キマベクの村での特許申請(後編)
「なぁ……
取り合えず、ナシアタは今晩も運転があるさかい、キャンピングカーに戻って寝とき。
でっ。ホンイちゃん達も今晩も運転すんやろ?
サッサと特許申請を終わらせよや。
兄さん。仕様書的なんか、設計図的なん出せはる?」
「うん。出せるよ。
『解放』」
僕は【異空間加工倉庫】内で作成した回し車の設計図と仕様書を紙に起こした物を具現化して出した。
「ケイゴロウさんの家臣の方の中に【戦闘工兵】のジョブ補正を受けてる方が居るね。
取り合えず、トメイ家との共同開発。って事で、その人をトメイ家側の責任者として、回し車の特許を申請して貰えない?
取り分は……半々で良いと思う。」
「別に良えけど、
お人好しの姉さんと違うて、ケイゴロウさん達が貧乏そうで可哀想。なんて理由やあらへんやろ?」
レイヒちゃんが興味津々な顔で質問をしてくる。
「うん。
理由は2つ。
元々、回し車はワンゾウのストレス発散と便意を催させる為に作った、一点物。
だから、量産化する事なんて考えて作っていない。
なので、量産化するに当たって、色々と手直しが必要になる可能性がある。
折角、ケイゴロウさん達が回し車を作って、売り出してくれる。って言ってるんだ。
だから、現場の声をスピーディーに反映させる為には、共同開発者となり、僕達の許可を得ずに改良する事が出来る立場に居て貰った方が、結果的に僕達も儲かる。
これが、1つ目の理由。
でっ。2つ目の理由が、ゼニシツのような奴からの横槍の防止。
ぶっちゃけ、特許を申請してもお金は入らない。
作ったり、販売してくれる人が居て、初めて特許使用料が入る。
だから、回し車を作って、売り出してくれるケイゴロウさん達のバックに、僕達。というよりも……
ウミシシさんやグンフさんの影をチラつかせる事で、
ケイゴロウさん達が、回し車を作りを邪魔する者が出て来にくい環境を整えてあげた方が、結果的に僕達も儲かる。
でっ。取り分を折半にしたのは、支援ではなく、投資だね。」
「成るほど。面白い考え方ですね。
実は、グンフ殿下が回し車に強く興味を持たれておりました。
輜重部隊に居る使役モンスターなどの運動不足を解消する為に、行軍に持って行けるような組み立て式の回し車を作りたいと考えられておられるようです。
ですが、その……
東の砦に着いた際に、ギルドの職員に調べて貰ったところ、回し車の特許申請者が見つからず、とてもに落胆されておりました。
そして、折を見て皆様に誰の許可を得れば、組み立て式の回し車を作る許可が得られるかを知っているかをり聞いて欲しい。という、ご指示を受けておりました。
でっ。もし、可能であればなのですが、その……
ネギハタ高原国 開発局も共同開発者に名を連ねさせて貰えませんでしょうか?
勿論、特許使用料の一部を頂きたいなどという野暮な事を言いません。
それどころか、寧ろ、特許使用料は払わせて頂きます。
勿論、この事について、我が主であるグンフ殿下も了承して頂ける筈です。
ですから、どうか宜しくお願いします。」
今度はツネさんが頭を下げて来た。
◇◇◇
「悪いが、特許使用料は、僕達とケイゴロウさん達とネギハタ高原国 開発局が1/3づつ受け取る内容でなければ、ネギハタ高原国 開発局が共同開発者として名を連ねる事は出来ない筈よ。
共同開発者が特許使用料の受け取りを拒否する事例なんて作るべきじゃないからね。」
センメさんが苦笑いしながら会話に加わってくる。
「困りましたね……
それだと……グンフ殿下がお金欲しさに民に寄生する強欲の者だ。と思われかねないですよね……」
ツネさんが頭を抱えながら呻く。
「失礼ですが、ネギハタ高原国は孤児や貧困層への支援は、どのように行われてますか?」
「孤児やお年寄りに関しては、一般的な国々と同じで、それ以外の年齢層の方への対応は手厚いと聞いております。」
フヤさんが困惑した顔をしながらも、僕の質問に答えてくれる。
「認識のズレが出ないように具体的に教えてくれませんか?」
「エンクル殿の質問の意図は解らぬが……
孤児や年寄りはギルドが運営する保護院で保護し、
それ以外の年齢層の者は、ギルドの訓練所が引き取り仕事をする為のノウハウを仕込む事になっている。
因みに保護院の運営費は王族や貴族。豪商等の寄付金で賄われ、
ギルドは訓練所の運営をギルドのネギハタ高原国支店が自腹で行っている。」
ゼンゾウさんが興味津々な顔で僕の質問に答えてくれる。
「ならば、ネギハタ高原国 開発局は、自分達の特許使用料の取り分を全額、孤児や貧困層への支援をする為の費用としてギルドに寄付する。と宣言されるのはいかがでしょうか?
そして、ネギハタ高原国 開発局が、
僕達とケイゴロウさん達が共同で開発を進めていた回し車の特許申請に共同開発者として名乗りを上げたのは、
ミンボン山脈の樹海のゴタゴタから民を守る為に、
輜重部隊に居る使役モンスターなどの運動不足を解消する為に、行軍に持って行けるような組み立て式の回し車を迅速に作りたいからだ。とも宣言する。
後、その考えに賛同した貧乏人の僕達やケイゴロウさん達に対して、
本来、受け取る筈だった3%の特許使用料の内の1%を、快くネギハタ高原国 開発局に譲ってくれた事に感謝している。という声明も同時に出す。
そうしてくれれば、ネギハタ高原国 開発局が国民から非難されるだけでなく、
僕達とケイゴロウさん達が、2%の特許使用料を受け取っても悪く言われる事もないと思う。」
「畏まりました。
エンクルさんの話してくれた内容で話を進めて頂けるようグンフ殿下にメールをしておきます。」
ツネさんが笑顔で頷いてくれる。
「ほな。特許申請してくるわ。
ホンイちゃん。ケイゴロウさん。ツネさん。宜しゅう頼むわ。」
「了解。」・「おう。」・「はい。」
ホンイちゃん。ケイゴロウさん。ツネさん。レイヒちゃんの言葉にが頷く。
「わたしも着いてくよ。」
「儂も着いてくぞ。」
「アタシも着いていく。」
「頼んます。」
嫁とワンゾウとセンメさんの言葉にレイヒちゃんが笑顔で返答を返す。
■■■
「ご協力、感謝します。
ややこしい事をして申し訳ございませんでした。」
脳を再び活性化させて気絶していた状態から、元の状態に戻した【ギルドの執行人】の1人が、そう言いながら頭を下げてくる。
因みに、もう1人の【ギルドの執行人】は、
ゼンゾウさんや僕から軽く状況を聞いたと同時に、
ゼニシツ達を王都にあるというギルドのネギハタ高原国支店へ移送する為の人員の手配などを行う為に、村の中にあるギルドの出張所に行った。
「良い心掛けだな。」
【魔力封じの手錠】を掛けられて、大人しくしているゼニシツ達にゼンゾウさんが話し掛ける。
「これ以上の失態を犯せば、チョカ家も庇いきれなくなるでしょうからな。
このままで済むなんて……思わない方が良いですよ。」
ゼニシツがゼンゾウさんを睨み付ける。
「そりゃあ楽しみだな。
ところで……
ネギハタ高原国 第2近衛連隊の第20中隊の隊長。っていえば、確か……チョカ家の跡取り息子だったよな?
昨晩、ネギハタ高原国 第2近衛連隊の第20中隊の鎧を着込んだ悪霊や、少数のスケルトンやリッチなどのモンスターを目撃したのだが、何か知ってるかい?
先刻、この村のギルドの出張所に行った時に、
ツネ殿以外にも、お前さん達が拠点にしている、キツカン男爵領を含めた、複数の砦や村々から、陛下や宰相に、同じような目撃情報が上がっているんだが……
キツカン男爵は、目撃情報ではなく、
その原因となったと思われる過去の出来事についてのタレコミをしたんだよ。
でっ。そのタレコミには、お前さん達の名もあったんで、チョイと気になって聞いてみたんだよね。」
「………」×9
ゼンゾウさんの話を聞いたゼニシツ達が真っ青な顔をしながら、ガタガタと震え始めた。
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