キマベクの村での特許申請(中編)
「はぁ……
ケイゴロウ殿もオモメ嬢も……
お人好しを通り超して、馬鹿ですかな?間抜けですかな?
この回し車。でしたっけ。
確かに売れるでしょう。
ですが……馬鹿正直に、ギルドにも登録していない若僧の名義で、明らかに駆け出しの底辺の商人に代理で特許申請をさせるのを見ているなんて、あり得ないでしょ。
おい。ガキども。
特別に白金貨5枚(白金貨1枚は100万円の価値)やる。
だから、回し車の特許権を儂に寄こせ。」
「ゼニシツ殿。
何、滅茶苦茶な事を言ってるんだ。
前言を撤回しろ。」
いきなり話しかけてきた下卑た目をした男に向かって、ケイゴロウさんが睨みつける。
「そういうのは、貸している金を払ってから言って欲しいものですな。
我々、ゼニシツ貿易商会のバックには、チョカ家。ひいてはグンヨ殿下が居らっしゃる事を忘れてはおりませんよな?」
いきなり話しかけてきた下卑た目をした男が、ケイゴロウさんを睨み返す。
「ククク。
やっぱり、俺の嫁は天才だ。
もし、ゼニシツ殿が、いらぬ横槍を入れて来たら……
嫁入り道具を売ってでも、金を作るから屈するな。と嫁から言われているんだ。
これは、脅しじゃねぇ。
家の嫁さんは、俺以上に肝が据わってやがるからな。
マジでやるぞ。」
「だからなんです?
この状況です。見回り中の領主様が襲われ、重症とかになっても不思議ではありませんよね?
そうなれば……貴方のオモメ嬢は正気でいられますかね?
きっと、貴方を見殺しには出来ないでしょうね。
なので、オモメ嬢が、嫁入り道具を売ったぐらいでは、どうにもならないぐらいズタボロにして差し上げますよ。」
「ブヒャヒャヒャヒャ。
我が嫁を舐めるな。
あいつは身も心もトメイ家の者だ。
血族の俺以上にトメイ家の者だ。
トメイ家の名誉の為に死ね。と普通に言うさ。
まぁ……それと……
俺が、お前達にボコられるかは別問題だけどな。
だよな?」
「おう。」×6
ケイゴロウさんと共に、彼の後ろに控えていた6人の男女が抜刀する。
それを見た、ゼニシツの部下と思われる8人の男女も抜刀する。
「おっ。ケンカかにゃ?
誰をぶっ飛ばしたら良いかにゃ?」
シャーコの弾んだ声が後ろから聞こえてくる。
◇◇◇
「あんた(シャーコ)は、キャンピングカーでニャルソックやろが。」
レイヒちゃんが素早いツッコミをシャーコに入れる。
「アタイだけ除け者は酷いにゃ。
キャンピングカーの周りに、ちゃんとカチッチ・カチに結界を張ってきたにゃ。」
「何処がやねん。
『結界』。
こういうんをカチッチ・カチの結界や。ちゅうねんで。
自分雑いねん。
自分の結界は、スッカ・スカのザルや。ちゅうねん。」
シャーコの弁明を聞いたレイヒちゃんが、ドヤ顔で結界を張り直す。
「はぁ?
『凍てつけ。』・『土よ穿て。』」
【パリン】
シャーコがレイヒちゃんの張った結界を氷魔法で凍らせた後、土魔法で作った破壊槌のような物をぶち当てて、レイヒちゃんの張った結界を叩き壊した。
「『結界。』
シャーコは雑。レイヒはマナを込める量が少なすぎじゃ。
どちらもダメダメじゃわい。」
「にゃぬお!
こんにゃ雑魚だらけの場所で、そんにゃ緻密にゃ結界。
マニャの無駄遣いにゃ。」
「緻密なんは良えけど、
そんな強度の結界。オーバースペックも良えとこやで。
シャーコの言わはるようにマナの無駄遣いや。
そこだけは、シャーコに一票やわ。」
ドヤ顔で張り直したワンゾウの結界に、
シャーコとレイヒちゃんがダメ出しをしている。
「そうでもないぞ。
結界に込めたマナの量や質は強さを示す指標の1つじゃ。
その証拠に……
やたらと威勢の良かったゼニシツとやらの子飼いの者達が、
2名を除いて、腰を抜かして糞尿を垂れ流しておるぞ。」
ワンゾウが笑いながらゼニシツの部下と思われる8人の男女を見る。
「いやいやいや。
流石に、レイヒちゃんとシャーコとワンゾウの可愛らしいじゃれ合いを見てビビるなんて……って……
オ~ホッホッホ。
ワンゾウさん。やり過ぎでございますですわよ。」
嫁が、何故か、お嬢様のような口調でワンゾウを叱る。
って……ヤバ……
「『非活性』×2」
僕は異能を使った。
◇◇◇
【ドサッ】・【サッ】
【ドサッ】・【サッ】
膝から崩れ落ちた、小柄な女の人と、細身の中背の男の人の頭をナシアタ君が左右の手で鷲掴みにして倒れるのを防いでくれた。
「パパ。
何で、その2人を殺したの?」
「殺してないよ。
気絶させただけ。」
「何で、そんな事をしたの?」
「ゼニシツだっけ?
その油ギッシュなオッサンの横に居る漏らしてない男女を殺そうとしてからだよ。
俺達と揉めてる最中に、俺達と揉めてる相手が消されたら……面倒臭い事になるかも?って思った。
だから、取り敢えず、気絶させたんだよ。」
僕は、真剣な顔で質問をしてくる嫁の質問に苦笑いしながら答える。
「でっ。ナシアタは何をしてんねん。」
「何者かは知らんが、狙ってたのは俺達の敵。
頭でも打って死んだら寝覚めが悪いだろ。」
「さよか。
せやかて、よう。咄嗟に頭を掴めはったね。」
「多分、俺とエンクルさんは、ほぼ、同じタイミングで、こいつ達に気がついてた。
殺気を飛ばして動きを止めようとした矢先に、エンクルさんが無効化したのに気がついたんで、サポートに入った。って訳だ。」
「成る程な。」
ナシアタ君の言葉にレイヒちゃんが頷いている。
◇◇◇
「そいつ達を殺さないでくれて有り難う。」
ゼンゾウさんが、そう言いながら近づいてきた。
「たく……
事態が落ち着くまで、ややこしい動きはするな。って言ったんだがなぁ……
【ギルドの執行人】も質が落ちたもんだよ。」
センメさんが、タメ息をつきながら、
ナシアタ君が左右の手で鷲掴みにしている、小柄な女の人と細身の中背の男の人を見ている。
「ゼニシツは、色々と悪評があってね。
ギルドの秩序を守る組織である【ギルドの執行人】が調査していたんだよ。
だけど……【ギルドの執行人】を赤子扱いするとはねぇ……
てか……なんで、キテ・ウミシシ様から頂いたネギハタ高原国の王族のキテ家が認めた者に送る盾を見せなかったんだい?
そしたら、こいつ達だって、直ぐに引いた筈だよ。」
センメさんは、タメ息をつきながら、今度は、僕達にダメ出しをする。
「ゼニシツ。
貴方が馬鹿にした駆け出しの商人は、銀狼貿易商会の商会長のジュウヒ殿の娘さんですよ。
そんでもって、この子達は、サンスジ商会の応援者としてギルドのテチス山脈支店のオワトブ村への支援物資を運んでる最中です。
争いになった内容も内容ですしねぇ……
果たして、チョカ家は、庇ってくれますかね。」
ツネさんが氷のような冷たい目をしながら、僕達の傍にやって来た。
「それよりも……
ケイゴロウ。何故、親友である私を頼らないのですかね?
少しは力になれる事もあるかと思うのですがね。」
「そらよう。
お前さんの嫁さん。平民だ。つう話じゃん。
いくら、お前さんの嫁さんが、クノヤ家に嫁いだとはいえ……貴族同士のイザコザに巻き込む訳にはいかないだろ。」
「大丈夫みたいですよ。
私もツネ様と婚約する時に知ったのですが、その……私の父も母も弟も自分の身を守るぐらいは出来るみたいですので。
てか……ポンコツは私だけです。
まぁ……私にはツネ様やグンミ殿下が居ますので何とかなるかと思います。」
フヤさんがモジモジしながら、ケイゴロウさんとツネさんの会話に加わる。
「身を守るぐらいねぇ……
娘や娘婿が絡んだイザコザがある事を知って、
マサシリン傭兵団の伝説的な料理番のカツゲン殿と、
【マナ無し軍師】の2つ名で知られているタカコト殿が、
それだけで収まるとは思えんがな。」
「この娘に手を出せば、
我々の前でも公然と妹分だと仰られておられるグンミ殿下の逆鱗に触れるのは目に見えておるな。
てか……ゼニシツ。
今回は、色んな意味で手を出す相手を間違えたようだな。」
ゼンゾウさんとセンメさんが、ケラケラと笑いながら、ゼニシツを煽る。
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