砦の手前の広場にて
「ウミシシ様!グンフ殿下!グンミ殿下!フミナリ様。
そして、グンフ殿下の調査団にご同行されておられる皆様!
お待ちしておりました!」
休憩所の手間で若い女の人の大きな声が聞こえてきた。
「ヤキパコ!ご苦労!
だが……呼びかける最初の人は、グンフの義兄貴にして欲しかったな!」
「次からは善処します!」
ウミシシさんの返答に、ヤキパコと呼ばれた女の人が元気良く答える。
◇◇◇
『予不測の事態が起こらない限りは16時過ぎから再び移動を開始する。
行軍の1時間前には飯を食い始めて、
出発までには用を足しておいて欲しい。
宜しく頼むぞ。』
『了解や。』 ・『畏まりました。』×3
ウミシシさんの念話での指示に、
レイヒちゃんと教官のリーダーとクタゴタさんだけでなくヤキパコさんも念話で返答を返す。
時刻10時。
予定では明日の朝には、砦の中で一息つける予定だ。
【ガチャ】
レイヒちゃんとナシアタ君がダイネットに入ってくる。
「アタイは運転席とやらを守るにゃ。
レイヒ。
すまんが、飯と水を持って来てくれにゃ。
後、ワンゾウの運動が終わるまで、ここを頼むにゃ。」
シャーコは、そう言うと運転席に繋がる、嫁が作ってくれている【異空間ハウス】の扉の中に入っていった。
「しゃあないなぁ。
流石に回し車は出せへんやろうから、
ワンゾウの運動は散歩で我慢して貰わんといけんね。」
レイヒちゃんが、そう言いながら窓の外を見ている。
■■■
「行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」×4
僕・嫁・ムンナちゃん・ワンゾウは、
ハンバーガーを片手に給油をしてくれているナシアタ君と挨拶を交わして散歩に出た。
防寒対策をしっかりと取っているつもりだったけど……
顔などの肌が露出している部分が寒いのを通り超して痛い。
「犯罪者みたいなんて言ってる場合じゃないわね。
パパに【異空間加工倉庫】を利用して、バラクラバを作って貰ってて良かったわ。
パパとムンナちゃんも被せてあげるね。」
嫁が、そう言いながら、テキパキと動いてくれる。
僕は背中にムンナちゃんを背負い、
左手にワンゾウのウ○コを土に埋める為のシャベルが入ったポリ袋を持っている。
因みに、この世界の暗黙のルールでは、
人外地では使役モンスター(ペットを含む)の糞尿の始末はしないらしい。
また、町の中では糞はドブに捨て、
村の中では糞は田畑の肥料にする為に、使役モンスター(ペットを含む)用の肥溜めのような場所に捨てるらしい。
そして……
町や村の中でも尿の始末は、基本、しないらしい。
僕達の感覚では、不衛生だと思うが……
郷に入っては郷に従え。慣れていくしかないのだろうな。
因みに、嫁は、
右肩にワンゾウの餌と水とお皿が入ったエコバッグを掛け、
左肩に某ハンバーガーショップ店の商品を入れたエコバッグを掛けている。
僕達が戻るまで客室の見張りをしてくれるレイヒちゃんは、熟睡は出来ないだろうが、
ナシアタ君だけでも熟睡させてあげられるよう、客室に戻ったら、直ぐにトイレで用を足して寝られるように、食事は外で済ます事にしたのだ。
ワンゾウは、僕と嫁の間をトコトコと歩いている。
寒さ対策にレインコートを着ているワンゾウにリードを付けていない。
これも、この世界では普通の事らしい。
それと……
人外地でも、町や村の中でも、
レインコートや首輪。ハーネス等といった、
人に使役されている事が分かるようにしておかないと、討伐(駆除)の対象にされるらしい。
ワンゾウやシャーコに限っていえば、
ムンナちゃんやレイヒちゃんが言うには、
野良アサグや野良妖人でも無い限り、倒せるような人は居ないらしいのだが、
無駄な争いに巻き込まれない為に、
ワンゾウにもシャーコにも、服やハーネスを着せるだけでなく、首輪も付けさせて貰っている。
「今日は回し車は休みか?」
オギンとギンマルを連れたキヤリキ君が小さな声で聞いてきた。
「この状況だからね……
今日は散歩で運動させる。」
嫁は、トラックや人。使役モンスターなどで溢れかえってる広場を見ながら苦笑いしながら返答を返す。
「仲間に入れてくれないか?」
「良いわよ。
今日は1人なの?」
「有り難う。
ホンイとホンミは寝てる。
カンレツは索敵魔法を使って見張りをしてる。
イココ団の連中も、交代で見張りをしながら眠るらしい。
だから、今日は俺が1人でオギンとギンマルを連れてる。」
キヤリキ君が淡々とした口調で話す。
◇◇◇
「ヤキパコさん達が、良い場所を取ってくれてて感謝だね。」
「じゃな。」×2
嫁の言葉にムンナちゃんとワンゾウが頷く。
僕達の乗り物は、広場を対面に見ると左端に縦1列に並んでいる。
僕達が出る時に、ヤキパコさん達が、他の人達の出入りを止めてくれたら、隊列を崩さずにスムーズに出られるようになっている。
ヤキパコさん達が来てくれてなかったら、隊列を組めずに、各々が別々に砦を目指す事になっていたかもしれないぐらい、この広場は、ごった返している。
◇◇◇
「暖かいスープとパン。
アツアツの肉まんに、干し肉と干し野菜の野菜炒めはいかがっすかぁ~!
お皿を持って来て頂ければ安くするっすよ!
是非、買ってくれっす!」
「酒はいかがっすか?
エールにワイン。焼酎に酎ハイ。色々、取り揃えてるぞ!」
「体力の回復の薬に、マナの回復の薬に、解毒の薬。
その他、春を楽しめる(ポーション)まで、何でも取り揃えてるぞ!
見るだけでも良いから、一度、見てくれ!」
「回復で身体のメンテを!
錬金術で乗り物のメンテを!
【ジカアーとオサメの何でもメンテナンス商店】が出張サービスに伺っております!
ご利用下さいませ!」
「銃に剣。槍に鎧などの武器!
車やトラック。クアッドなどのタイヤ!
何でも取り揃えてるぞ!
不要な物は買い取るぞ!
この機会に買い替えないか?」
「色んな春を揃えて参りました!
娼婦だけでなく、男娼も居ますよ!
溜まったものをスッキリとさせて下さいませ!」
アチコチから客引きの声が聞こえてくる。
僕達は自分達の隊列の周りひたすらにグルグルと回っている。
見てくれで判断するのはイケない事とは思うけど……
ガラの悪い、殺気だった男女で埋め尽くされている場所に飛び込んで行く勇気が出ない。
「お祭りみたいで楽しそう。」
嫁が呑気な感想を話している。
「行ってみたいのう……」
「商品はあれど……お金がない。
物々交換用の商品を両手に抱えて屋台を巡るのは流石に無理っぽい。
だから、屋台巡りは、次の機会まで待っててね。」
ムンナちゃんだけでなく、嫁も悲しそうな顔で、お祭り騒ぎを眺めている。
■■■
「順番抜かしは、お止しになって!」
「ウッセェ!雑魚!
低ランクは黙って、上位ランクに順番をお譲りになられたら良いのですわ!」
「低ランクの雑魚どもぉぉぉぉ!
死にたくなければ、俺達に金を貢げや、コラァァァ!」
「オラァァァ!
ボッタクってんじゃねぇぞ!
勉強しろや!コラァァァァ!」
歩き始めてから、30分は経過した辺りから、喧騒は怒声へと変わり始ていたのだが……
状況は酷くなる一方だ。
「キヤリキ君も食べる?」
ムンナちゃんが、美味しそうにハンバーガーを頬張ったり、コーラを飲んでいるのを羨ましそうに見てたキヤリキ君に嫁が声をかける。
「うん。
あんがと。」
「ほいよ。」
嫁がエコバッグからハンバーガーとコーラをキヤリキ君に渡すと、キヤリキ君が、一心不乱に食べ始めた。
「お代わりは、2つまでだよ。」
「なら、2つくれ。」
「ほいよ。」
「あんがと。」
キヤリキ君は嫁から、ハンバーガーを受け取ると、また、一心不乱に食べ始めた。
「ねぇねぇ。アタイ達にも、それ寄越せ。」
「ついでに、お姉ちゃんの股も貸してくれや。」
「セタチさぁ……
そこはアタイで満足しとけや。」
「ギサヨ。
お前さんも疲れてるんだろ?
俺とアイオは他所で済ます。
お前さんは、モトミョウと楽しんどけ。」
下卑た顔をしたガラの悪い4人の男女が僕達に絡んできた。
「『非活性化』×4」
僕は絡んで来たガラの悪い4人の男女の内臓と鼻と目と耳と口を残して、その機能を停止させる。
「失せろ。」
「ガルルルル!」
ワンゾウが絡んで来たガラの悪い4人の男女を睨み付けると、
オギンとギンマルも犬歯を剥き出しにして臨戦態勢に入った。
【スチャ】
キヤリキ君が背負っている大剣の柄に手をかける。
「ひぃぃぃぃ。」
「すみません。すみません。」
「悪かった。許してくれ。」
「2度と、あんた達に舐めた態度を取らないっす。
だから、見逃してくれっす。」
絡んで来たガラの悪い4人の男女は、僕達に絡んで来た姿のまま、涙を浮かべて謝ってきた。
「取り敢えず、目の前から消えて。
『活性化』×4」
【ドサッ】×4
【ブリブリブリ・ジョワァァァー】×4
「オェェェェェー」×4
僕が絡んで来たガラの悪い4人の男女の身体を、一旦、元に戻すと、彼女達は腰を抜かして糞尿を垂れ流し、嘔吐し始めた。
「『非活性化』×4」
そんな彼等の胃と腸と腎臓の動きを完全に停止させた。
彼等は直ぐに胃不全麻痺と腸閉塞と急性腎不全を同時に引き起こしたような症状が出る筈だ。
僕の異能で引き起こして症状は、
回復魔法や、この世界の薬といったマナを利用した医療行為では治せない。
そして、この世界には移植手術という医療行為は無いらしいので……
彼等は薬悶え死にするしかないだろうな。
可哀想な気もするが、
彼等の家族を含めて、誰かに逆恨みされる事も考慮に入れると、
病死と判断されるような殺し方を選択せざる得ない。
理不尽かもしれないが……
自業自得。という事で納得して貰うしかないな。
「場所を移そっか。」
「だね。」・「じゃな。」×2・「うん。」・「ワン」×2
僕達は嫁の言葉に頷く。
「先にムンナちゃんとキヤリキ君のご飯を用意して良かったわ。
ワンゾウ達のご飯を用意した後だったら移動するのも一苦労だったわ。」
「だね。」
僕は嫁の言葉に頷くとムンナちゃんを背負う為に中腰になった。
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