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ヤドカリ姫は異世界の扉をひっそりと開ける  作者: モパ
【第1章】小さな波紋
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別れと出会い(前編)

『ブイコっす!

グンフ殿下の調査団の皆様と同行者の方々を砦の中の第1駐車場までエスコートするっす!

着いて来て下さいっす!』



時刻は7時。


頭の中に女の人の元気な声が響き渡ると、僕達の乗るキャンピングカーがゆっくりと動き始めた。



巨大な城門の前には兵士達と思われる人達が厳戒態勢が敷かれているように見える。


既に城門の前には兵士と思われる人達の誘導によって長い列が連なっている。



そして、キャンピングカーの動きから察すると、そんな彼等を差し置いて僕達は横入りをして先に入る事になるようだ。


申し訳ない気持ちになるが、殺気などを感じられない事を考えると、誰も怒ってたりしてはいないような気がする。



「なんか……

横入りして砦の中に入るような気がするんだけど……

大丈夫なのかなぁ……」


どうやら嫁も同じ事を考えているらしい。


『ウチ達へ対して負の感情は感じられへん。

この国の人達にとっては問題あらへんみたいやで。』


そんな嫁の話を聞いたレイヒちゃんが情報をくれる。



『ウミシシさん達は、日本でいうところの天皇陛下のお子様や、なんとか大臣とか、そんな感じの人達なんでしょ?


だから、特別扱いされてても……

皆さん、そういうなもんだ。って、思ってるんじゃないですかね。』


『せやろな。』


ナシアタ君の言葉にレイヒちゃんが頷く。



■■■



「お世話になりました。

報酬を受け取って下さい。」


「有り難うございます。

こちらこそ、お世話になりました。」


時刻は7時半。

僕は、グンフさんから白金貨を3枚(300万円の価値)を受け取ると深々とお礼をする。


お互い、名ばかりの代表者のような気もするが……

一応、代表者という事になるので、お金の受け渡しをする係となった。



因みに、僕達は城壁の中の、入ってきた城門から一番、遠い場所にある広い場所に居る。


入って来た城門の近くを含めて、ここと同じような広場が、3箇所あるらしく、

城門で待っていた人達は、他の広場に誘導する事もあって、3時間程、貸し切りにしてくれるらしい。



僕達の他にも、カーゴトレーラーを牽引したトラックが何台か居る。


彼等のカーゴトレーラーに積み込まれているのは水や食糧や魔石。武器などだ。


状況から察するに、彼等の載せている荷物を、

僕達のトラックやカーゴトレーラーに積み替える作業となるのだろうが……


全部は載りきらない気がするな。



「あのテントの中に【審議判定の魔道具】が運び込まれているらしい。


すまんが、君達が大湖の小島に立ち寄っていない証明を取りたいので、着いて来てくれ。」


「はい。」×4


ウミシシさんの指示に、僕・嫁・レイヒちゃん・ナシアタ君が短い返答を返した。



■■■



「君達が大湖の小島に立ち寄っていない証明が取れて良かった。



そこで、この盾を君達に渡しす事にした。


因みに、この盾は当家(ネギハタ高原国の王族のキテ家)が認めた者達に送る物だ。


ヤドカリ商会の名を刻ませて貰っている。


我が国(ネギハタ高原国)は、小国故、他国では、何処まで役に立つかは分からんが……


我が国の領内を移動するに辺っては、これを見せれば、

少なくとも、巡回している兵士達や、他の砦や村などに居る警備兵達は、皆、最大限の敬意を君達に払ってくれる筈だ。



そうそう。

この盾は無国籍の者には与えられないんだ。


君達は確か……無国籍者だったよな?


なので、我が国(ネギハタ高原国)の名誉平民の国籍も与えさせて貰う。」


時刻は8時。


グンフさんは、そう言いながら、

僕達の世界の表彰状のようなサイズの小さな盾をナシアタ君に渡してくれた。



「重ね重ね、有り難うございます。

頂いた盾は使わなくても良いような言動を心掛けます。」


「クククク。


そう言って貰えるのは有り難てぇが、この国にも不貞を働く者が一定数は居る。


そんな時は遠慮なく使ってくれや。」


「はい。

そうさせて貰います。」


ウミシシさんの言葉に、ナシタア君は笑顔で頭を下げながら返答を返している。



「では。我々は、そろそろ行きますわね。」


「名誉平民は平民の括りではございますが、

当人に限れば、伯爵家の者に準ずる扱いとなります。


ですから、この国に来る事があったら、是非、王城を訪ねて下さいませ。」


嫁とレイヒちゃんとムンナちゃんとハグを終えた、フミナリさんとグンミちゃんが、名残惜しそうな顔で話す。



「お前達!

これで勝ったと思うなよ!


お父様が、私を辱めた者!

それを傍観した者!


必ず、復讐をするぞ!」


ブチ切れた顔をしている、タカシュンレイ・コンファンの怒声が響き渡る。



「朝から元気だな。」


「ですね。」


僕の呟きにナシアタ君が頷く。



「ブフッ。」×2


そんな僕達のやり取りを聞いていた、ウミシシさんとグンフさんが吹き出した。



【ガクン・ドサッ】



【ビクン・ビクン・ビクン】

【ビクン・ビクン・ビクン】

【ビクン・ビクン・ビクン】



タカシュンレイ・コンファンが膝から崩れ落ちると、泡を吹きながら痙攣を始めた。



【ゴチン】



「こら!バカ猫!

弱いもの苛めをしない!」


「煩いから寝かしつけただけにゃ!

身体には、倒れた時に出来た傷以外、傷を付けてにゃいにゃ!」


「言い訳、無用!

命の危険を感じた時以外で、人様に殺気を当てるのは禁止よ!」


「了解にゃ。

ナブサモは、おっかにゃいおんにゃにゃ。」


シャーコが、嫁に拳骨を喰らった頭撫でながら文句を言っている。



「なんか……

最後の最後まで、ごめんなさいね。」


「いえいえ。

シャーコちゃんのお陰でスッキリしました。」


「お義姉様の言う通りでございますわ。」


「有難うございます。」


フミナリさんとグンミちゃんの返答を聞いた嫁がホッとした顔をしている。



「ほれ見たことかにゃ。」


「あぁ?」


「にゃんでもにゃいですにゃ。」


軽口を叩いたシャーコは、嫁に睨まれると、レイヒちゃんの後ろに隠れた。


微妙に敬語になっているところを見ると、

キッチリとした上下関係が出来つつある気がした。



「では、我々は、これで。

ツネ。後の事、頼みましたよ。」


「はっ。」


フミナリさんの言葉にツネさんが短い返答を返す。



「行ってらっしゃい。

無事に帰って来てね。」


「はい。

行ってきます。」


グンミちゃんがフヤさんを、ハグをした後、名残惜しそうな顔をしながら、ウミシシさん達と一緒にトラックに乗り込んだ。



「では、失礼します。

皆様の輝かしい未来を祈ってます。」


グンフさんが、そういうとトラックに乗り込んだ。



そして、新たにヤキパコさん達を加えたグンフさんの調査団の皆さんは、一足先に砦を去って行った。



■■■



「最近になってナヤクラース連邦で開発された、ウィンドスクリーンとハンドルカバー付きの寒冷地仕様のクアッドを2台、借りて来たぞ。」


ゼンゾウさんとイココ団のナツムちゃんが、車体の横にギルドの紋章が刻印されたクアッドに乗って、僕達の居る砦の第一駐車場に戻って来た。


そして、ナツムちゃんの後ろには、女の子にしては大柄な美少女が乗っていた。



「お帰りゼンゾウ。

良くやった。」


時刻は9時半。

センメさんが嬉しそうな顔で返答を返す。



「イココ。

ペンアツ・シキカカが同行を求めて来た。

アタシ的には戦力アップになると思うんだけど……どうする?」


ナツムちゃんがイココちゃんに質問をする。



「私的には正式にイココ団に入団してくれるのであればオッケー。


皆は、どう?」


「異論なし。」×5


イココちゃんの質問にイココ団のメンバーが笑顔で頷く。



「良いのか?」


ペンアツ・シキカカと呼ばれていた美少女が目を丸くしながら質問をする。



「あんたのご実家は、応援こそしないけど、邪魔もしないんだろ?


それに、ナカコウ家は、没落して名ばかりになっているとはいえ……


一応、あんた家よりも古いお貴族様の家系だし、かつては、あんたの家よりも家格が上だった時期もあったから、体面的にもギリギリ セーフ。



まぁ……冒険者は実力主義。お貴族様が平民の下に付く事なんてザラにあるから、ペンアツ家も表立って目くじらを立てる事は無いだろうけど……


年齢的に、すんなりと、あんたの受け入れられる団は、私達以外にないでしょ?



それに……私達の団の足らない部分を埋める実力を、あんたは持ってる。


こちらこそ、私達の団(イココ団)への加入をお願いしたいわ。」


「あんたが入ってくれたら、一兵卒として魔術に専念が出来る。


頼りにしてるぞ。」


「セカンド ドライバーを君に引き継ぎたい。


この団(イココ団)の中では、僕がセカンド ドライバーを務めるのは正解だろうけど、


上を目指すには、早急にセカンド ドライバーを補充して貰いたい。って思ってたからね。」


イココちゃんの言葉にトンタカ君とキュチョロウ君が嬉しそうな顔で頷いている。



「純粋に私の能力を評価して、誘ってくれるのか?


こんな嬉しい事はない。」


ペンアツ・シキカカと呼ばれていた美少女が大粒の涙を流しながら話す。



「人外地でやってくのに身分も出自も種族も性別も年齢も関係ねぇ。


今回、俺達は、その事を身をもって学んだんだ。」


「なっ。言った通りだろ。」


キンバカ君の返答を聞いたナツムちゃんが、得意気な顔で話す。



「不束者だが、宜しく頼む。」


ペンアツ・シキカカと呼ばれていた美少女が大粒の涙を流しながら返答を返す。



「お上品だねぇ……

だけど……あんたらしくて良いわ。」


ナツムちゃんは、大笑いしながら、ペンアツ・シキカカと呼ばれていた美少女にウインクをした。

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頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

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