共有と相談
『ブイコっす!
グンフ殿下の調査団の皆様と同行者の方々を砦までエスコートするっす!
着いて来て下さいっす!』
時刻は16時半。
頭の中に女の人の元気な声が響き渡ると、僕達の乗るキャンピングカーがゆっくりと動き始めた。
ヤキパコさん達は、3台のピックアップトラックに分乗して来たらしく。
1台が先頭を残り2台が僕達の乗るキャンピングカーの後ろを着いて来きている。
僕達は砦の軍人達の専用の道を行く事になった。
この道を通れば、0時~1時の間ぐらい砦の前の広場まで着ける予定との事だ。
その後、僕達は砦の夜番の衛兵さん達に護衛して貰いながら、砦の前の広場で夜を明かし、朝一から砦の中に入る事となった。
そして、砦に入り次第、サンスジ商会と合流し、オワトブ村へ商品を運ぶ仕事の段取りに取り掛かる予定となっている。
◇◇◇
『兄さん。問題発生や。
あちこちから食糧や塩や香辛料を運びはる商会や、
カミナカトブ村から要請を受けた崖崩れの復旧作業を行いはる傭兵団が、シモナカトブ村を目指してはるみたいなんやけど……
食糧や塩や香辛料を運びはる商会は皆、帰りはなんも荷物を載せずに、各々の拠点に帰りはる事になりはるみたいや。
シモナカトブ村にあるギルドの営業所は、
その補填も考慮しはって食糧や塩や香辛料を相場の2倍やのうて3倍で買い取りはる。ちゅう声明を出しはったんや。
こうなってしもうたら、
いくら見聞を広げる為に、世界中を回る。ちゅう大義名分があったとしても、
商売としてウチ達が居る場所からシモナカトブ村より遠い場所へ行く旨味が見当たらへんのや。
せやから、ウチ達がシモナカトブ村よりも遠い場所へ行く、表向きの良え理由を一緒に考えて欲しいんや。』
レイヒちゃんの沈んだ声が携帯電話から聞こえてくる。
「今回の件の影響で、僕達が居る場所からシモナカトブ村よりも遠い場所で不足しそうな品物で、ネギハタ高原国やオワトブ村で手に入る物があるか調べる必要があるね?
もし、そういう品物があるのであれば、敢えて、シモナカトブ村へ塩を運ぶ仕事を引き受けずに、
からシモナカトブ村よりも遠い村へ不足しそうな品物を持ち込むのもありだと思うんだ。
それと……空荷でシモナカトブ村よりも遠い場所の中で一番、近い町か村に着いた後、更に遠い場所へ荷物を運ぶ仕事が有りそうかも調べる必要があるね。
シモナカトブ村に塩を卸せば、相場の3倍の値段で買ってくれるのならば、
シモナカトブ村よりも遠い場所の中で一番、近い町か村で新しい仕事を受注する事が出来るのであれば、
そこまで空荷で移動する事で赤字になったとしても、取り戻せる気がするんだよね。
後、それと平行して、逆側のウドゥイティ トスン高原国の事も調べる必要があるね。
シモナカトブ村に塩を卸せば、相場の3倍の値段で買ってくれるのならば、
シモナカトブ村へ小遣い稼ぎに塩を卸した後、一旦、オワトブ村へ戻り、逆側のウドゥイティ トスン高原国を目指すのも有りだと思うんだ。
その全てがダメならば、一旦、ネギハタ高原国に戻り、他の場所を目指すのも有りだと思う。
何故ならば、神仏の代理人は、アマトティ様とプスアー様の欠片を封印した勾玉を、各々、1個づつ持っているんでしょ?
ならば、他の神仏の代理人が治める土地へ、速やかに移動するのも1つの手だと思うんだよね。
でっ。情報収集の方法としては、
まず、ホンイ団やサンスジ商会にオワトブ村へ食料等を運ぶ仕事をした後、
シモナカトブ村よりも遠い場所の中で一番、近い国となるアマズトモエ連邦へ向かうか、逆側のウドゥイティ トスン高原国へ向かうかで迷っている。
出来れば、オワトブ村で次の場所で売る商品を買いたいのだけど……なんか良い情報を持っているか?ってね。
勿論、ギルドの通信機器や情報機器をハッキングしたりして、リアルタイムの情報を得られるレイヒちゃんの方が、彼女達よりも有益な情報を調べられる事は分かっている。
だけど……
レイヒちゃんの異能を隠す為には、敢えて、他者に聞くのも1つの手だと思うんだ。
勿論、聞いた内容と、今の状況が違う可能性があるので、
レイヒちゃんには聞いた情報が正しいか否かの裏取りもお願いしたいけどね。
質問への直接的な答えにはなってないかもだけど……
この作戦はどうだろう?」
『敢えて、地元の情報に詳しそうで、尚且つ、信頼も置けそうな他人に聞いてみる。ちゅうんはアリやね。
何でも一人でやろうと意気込み過ぎてたわ。
兄さんに相談させて貰うて正解やったわ。』
レイヒちゃんの嬉しそうな声が携帯電話から聞こえてくる。
「それは良かった。
だけど……
相手が嘘をついてない。ってのと、相手が正しい情報を話してくれている。ってのは[=(いこーる)]じゃない。
だから、裏取りだけはお願いさせて貰うよ。」
『せやね。
そこは任せとき。』
レイヒちゃんの元気な声が携帯電話から聞こえてくる。
■■■
「【空の目】で見るのと実際に見るのとでは大きさが違って見えるわね。」
嫁がボソッと呟く。
時刻は1時。
僕達は予定通りの時間に砦の前の広場に着いた。
『ウミシシだ。
皆、朝までゆっくりと休んでくれ。
ヤドカリ商会には、明日の朝1、砦に入る前に白金貨3枚(300万円の価値)を支払う。
宜しく頼むぞ。』
『了解や。
おおきに。』
レイヒちゃんが念話でウミシシさんにお礼を言ってくれる。
◇◇◇
「ようやく一区切りが付いたわね。
でっ。結局……モンスター氾濫は起きなかったわね。」
「今んとこは。ちゅうんがギルドの考えみたいやわ。
その証拠に、あの森へ立ち入らへんように注意喚起を取り下げてはらへんわ。
それと……
ギルドの通信機器をハッキングさせて貰うてわかったんやけど、
ギルドは、今回の件の原因の調査を合同で行う事をニンムシュに打診し、
ニンムシュは、祠に立ち入れへん事を条件に許可しはったようよ。
そうそう。
ニンムシュ自身は、ギルドとの合同調査には加われへんみたいやわ。
ニンムシュは、自分はギルドとの合同調査には加わらへんと独自で調査させて貰く代わりに、
合同調査へは自分の代わりに、自分の部下のアタルハナを参加させはる。ちゅう返答を返してはったわ。」
レイヒちゃんは嫁の質問に答えつつ、新しい情報をくれる。
「アタルハナ。のう……
確か……ニンムシュの懐刀の女が、そんな名前じゃったな。
妾の事がバレぬとは思うが、向こうも本気のようじゃな。」
ムンナちゃんが真剣な顔でボソッと呟く。
「取り敢えず、今日はここまでにして寝よう。」
「うん。」・「うむ。」・「せやな。」・「はい。」
嫁の指示に僕達は頷く。
因みに、運転席の横の補助席に置かれたドライブボックスの中に居るワンゾウは既に夢の中に居るとの事だ。
「夜はアタイの時間にゃ。
任せておくにゃ。」
「宜しくね。」
「うにゃ。」
嫁がシャーコの頭を撫でながら話すと、シャーコは得意気な顔で頷く。
◇◇◇
ニンムシュが、ギルドとの合同調査を拒否したのは、アマトティ様とプスアー様の欠片を封印した勾玉を盗まれた事をギルドも知られたくないからなのだろうか?
それとも……他に理由があるのだろうか?
考えても分からない内容だが、気にもなる。
だから、僕は携帯電話のメモ張に、今、思った事を入力し、朝まで眠る事にした。
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