出会い(前編)
『糞寒いな。』
キャンピングカーのダイネットに置いてある、この世界でも通話が可能なように設定をしてくれたスピーカー モードにしてある携帯電話から、
キャンピングカーの助手席に座っているレイヒちゃんの声が聞こえてくる。
僕達は、簡単な打ち合わせをした後、
嫁が異能【異空間ハウス】で再現したナシアタ君のご実家の庭に入り、
庭にあったカーゴトレーラーからバイクを降ろし、
同じく、庭にあったキャンピングカーのトイレの扉に嫁が【異空間ハウス】で再現した、僕達の家や、レイヒちゃんのご実家の部屋や、ナシアタ君の寮の部屋を繋いだ家の扉を展開し、
再び、森の中に出て、キャンピングカーのトイレに展開した扉では無いほうの【異空間ハウス】を閉じて、何時でも旅に出れる準備を整えた。
因みに、ダイネットの進行方向側の壁の真ん中にある、運転席からリヤのキャビンへ移動できるウォークスルーを開きぱなしにしておけば、
携帯電話を使用しなくても、大声で話せば、運転席や助手席に居るナシアタ君やレイヒちゃんと会話が出来ない事もないようなのだが……
いちいち、大声でやり取りをするのは面倒なので、
運転席と助手席に居る2人との会話は携帯電話を使った、やり取りにする事にしたのだ。
『直にエアコンが効く筈だ。
それよりも……キャンピングカーの前で手話みたいな事をしている幼女は……やっぱ、幽霊か?』
不穏な事を言うナシアタ君の声が携帯電話から聞こえてくる。
『鑑定魔法で鑑定したら、
『神仏の代理人達と【虹を産んだ者達】に封印された管理者のアマトティの欠片から生まれた、超越点のアサグの力を宿した妖精のムンナ。』
って出はったわ。
でっ。あの動きは……
ウチ達と話したいみたいやね。
取り敢えず、悪意や敵意は無いみたいやし、周りに誰も居はらへん。
何で、こんな所に居はるのかは、よ~分からへんけど……
取り敢えず、こんな場所に子供を置き去りにすんのもあれやし……
キャンピングカーに入れたって、話だけでも聞いてみいへん?』
「それで良いと思う。」
レイヒちゃんの言葉に嫁が頷く。
『ほな。
こっちに来はるように手話で返答を返すわ。』
レイヒちゃんが、嫁に返答を返す。
■■■
「つまり、この世界が閉じた世界になりはった原因は、
この世界を管理してはったアマトティ様ちゅう人と、プスアー様ちゅう人を、
神仏の代理人と呼ばれてはる人達と【虹を産んだ者達】という集団が30年前に封印しはったからで、
ウチ達が違法な方法で召喚されたんは、
今、そいつ達が権力争いをしてはって、そいつ達が使える手駒を増やしはる為に行いはってる。ちゅうんやね。」
「その通りじゃ。」
「でっ。自分は封印されてはる管理者のアマトティ様ちゅう人の魂の欠片の一部やったんやけど……
力が衰えて消えそうになりはったから、妖魔虫キノコちゅうの食べて、衰えはった力を取り戻しはろうとしはったところ、
【世界を繋ぐ者】と【虚体化】という異能を持ちはる超越点のアサグの力を宿した妖精のムンナ。ちゅう、アマトティ様ちゅう人とは別の個体になりはったちゅう事やね。」
「その通りじゃ。」
「でっ。
アマトティ様ちゅう人と、プスアー様ちゅう人を封印しはったんは、この世界を閉じた世界にしはる為の人柱にしはる為で、
アマトティ様ちゅう人と、プスアー様ちゅう人の封印を解いたら、この世界を再び開いた世界になりはるちゅう訳やね。
でっ。この世界を再び開いた世界になりはったら、
ムンナちゃんか、アマトティ様ちゅう人かは別として……
ウチ達が望めば元の世界に返してくれはる。ちゅう事でええんやね。」
キャンピングカーのダイネットで聞いた幼女の話をレイヒちゃんは要約した上で、自分の認識とズレていないかの確認を取ってくれる。
「その通りじゃ。」
そして、幼女は、レイヒちゃんの言葉に真剣な顔で頷き続けている。
◇◇◇
「僕と嫁に異能を与えてくれた謎の声は、
『アサグや妖人に進化された方々や、 瑞獣・禍獣・幻獣・妖魔に進化した一部のモンスターから進化した特別な獣に限りましては、ムシュ イム アン キ に戻られましても、不老有死のルールが継続されるだけでなく、得られた異能を使用する能力も継続されます。』
と言ってた。
そんでもって、ムシュ イム アン キの一般の人達はアサグや妖人などの存在を知らない。とも言ってたし、
事実、今回の事がなければ、僕は、アサグや妖人などの存在を知らないまま人生を終えていたと思う。
でっ。もし……
僕達が、元の世界に戻れたとして、この世界に招喚される前のような一般人としての生活には戻れない気がするんだけど……
元の世界に戻れた場合、どんな感じの生活が待ってるの?」
「主達の世界の管理者や神仏の代理人は、表に出ないだけで、主達の世界を裏から管理はしておる。
でっ。そちら側を目指すか、
其奴達の邪魔をしない代わりに衣食住を保証して貰う野良のアサグや妖人になるか、
それとも……
生活の拠点を、この世界に移した上で、主達の生まれた世界に、度々、帰省する。
などの選択の中から、どれを選ぶかの選択を主達は迫られる事になると思うのじゃが……確証は持てぬ。
じゃが、主達が、妾とともに、この世界を開いた場合、
主達の元居た世界の管理者や神仏の代理人。野良アサグや妖人を含めた、
この世界から見たら他世界の支配者達からのリスペクトも受けられるのは間違いない筈じゃ。
じゃから、この世界だけでなく、他世界の管理者達も主達の立場を確定する上で、主達の意向を最大限、考慮をする筈じゃし、
少なくも、この世界では主達は恩人。もしくは英雄として扱われる事になる筈じゃ。」
幼女は、僕の質問にゆっくりとした口調で答えてくれる。
「野良のアサグや妖人ね……
この世界にも、野良のアサグや妖人は居るの?」
「30年前に神仏の代理人とともに、アマトティとプスアーを封印した【虹を産んだ者達】の幹部達は、
60年前にクルヌギアと呼ばれておる、この世界とも、主達の世界とも違う異世界から悪意を持って転移してきた野良アサグじゃ。
他にも、600年前に主達の世界から迷い込み、
ギルドと呼ばれる、ある程度とはいえ国から独立した権限をもっている世界規模の経済組合を立ち上げたリンゴトマドは、異能【星の記憶へのアクセス】を持つ、特異点の野良アサグ。
そして、リンゴトマドの直属の部隊である【オピオタウロスの荷車】のメンバー3名の内、2名が、この世界生まれの野良アサグで、1名が野良の妖人じゃ。
それと……この世界で最大の傭兵団と呼ばれておる【貨幣の戦士】のリーダーと4名の幹部は、20年前に主達の世界から違法な方法で召喚された野良アサグじゃと言われておる。
他にも無名の一般人として市井に紛れ込んでおる者が居るやも知れぬが……
妾が知っておる者や、噂を聞いたことがある者は、これぐらいじゃな。」
幼女は、僕の質問にゆっくりとした口調で答えてくれる。
「意外と少ないんだね。」
「この世界では、アサグや妖人は、基本、管理者や神仏の代理人や彼等の補佐を目指すからのう……
妾が知る限りでは神仏の代理人達は、
各々、数名のアサグや妖人を部下にしておったと記憶しておる。」
幼女は、僕の質問にゆっくりとした口調で答えてくれる。
◇◇◇
「ウチとしては、どんな立場で。ってのは、おいおい考えるとして……
とりあえず、この世界を開いた世界にして、早よ元の世界に戻りたい。って考えてるんやけど……
皆は、どないしたいんや?」
「わたしもレイヒちゃんと同じ気持ちね。
パパは、わたしやレイヒちゃんやムンナちゃんと一緒に、この世界を開く為に頑張って貰う事は決定事項だけど……ナシアタ君は、どうする?」
「俺も姉さん達と一緒に行動をさせて貰います。」
嫁の質問にナシアタ君が真剣な顔で答える。
「妾の申し出を受け入れてくれた事、感謝するぞ。」
ムンナちゃんが、そう言いながら、深々と頭を下げてきた。
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