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ヤドカリ姫は異世界の扉をひっそりと開ける  作者: モパ
【第1章】小さな波紋
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【サイドストーリー】奴隷落ち

「あんた達……

揃いも揃って、なんで脱糞なんてしてるのよ?」


マダサの姉貴が俺達を見ながら大笑いしている。



「グンフ殿下の調査団の野営地の近くに見知らぬ男女が居たの。


だからさぁ……


そこに居てはいけないんじゃないの?って注意したの。


そしたら、いきなり殺気で脅されたの。


酷いと思わない?」


ギサヨさんが泣きながらマダサの姉御に嘘の報告をする。



「そいつはいけねぇな。


Cランクの冒険者のお前達が殺気だけで、そこまでになるような力を持った不審者が、グンフ殿下の調査団の近くをたむろしている居るのは問題だ。


ギサヨの話の真偽は一先ず置いくとして……

状況確認をしておいたほうが良そうだな。」


レタゼの兄貴が真剣な顔で話すと、

マダサの姉御とチッヤの姉貴とゼマッタ兄さんが頷いている。



レタゼの兄貴。マダサの姉御。チッヤの姉貴。マッタ兄さん。ゼヨ。の5人で構成されているレタゼ団はAランクの冒険者パーティーだ。


ここでグンフ殿下の調査団に害を為す者達を捕縛して、Sランクの冒険者のパーティーになる為の実績を作りたいのだろう。



とはいえ……

流石は、Aランクの冒険者達だ。


ギサヨさんが嘘をついている可能性もキッチリと考慮している。



ただ……

レタゼの兄貴達は上下関係に煩い方々だ。


オイラ達に生意気な態度だった、あいつ達は、多分……

レタゼの兄貴達にも同じような態度で接する筈だ。


そこへ口の上手いギサヨさんや、

弱者には強く、強者は媚びへつらうセタチさんが上手くレタゼの兄貴達を誘導すれば、

ギサヨさんの嘘の報告の真偽について議論される事もなく、あいつ達をレタゼの兄貴達から制裁を喰らわされる筈だ。



とはいえ……

念には念を入れて、このまま静かにしておこう。


そうしとておけば、

たとえ、ギサヨさんの嘘がバレたとしても……

オイラは傍観していたという事を責められるだけで、それ以上の責を問われない筈だ。



いつもならば、ギサヨさんの嘘に乗っかるセタチさんや、モトミョウさんも静かにしている。


きっと……オイラと同じ事を考えてるのだろうな。



でもさぁ……


女に股を貸せ。って言っちまってるセタチさん。

俺達のパーティーのリーダーのモトミョウさん。


あんた達は……本当に、それで良いのかい?


多分……傍観してさえいれば身を守れるのは……

下っ端のオイラだけだと思うぞ?



てか……美味しい思いもさせてくれるが、

それに対する恩が帳消しになるくらい、こき使ってくる、あんた達と行動を共にしてるのは、

傍観さえしておけば、大きな責任を問われる事なく、あんた達のせいで落ちていく他人達(ひとたち)を特等席で見られるからなんだよ。


そこんとこ……分かってるのかい?



◇◇◇



「おいおい。

なに、嘘八百、並べてるんだい。」


「念の為に、つけて来て正解でしたわね。」


「だよな。

これ以上……客人を怒らす訳にはいかなぇもんな。」


気の強そうな美女と、愛らしい御姉様と、威圧感が半端ないイケメンの大男が不機嫌そうな顔でギサヨさんを見ている。


それと……


何故かは分からんが、

その3人の後ろから、ギルドの教官のゼンゾウさんとセンメさんが鬼のような形相でオイラ達を睨み付けている。




「それ言えてる。


何が、ワンゾウは戦闘が不得意な番魔犬で、

エンクル君はBランク相当の回復師(ヒーラー) 兼 Bランク相当の解術師という戦闘補助員で、

ナブサモちゃんは非戦闘員の商人よ。


腰にぶら下げてる魔弾の銃だけで、アタシ達を余裕で殲滅する事が可能なマナを体内に有してるじゃん。


てか……

ナブサモちゃんの妹の幼女のムンナちゃんにすら勝てる気がしなかったわ。


マジで……凹むわぁ……」


「凹みついでに悲しいお知らせをしてやる。


自称、

【魔術師】のジョブ補正を受けているBランク相当の【魔術師】 兼 護衛秘書のレイヒちゃんと、

【無能者】のBランク相当の護衛 兼 運転手のナシアタ君と、

護衛よりも戦闘が得意な魔猫のシャーコ。



戦闘要員として聞いていた2人と1匹の実力を計る為に、出会った時に、ありったけの殺気をぶつけたんだけどさぁ……


涼しい顔をしていたよ。



そん時に思ったね。


少なくとも、あいつ達は……俺レベルの者が束になっても勝てないような化物だ。ってな。


だから……

案外、あいつ達の中では嘘を言ってねぇのかも知れねぇぞ。」


「あんたねぇ……馬鹿にしすぎ。


アタシはね。客人達に嘘をつかれてた。って凹んでいる訳じゃないさね。


ただ単純に、自分の雑魚さに凹んでるだけさね。」


威圧感が半端ないイケメンの大男の言葉に、

気の強そうな美女が不機嫌そうな顔で返答を返す。



◇◇◇



「とはいえ……

嘘つき女の話を間に受けて、レタゼ団が不用意な真似をする前に止められて良かったです。


この2人の言っている事は本当です。



それと……

レタゼ。マダサ。チッヤ。マッタ。ゼヨ。


私は、我々の客人である、ヤドカリ商会の皆様とは敵対したくありません。



賢い貴方ならば……


私が、貴方達に、何を、お願いしたいのか、

勿論、分かってくれますよね?」


愛らしい御姉様が微笑みながら話す。



◇◇◇



「フミナリ様。

直言をする、ご無礼、お詫び致します。


本日、我々、レタゼ団は、

モトミョウ団とも皆様とも会っていない。


そういう事で宜しいでしょうか?」


レタゼの兄貴が愛らしい御姉様に跪きながら返答を返す。


そして、マダサの姉御。チッヤの姉貴。ゼマッタ兄さんは、レタゼの兄貴の後ろで跪いている。



「正解です。


ところで……ゼンゾウ。センメ。


嘘つき女と、股を貸せ男以外の2人は……見所がありますか?」


「無いですね。」×2


ゼンゾウさんと、センメさんが、氷のような冷たい目でオイラ達を見ながら即答された。



◇◇◇



「フミナリ様。

直言をする、ご無礼、お詫び致します。


そっちの若いの。

アイオって名前なのですが……


そいつは、団員(パーティー メンバー)とは名ばかりの使いっパシリです。


ですから、その……

俺達が責任を持って性根を含めて鍛え直しますので、その……ご慈悲を与えてやってはくれませんか。」


レタゼの兄貴が愛らしい御姉様に跪きながら、オイラの事を庇ってくれる。



「『封印』」


愛らしい御姉様が、

モトミョウさん。セタチさん。ギサヨさんを小瓶に封印した。



「分かりました。


では、モトミョウ団でしたっけ?


ヤドカリ商会の方々がアイオを駆除しなくても良い。と言った場合、


アイオを犯罪奴隷とし、貴方達が買い取った形にして、彼に更正の機会を与えます。


ただし、

彼の性根を矯正する事が出来ないと判断した時点で、

彼の事をキッチリと駆除する事を誓って下さいね。」


「我が命に替えて誓います。」


レタゼの兄貴が愛らしい御姉様に跪きながら返答を返す。



■■■



「有り難うございます。有り難うございます。」



オイラはレタゼの兄貴に泣きながらお礼を言った。



まさか、

愛らしい御姉様がキテ・フミナリ様で、

威圧感が半端ないイケメンの大男がキテ・ウミシシ様で、

気の強そうな美女がマコグレ・ハウシ様だなんて思ってもみなかった。



オイラ達が絡んだ奴等が、あのお方達の言うような化物なのか。


その真偽は分からんが……


どちらであれ、ネギハタ高原国の王族であらせられるキテ家の客人に手を出した時点でオイラの人生は詰んでいた。


それを……レタゼの兄貴が救ってくれたのだ。



「俺は、お前さんの雑用としての腕を買っている。


とはいえ……

お前さんと一蓮托生の関係になるつもりもねぇ。


使えないと判断したら、更正は可能だと思ったとしとも死んで貰うぞ。」


「分かりました。」


オイラはレタゼの兄貴の言葉に頷く。



人を呪わば穴二つ。

昔の人は上手い事、言ったものだ。


この結果は、

傍観さえしておけば、大きな責任を問われる事なく、セタチ達のせいで落ちていく他人達(ひとたち)を特等席で見られる。なんて……

馬鹿な事を考えていたオイラのせいだ。



オイラが奴隷落ちすれば、

オイラだけでなく、オイラの家族の命も繋がる。



今回の件が、

モトミョウさん。セタチさん。ギサヨさんの命だけで収まるのか、彼等の家族の命まで取られるのかは分からない。


ただ、オイラは……

レタゼの兄貴のお陰で、オイラの家族を含めて首の皮が一枚、繋がったのは、ただ単純に運が良かっただけだ。


レタゼの兄貴が居なければ、家族を含めて、他のメンバーと同じ末路を歩む事になっていた筈だ。



この機会に真人間に生まれ変わろう。

そして……レタゼの兄貴達に必要とされるように腕も磨こう。


オイラは、そう固く誓った。

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