捕まり、彼等の奴隷にされたらしいのです。
そして、マキジコ・タツニゴ様から、
自分達に手を出さない事を条件に、彼女の身柄を引き渡すという交渉を持ちかけられてます。
私は、宰相のご判断を仰がずに独断でマキジコ・タツニゴ様の提案を受け入れ、
メスム・エハ殿の身柄をマキジコ・タツニゴ様から貰い受ける事で話を進めさせて頂きました。
ですから、宰相には、
マキジコ・タツニゴ様との密約を、陛下に追認して頂きたいとお願いしたいです。」
「何を勝手に。
お前、自分が……」
「分かった。」
フバタ・イラの言葉を遮ると、ソウソパ殿に返答を返す。
フバタ・イラには悪いが、俺は、ソウソパ殿に逆らえない。
「有り難うございます。
後ですね。
ギルドからの報告になるのですが、
キツカン男爵が、ギルドの通信機器を使って、第2近衛連隊の第20中隊の隊長のチョカ・ズクダニが自分の領地を通り、秘密裏にミンボン山脈の樹海へ行った事を内務局にリークしたらしいですよ。
私も、まだ、内容を確かめてませんが……
内務局のボスは宰相ですよね?
今から、リークされた情報を確認しませんか?」
ソウソパ殿がニヤリと笑いながら、俺達を見る。
「そうだな。
フバタ・イラ。君も見るだろ?」
「えぇ。
出来れば、マキジコ・タツニゴ様からのメールも確認させて頂きたいですね。」
フバタ・イラが、俺をジッと見つめながら返答を返絵してきた。
■■■
【ブッ・ブッ・ブッ】
震えるような音がソウソパ殿のポケットから聞こえてくる。
【カパ】
ソウソパ殿が異世界の携帯電話と呼ばれている小型の通信機器を模した魔道具を開く。
「へ~。
リンゴトマドさんは、チョニチ傭兵団を捕縛するのではなく殲滅を選んだみたいですね。
まぁ……良い判断です。
捕まえるのは殺すよりも遥かにリスクが高いですからね。
金を生む犯罪者には、お優しい事が売りであるミンボン連邦国民に助力をさせるのは問題がありますし、
ギルド本部の連中を大量に動かせば、ニンムシュだけでなく、他の裏切り者達や、大罪人達まで刺激してしまいかねませんからね。」
ソウソパ殿は、そう言いながら、笑顔で俺を見てくる。
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