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ヤドカリ姫は異世界の扉をひっそりと開ける  作者: モパ
【第1章】小さな波紋
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高山病対策 / お互い様

『話は変わるけどさぁ……

風呂に入りたいよなぁ……』


『せやな。

疲れを取る為にも、ゆっくりと湯船に浸かりたいよね……』


「シャワーを浴びたいのは分かるけど……

長風呂は、のぼせてしんどくなるから、わたしは浸かるのはパスかな。」


『そうなんや。』


嫁達が、お風呂の話で盛り上がっている。



「風呂?

小さな温泉みたいなやつにゃよね?

アタイは汚れてにゃいし、ヌクヌクな場所に居れるから……暖まる必要もにゃい。


にゃからパスにゃ。」


『外に行く前に塗って貰う薬のお陰でノミの心配もないのじゃろ?


じゃったら……儂も遠慮させて貰いたい。』


「2匹とも温泉が好きでなかったからのう……

妾は風呂とやらに入らせて貰いたいぞ。」


シャーコとワンゾウは風呂嫌いで、ムンナちゃんは風呂を気に入ってくれているらしい。



「明後日には砦に着くのでしょ?

何れぐらい休みが貰えるかは分からないけど……

1日ぐらいはゆっくりしたいよね……」


『せやな。

風呂もやけど……鍋とかタコパとか、親睦を深めるイベントもやりたいもんな。』


嫁の言葉にレイヒちゃんが頷いている。



『明日にはニンムシュが力を取り戻す予定なんだろ?

パーティーは、ニンムシュの縄張りじゃねぇ。つう、ギルドのテチス山脈支店の縄張りに入ってからのほうが良くねぇか。』


『言われてみれば、その通りやな。

休みが貰えたら、お風呂と睡眠以外の時間は情報収集に充てるわ。』


ナシアタ君の話を聞いたレイヒちゃんが悲しそうな声で話す。



『にしても……トロイよな……

なんでネクさんも迂回の指示を出さへんのやろな?』


『だよな……』


レイヒちゃんの言葉にナシアタ君が頷いている。



◇◇◇



『グンミです。


幸い、スピードを落とした行軍になっているので、体調を崩すリスクは少ないとは思いますが……


山登りの最中に体調を崩す人が居ます。


体調がおかしくなった方には、(ポーション)を提供させて頂きますので、遠慮なく言って下さいませ。』


グンミちゃんの声が頭の中に響き渡る。



「ノロノロ運転は、高山病対策なのかもしれないね。」


「高山病?」


嫁が不思議そうな顔をしながら質問をしてくる。



「高山病とは、山登りなどで気圧が低く酸素濃度の低い高所へ行くことで、体が環境の変化に追いつかずに吐き気、嘔吐、だるさ、脱力感、立ちくらみ、めまいなどの症状が引き起こされる病気だよ。

重症化すると、肺に水がたまって呼吸困難になったり、脳にむくみが生じて意識を失ったりするなど命に関わるような事になる事もあるらしい。」


「よく、そんな事知ってるね。」


嫁が尊敬の眼差しで僕を見てくる。



「うっすらとしか知らなかったよ。

レイヒちゃんの異能のお陰で、僕達の世界のネットの情報を何時でもググれるのは有難い事だよね。」


「そんな事だろうと思ったわ。」


僕の返答を聞いた嫁が大笑いしている。



『せやけど、兄さんが気がつきはってくれてたお陰で無駄にイライラする事もなくなったわ。


有り難うな。』


レイヒちゃんの元気な声が携帯電話から聞こえてくる。



◇◇◇



【パァァーン】・【パァァーン】・【パァァーン】



「救難信号?」


『ウチ達の事を煽ろうとしはったアホが事故ったみたいやね。』


嫁の言葉にレイヒちゃんが反応する。



『こちらネク。

救難信号を確認しましが、 我々の通り道で無い為、スルーしたいと思います。

異論のある方は居ますか?』


『異論なしです。』×4


ネクさんの念話での質問に対して、

レイヒちゃん。ウミシシさん。ギルドの教官のゼンゾウさん。クタゴタさんが念話で返答を返す。



時刻は22時。


【空の目】の映像を見ると、2台のピックアップトラックが大破しているのが見える。



『あいつ達、死ぬやろな……

一瞬やったけど、イラッとさせられてへんかったら……罪悪感を覚えるとこやったわ。』


「彼等を助けに行けば、隊列を乱す事になる。


つまり……この隊列の他のメンバーを危険に晒す事になる。



それに……

そもそも、僕達にとって、一番大事なのは、このキャンピングカーに居るメンバーで、

その次に大事なのが関係者や協力者。お客様。といった関係者。



それらの安全を軽視してまで助ける必要性はないと思う。


何故なら、余程のお人好しが相手じゃない限り、

命に優先順位を付けるのは、お互い様だろうからね。」


「パパの言う通りなんだろうけどさぁ……

なんてか……ドライすぎでしょ。


出来ない事は出来ないけど……

他人(あいて)の事を考えて申し訳ない。って思う気持ちは……尊い事だと思うぞ。」


嫁が苦笑いしながら僕を見る。


『姉さん。有難う。

せやけど、命の優先順位をつけるのは、お互い様。ちゅう兄さんの言葉で気が楽になったわ。』


「余程のお人好しが相手じゃない限り、 命に優先順位を付けるのは、お互い様。


寂しい考えじゃとも思うが……真理じゃとも思う。


つくづく、主達の仲間に迎え入れて貰えて良かったと思うわ。」


ムンナちゃんがホッとした顔をしながら話す。



「だけど……

助けられる相手は助けたいな。」


『せやな。』


嫁の言葉にレイヒちゃんが頷く。



「情けは人のためならず。って言うもんね。

自分達のやれる範囲で人助けをする事については、僕も賛成だよ。」


『情けは人のためならずねぇ……


兄さんには失礼かもやけど……

人に親切にしたら、その親切が巡り巡って最終的に自分に良い報いとして戻って来る。て言われとる、良い報いを目当てにして、ウチや姉さんの人助けに、オッケーを出してくれはった。っていう風に聞こえてしまうな。』


「目当てって……

宝くじ的な感覚の先行投資ぐらいにしか考えてないよ。」


「これこれ。パパ……

わたし達以外の他人(ひと)にも、もう少し、興味を持ってあげたら?」


僕のレイヒちゃんへの返答を聞いた嫁が苦笑いしている。



◇◇◇



【空の目】の映像を見ると、

ちらほらと、乗り物がスタックして動けなくなったり、

高山病に罹ったのか、風邪でも引いたのか、森の中に乗り物を突っ込ませて休んでいるように見える人達も居る。


後……徒歩で移動している人達が、

元々、徒歩での移動だったのか、乗り物が壊れたり、スタックして動かせなくなったから徒歩で移動しているのかも気になるところだ。



まぁ……そういう人達を見つけたからといって、通り道で助けを求められた際に余裕がある場合でない限り、こちらから何かしてあげる訳でもないけど……


そして、そんな自分に罪悪感を覚える程、お人好しではないが、可哀想だという気持ちぐらいはある。



特に酷い状況なのは、この森の東側だ。


レイヒちゃんが調べてくれたように、この森の東側でモンスター氾濫が起こる可能性が高い。ってのも頷ける話だ。


森の中では、

沢山のモンスターが人々を襲っているのや、

森から草原に出ている沢山のモンスターを確認する事が出来る。



この世界の蝗害が、何れぐらいのものなのかは分からないが……


こんな状況で、わざと蝗害を引き起こしてやる。と堂々と宣言したタカシュンレイ・コンファンの気がしれないな。



まぁ……彼女は頭が悪そうだったし、

刻々と変わる状況を【空の目】で把握する事も出来ていない筈なので、

自分の言った言葉の重大さを理解してないだけかもしれないけど……


まぁ……所詮は他人事、彼女がどうなろうが、僕達に影響は無いだろうから、これ以上、気にしない事にしよう。


だって逆の立場ならば、

不謹慎だと言って首を刎ねようとして来る事は予想する事が出来ても、助けてくれようとする事は予想する事が出来ないもんね……


だから、まぁ……

お互い様。って話なだけ。


そういう事にしておこう。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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