報告 / 避難指示(前編)
「ツネさん。
この仕事が終わったらフヤに……とか言わはらへんかったんは正確やったね。
もし、そんな事を言ってはったら、
確実に死亡フラグが立ってはったとこやで。」
ツネさんとフヤさんの話を聞いたレイヒちゃんが、ホッとした顔で話す。
ツネさんは、昨日、砦の外に着いた時にフヤさんにプロポーズをしたらしい。
フヤさん自身は知らなかったらしいが、
既に、フヤさんのご両親にも話がいっていたらしく、
フヤさんが嫌でなければ婚姻が認められる事になっていたらしい。
「でっ。どんな気分や?」
「ツネ様からのプロポーズへの驚きや嬉しさよりも、その……
父と母が、マサシリン傭兵団という有名な傭兵団の元幹部で、
昨年から騎士課の幕僚クラスに通ってる弟は、既に、この事を知っていた。って事や、
幼い頃にグンミ殿下とお会いしていた。って事の方が、
遙かに衝撃を受けましたね。」
ニヤニヤとしながら質問をするレイヒちゃんにフヤさんが困惑した顔で答える。
「ふむふむ。
ツネさんの気持ちには、既に気がついてはった。ちゅう訳やね。」
「そこは、全く、気がついてませんでした。
失礼な話ではありますが、その……
今回、グンフ殿下の調査団に加えて頂き、
ツネ様と、お仕事をご一緒させて頂いておりませんでしたら、その……
ツネ様からのプロポーズを誇らしいとは思っても、嬉しいとは思えなかったと思います。
ですが、その……
今回、ツネ様のお人柄を知り、涙が出るぐらい嬉しかったのです。
ただ、その……
その後に聞かされた、グンヨ殿下からの数々の衝撃的な、お話を聞かされてですね、その……
嬉し涙も、お貴族様に嫁ぐ事への不安も、全て、吹っ飛んでしまった次第なのです。」
「夫婦となる人に嘘をつかんかった事は良え事やと思う。
せやけど……
ツネさんの前で、今、それを言わはらんかっても良え思うんやけど……」
フヤさんの話を聞いたレイヒちゃんが苦笑いしている。
「いえいえ。
私も、その……
フヤから良い返事を貰えた事よりも、その……
その後に聞かされた、グンヨ殿下からの数々の衝撃的な、お話のほうに驚いた次第です。
あっ。
誤解のないように先に言っときますが……
フヤから良い返事を貰える筈だ。なんて傲慢な気持ちでプロポーズなどしてません。
フヤへのプロポーズは、私の人生で一番、緊張した出来事でしたよ。
ただ、その……
フヤのお義父様が、
マサシリン傭兵団の伝説的な料理番のカツゲン殿で、
フヤのお義母様が、
【マナ無し軍師】の2つ名で知られているタカコト殿だった。って事や、
幼い頃、お忍びで城下を見回られていたグンミ殿下が迷子になられたところに、同じく迷子になっていたフヤが出くわして一緒にスラム街を闊歩しているのをアサシリン傭兵団の方々が見つけて、保護しようとしてくれていたらしいのですが……
そのアサシリン傭兵団の方々をフヤとグンミ殿下が人攫いだと勘違いをされ、
スラムの住人を巻き込んでの逃亡劇を繰り広げられた。という笑い話などを聞かされたらですね、その……
私の一世一代のプロポーズが霞んでしまった。って訳ですよ。」
ツネさんが苦笑いしながら話す。
◇◇◇
「取り敢えず、おめでとうございます。」
「有り難うございます。」×2
嫁がツネさんとフヤさんの気になるような話には敢えて触れずに、お祝いの言葉を送る。
『後、30分ぐらいで出るわよ。』
イココ団の狼系の獣人で【無能者】のナツムちゃんの声が頭の中に響き渡る。
「では、我々は、これで。」
ツネさんが、そう言うとフヤさんと一緒に自分達の乗り物の方へ移動し始めた。
「我等の運動は終わった。
回し車を納めて貰っても良いぞ。」
「了解。『回収』。」
ワンゾンの報告を聞いた僕は、ダミーの小瓶を回し車に向けて異空間加工倉庫の中に回し車を回収する。
「さてと。
出発の準備をしますかね。」
「了解。」×6
嫁の言葉を合図に僕達は自分達のキャンピングカーに向かった。
■■■
『出るわよ。』
イココ団の狼系の獣人で【無能者】のナツムちゃんの声が頭の中に響き渡ると、キャンピングカーが、ゆっくりと動き始める。
『雲行きが怪しいわ。
雪が降り出したら行軍スピードを緩めたり、近くの広場で待機するから、そのつもりでお願いね。』
『了解。』×6
ナツムちゃんからの念話で送られた指示に、
乗り物を運転するドライバー達とレイヒちゃんが念話で短い返答を返す。
『前方に吹雪になってはるとこがあるみたいやね。
【空の目】を見てはらへんのに予測してはるみたいやね。
流石はジモ住や。』
レイヒちゃんの声が携帯電話から聞こえてくる。
『吹雪かぁ……
やだなぁ……』
ナシアタ君の愚痴が携帯電話から聞こえてくる。
■■■
『予定よりも早いけど、
今日は、この先の広場で夜営をするわ。』
時刻は15時。
イココ団の狼系の獣人で【無能者】のナツムちゃんの声が頭の中に響き渡る。
『硬パンだけでなく、
念の為、干し肉とドライフルーツを3日分、お配りします。
干し肉とドライフルーツは吹雪で身動きが取れない時の為の非常食ですので、いっぺんに食べきらないで下さいね。』
『了解。』×6
ナツムちゃんとフヤさんからの念話で送られた指示に、
乗り物を運転するドライバー達とレイヒちゃんが念話で短い返答を返す。
『吹雪が近づいて来てはる。
【空の目】を見てはらへんのに、流石、ジモジュウや。』
レイヒちゃんの声が携帯電話から聞こえてくる。
■■■
【ブヒュュー】・【ブヒュュー】・【ブヒュュー】
【ブヒュュー】・【ブヒュュー】・【ブヒュュー】
【ブヒュュー】・【ブヒュュー】・【ブヒュュー】
【カタカタカタ】・【カタカタカタ】・【カタカタカタ】
【カタカタカタ】・【カタカタカタ】・【カタカタカタ】
【カタカタカタ】・【カタカタカタ】・【カタカタカタ】
時刻は16時。
キャンピングカーの窓から、風と雪がぶつかる音がする。
ナシアタ君のご実家を再現した【異空間ハウス】から、ポータブル電源を持ってきたので、エアコンや電気毛布等の暖房器具を使いたい放題なのは有難い事だ。
ただ、それでも……
布団を出たら、めちゃくちゃ、寒い。
暖房器具とかがない、僕達以外のメンバーは、死ぬ程、寒いだろうな。
因みに、ナツムちゃんとゼンゾウさんは、イココ団のピックアップトラックに設置されているルーフテントの中に避難しているらしい。
『サンエモンだ。
急ぎの仕事とは、最優先は荷を届ける事だ。
納品が遅れた場合、
その理由を、俺達がキッチリと説明するから、安全第一で、出発時間やルートの変更をしてくれてかまわない。』
『了解。』×6
サンエモン君からの念話で送られた指示に、
乗り物を運転するドライバー達とレイヒちゃんが念話で短い返答を返す。
■■■
【パァァーン】・【パァァーン】・【パァァーン】
【パァァーン】・【パァァーン】・【パァァーン】
【パァァーン】・【パァァーン】・【パァァーン】
「花火大会?な訳ないわよね。
救難信号?」
時刻は22時。
バンクベッドから嫁の声が聞こえてくる。
「【空の目】の映像を見る限りやと、
ニンムシュ達が居はる小島から避難指示が出されはったみたいやで。」
「瘴気の濃度が規定値を超えたのじゃろう。
実際にモンスター氾濫が起こるか否かは運次第じゃが……
何時、モンスター氾濫が起きても可笑しくない。という訳じゃ。
まぁ……妾が知る限り、ネギハタ高原国がモンスター氾濫の被害にあったという事例は無いので問題は無いとは思うが、
瘴気の濃度が上がった事で、この森との境目の砦や村々を悪霊やゾンビが襲ったという事例はあった。と記憶しておる。
サンエモンが、その事を知った上で、ルート変更に言及したのかは分からぬが、
このまま、ここに留まるべきか、難しい判断を迫られてる気がするのう……」
ムンナちゃんの淡々と話す声がバンクベッドから聞こえてくる。
評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。
頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。
宜しくお願いします。




