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ヤドカリ姫は異世界の扉をひっそりと開ける  作者: モパ
【第1章】小さな波紋
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【サイドストーリー】訓練生達

「有難う。


だけど……何故、フミナリ様に、アタシ達にチャンスを与えるように直訴まで為てくれたの?


正直……アタシ達は、あんたに突っかかってばかりいたから……その……」


フミナリ様から事情を聞いた、イココが、 ホンイにお礼を言った後、俺達の疑問点を本人に聞いてくれた。



「そこが良いのです。」


「ひょっとして……」


「ホンイは、ドMじゃねぇ。寧ろ……


まぁ、こいつの出自は特異だ。


具体的に言えば、

こいつは、お貴族様ではないが……下手なお貴族様よりも格上の家の者だ。


そんな中、一方的とはいえ、同世代の一個人としてライバル視されるのが嬉しかったんだとさ。」


珍しく、キヤリキが饒舌に語る。


圧倒的な武力で、大半の訓練場の同期のから、腫れ物に触るように扱われている、こいつも……

真っ向勝負で挑んでくる、イココ団の連中には思うところがあったのだろうな。



「でっ。

当然……引き受けてくれんだろ?」


「えぇ。

ヤドカリ商会は別として……

あんた達に貰ったチャンスを生かして、

あんた達を含めた同世代のエリートどもを纏めてブチ抜いてやるわ。」


ホンミの言葉を聞いたイココが不敵に笑う。



「やっぱ、ヤドカリ商会は別格だ。って思っちゃうよね……」


「えぇ。

悔しさよりも……笑いがでるわ。」


「だよな……

あんなの反則だよな……」


「まぁ……いずれ追いつくけどね。

人間である以上、上限はあるはずだろうから……


だけど……今は、張り合うべきじゃ無い気がする。」


「それ分かるわぁ……

変に焦って、スタイルを崩して、おっ死ぬ程、バカな事はねぇもんな。」


「そうよね……

やっぱ、そうよね……」


「そうだ。

そうでにゃきゃ、世の中、理不尽だ。」


「だよね!」


イココとホンミがガッツリと握手を交わす。


事あるごとにケンカをしていた2人だったが……


共通の目標を見つけて分かり合えたのだろうか。



「なぁ。カンレツ。

錬金術を使った薬の作り方を教えてやる。


その代わり……

錬金術を使った武器や乗り物のメンテナンスを教えてくれないか?」


キュチョロウが、モジモジした顔をしながら、話しかけてくる。


「こちらこそ、お願いしたい。

宜しく頼むな。」


「おう。」


俺はキュチョロウと握手を交わす。



「カンレツ。青春してんな。

男の友達は、どんどん作りな。

けど……女の友達を作ったら殺す。」


ホンミが、笑顔で物騒な発言をしてくる。


「それ分かる。


アタシも……

キュチョロウに女の影なんて見えた日にやぁ……そりゃ……もう……ねぇ……」


ナツムは笑顔ではあるが……殺気がダダ漏れ出ている。



「ホンミと……そういう関係になったのかい?」


「あぁ。」


ヒソヒソ声で話すキュチョロウに短い返答を返す。


「薬の作り方とは別に、

恐彼女家の先輩としてのアドバイスも必要かい?」


「寧ろ、そっちをメインで頼む。」


「了解。」


俺は先程よりも硬い握手をキュチョロウと結ぶ。



「そのアドバイス……俺も受けたいな。」


キヤリキがヒソヒソ声で会話に加わってくる。


「君とは対等な関係でミーティングがしたい。」


「おう。宜しくな。」


キヤリキが笑顔で頷く。



人生の伴侶となるべきホンミが出来て、

親友キヤリキとの距離が縮まり、

新たなキュチョロウまで出来た。



死の恐怖を間近に感じたり、

同世代の化物達に出会い笑えるぐらいの挫折を経験したなど……

俺が想像していたよりも悪い事や、残念な事も沢山、起こったが、それ以上に良い事の方が沢山あった。



そう思えるのは……


ヤドカリ商会の連中が、

地に足を着けたような考え方をしている、普通に良い奴等だった。てのもあるだろうな。



もし、あいつ達が、傲慢で嫌味な奴等だったとしたら……


頭に血が上った俺達は、

同世代のライバル達と手を取り合いながら、ゆっくりと追い着こう。


なんて悠長な事を考えはしなかっただろうからな。



ーーーーーー



『人生とは思ってもいないもの連続だ。』


貧民街の長老が、事あるごとに自嘲気味に話していた言葉だと思っていたが……


どうやら、ネガティブな意味だけではないらしい。



だって、まさか……


いけすかない訓練場の同期だと思っていたホンイ達のお陰で、

Dランクの冒険者のパーティーに認定される為の試験が、こんなにも早く受けられるとは思ってもみなかった。



まぁ……その気持ちの大半が嫉妬や僻みを拗らせたものだという事を理解しているが……それを認めたくなかった。


だけど……それも今日までだ。



『俺達、イココ団は、没落貴族のイココを中心とした貧民街の住人と孤児のパーティー。

ヌクヌクと育ったお貴族様や普通の平民さんとは馴れ合う気は無いし、負ける事は決して許されない。』


俺は……自分の中で、そんな掟を勝手に決めていたが……昨晩、その掟を捨てる事に決めた。



その理由は……


フハコタさんが言い放った、


『【人外地】では、

身分の差。貧富の差。姓差。年齢の違い。経験値の違い。立場の違い。

などの配慮が必要な相手も、考慮してくれる相手も味方のみっす。


だからこそ、味方へのリスペクトは最低限で良いんすよ。


そして……

それ以上の【人内地】のルールを【人外地】まで持ち込む、脳内お花畑のぬるま湯様は、

生き残る為に利用する踏み台と考えるのがベストなんっすよ。』


という、賛否両論を巻き起こすであろう、過激な発言だった。



教官達が言うには、今の、この森の状況は異常らしい。


そのせいで、最低限の安全が担保されていた筈の試験で、ガチで死と隣合わせの状に陥った。


もし、今回の経験がなければ……

フハコタさんの過激な発言を聞いた俺は……どう思ったのだろうか。


今となっては分からんが……

1つだけ言えるのは、心の重荷を降ろせて楽になった。って事だ。



それは、多分……

俺の頼れる仲間達も同じような感じなのだろう。


お互い、確かめ合った訳ではないが……

この直感はハズレている気がしない。



◇◇◇



俺は、そう思いながら頼もしい仲間達を見る。



リーダー 兼 ドライバー 兼 事務で、

【行商人】のジョブ補正を受けいるナカコウ・イココ。


イココ団の副リーダーで、

【魔術師】のジョブ補正を受けているトンタカ。


ドライバー 兼 薬師で、

【薬師】のジョブ補正を受けているキュチョロウ。


撹乱役と索敵役をこなす、

狼系の獣人で【無能者】のナツム。



皆、ホンイ団の連中と、

【騎士】のジョブ補正を受けてるペンアツ・シキカカを除けば、

訓練所の同期達の中では、頭1つ抜けた実力を持つ者ばかりだ。



まぁ、それは……自分で言うのもなんだが、

盾役と攻撃役(アタッカー)を器用にこなす、熊系の獣人で【無能者】の(キンバカ)にも言える事だがな。



だからこそ、俺は……

昨年まで、俺達の訓練所に留学生という立場で在籍し、俺達とは比較的、良好な関係を築いていたと自負していたサンスジ商会の連中が、

俺達と同じく、事あるごとにケンカを吹っ掛けていたホンイ団だけに仕事を振ったと聞いた時は、胸くそが悪い気分になった。



ただ……

今となっては、彼等の気持ちが痛い程分かる。


狭い世界の中で優劣を競い合う事に夢中になってたバリバリの訓練生の俺達を、

見習いではないではなく、一人前の仕事人として仕事を振れる訳がねぇわ。


そして、そのことを一言ひとこと、言って欲しかった。ってのは……甘え過ぎだろうな。


だって、彼等も、俺達の同世代の一員なのだから。



けど、まぁ……

俺達は、なんやかんやでツイている。


卒業ギリギリだったとはいえ、本当の意味で訓練生を卒業する事が出来そうなのだから。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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