【サイドストーリー】お願い事
『直言のご無礼、謹んでお詫びします。
フミナリ様。ホンイでございます。
銀狼貿易商会からギルドへ、
ヤドカリ商会のギルドのランクは、Cランク。もしくは、Bランクの貿易商会が相応しい。という推薦状を書くならば、
我々、ホンイ団やサンスジ商会と共に、運び屋として、オワトボ村へ商品を運んで下さる。という、ご返事を頂きました。』
時刻は17時。
ホンイが、フミナリ様と……
何故か、アタシにまで念話を使って報告をしてきた。
『そうですか。
私とグンフから、貴方の父。ジュウヒ殿へ、
ヤドカリ商会のギルドのランクはBランクの貿易商会が相応しい。という推薦状を書いて貰えるように、お願いするわ。
それにしても……
私への初動の相談から、貴女の機転は素晴らしかったです。
貴女のような傑物が跡取りであれば、銀狼貿易商会は、益々、発展しそうですね。』
『お戯れを。
ヤドカリ商会という、同世代の本物の傑物を目の当たりとした今、そのような社交辞令は皮肉にしか思えません。』
ホンイの自嘲気味に話す声が頭の中に響き渡る。
『皮肉なんてとんでもない。
オワトブ村の岩塩は、我が国(ネギハタ高原国)に無くてはならない物です。
ですから、その……
貴女が危惧するように時間がかかっても、安全に荷を送り届ける為に、迂回路を通るべきですが、その……
こんな状況だからこそ、オワトブ村よりも、この森に近い村々の人々が、避難をしてくる可能性を考慮するであろうオワトブ村としては、
決まっている定期便の荷を定刻通りに届けて欲しいと要望して来たり、定期便の増便を求めて来るでしょう。
迂回路は、曲がりくねった狭い道という事と、オワトブ村までの日程が、通常のルートの倍は必要。という事を除けば、
危険なモンスターや山賊などの目撃情報の無い安全なルートだと言われております。
増便については、ウミシシとかとも詰めなくてはいけませんが、
この森の異常事態のせいで仕事が出来なくなった冒険者と、低ランクの運び屋を雇う。
もしくは軍の新人と退役間近な軍人で組織した輜重部隊に荷を運ばせるなどすれば、対応可能だと私は考えております。
ですので、オワトブ村と我が国の良好な関係を維持する為には、
貴女が危惧したように、私も……
既に決まっている定期便の荷を定刻通りに届ける事で、我々が如何に彼等を重要視しているかを示す事が最重要だと思います。
そして、貴女は、
その課題にいち早く気がついただけでなく、しっかりと報告まで上げてくれたのですから……
私としては、貴女に最大限の讃辞を送るのは当然だと思いますけどね。』
『お褒め頂き、至極挙悦にございます。』
フミナリ様のお言葉に、ホンイは短い返答を返す。
◇◇◇
この娘は、本当に、聡い娘だ。
テチス山脈の村々は、我が国(ネギハタ高原国)とイランツ カバー帝国を結ぶ交易路よりも、途中で枝分かれするキトナガエ帝国の南部との交易路を重視している。
しかし……モンスター氾濫が起きれば、キトナガエ帝国との交易路は使えなくなるだろう。
加えて、イランツカバー帝国との交易は街道の崖崩れのせいで行えない状況らしい。
しかも……あの場所は、今、凍りつく極寒の地の筈だ。
雪解けが完全に終わる夏前までは、作業員の安全を考慮して、このまま使用不可となるだろう。
そして、その他の貿易ルートとなれば、アマズトモエ連邦になるが、
アズマトモエ連邦の北西部の主食は麦でも米でもトウモロコシでもなく……キャッサバ芋だ。
アズマトモエ連邦の南部は米が主食らしいので、時間をかければ、米の輸入は出来るだろうが……早急に米を輸入する事は難しいだろう。
この辺の事を話せば、王家に恩を売れる筈なのに……そこには一切、触れない。
その辺についてを含めての最終判断を、彼女の父であるジョウヒ殿が自由に行えるように、敢えて気がつかないフリをしているのだろう。
『ジュウヒ殿へは、
ヤドカリ商会のギルドのランクはBランクの貿易商会が相応しい。という推薦状を書いて貰えるように、お願いする対価として、
ヤドカリ商会とホンイ団とサンスジ商会が、オワトブ村へ、考えられる限りの最短で穀物や乾燥野菜を納品した場合、
ナヤクラース連邦やパールス帝国などからの穀物の買い付け金額に対する関税を2年に限り、銀狼貿易商会のみ、2割減という内容で話をつけましょうか。』
フミナリ様が苦笑いしながら念話で更なる妥協点を探られる。
『フミナリ様のご配慮、誠に感謝します。
父や母が、どんな判断を下すかは分かりかねますが……
私個人。また、ホンイ団は、
今回のフミナリ様のご配慮を、生涯、忘れない事を、ここに違います。』
『そうですか。
将来有望で有能な貴女達とは、今後とも善き、お付き合いをさせて頂きたいですわね。』
フミナリ様が苦笑いされながら返答をなされる。
やはり、この娘は、本当に、聡い娘だ。
ジョウヒ殿が、フミナリ様のお願いに対して、どのようなご返答を返されようとも、銀狼貿易商会の心証が悪くならないような返答をフミナリ様に返すのだから……
『それは、そうと、
貴女の働きには、別途、ご褒美を上げないといけませんわね。
何か望みはありますか?』
『私は、自身の与えられた仕事をこなす為に、ヤドカリ商会の方々の情報を得ようとしたまででございます。
褒美など……
いえ。あります。
イココ団に、再試験を兼ねて、私達の護衛を続けさせて上げたです。
とはいえ……現時点での彼女達は、足手纏いも良いところです。
ですから、その……彼女達の護衛任務を監督する事が出来る者をギルドから。
人員が足らなければ、砦からも出して頂けるよう、便宜を図って頂けたら有難いです。』
『分かりました。
その願い。必ず、叶えて差し上げますわ。
ですから、この話は、一旦、ここまで。
お互い、生き残る事に専念しましょう。』
フミナリ様が、そう言うと念話を終わられた。
「スナギ。
我が国は、文官や軍人だけでなく、民間人にも……
ちょっと?かなり?まぁ……
腹黒いのが難点なのか、頼もしいかは置いといて、若き有望株が居たようですわね。」
「そうみたいですね。」
アタシは、上機嫌で話す、フミナリ様のお言葉に頷く。
■■■
『こちらネク。
後、30分ぐらいで目的の広場になります。 混雑が予想されていますので……くれぐれもトラブルに巻き込まれないように注意してくださいね。』
ネクの念話が頭の中に響き渡る。
先導役のリーダーとして、
ヤドカリ商会の方々に配慮をしながらも、トラブルを起こさないような釘を刺した当たりは、流石だわ。
『了解した。
予不測の事態が起こらない限りは16時過ぎから再び移動を開始する。
行軍の1時間前には飯を食い始めて、出発までには用を足しておいて欲しい。
宜しく頼むぞ。』
『了解や。』 ・『畏まりました。』×2
ウミシシ様の念話での指示に、
レイヒちゃんと教官のリーダーとクタゴタが念話で返答を返す。
レイヒちゃんは、やはり聡い娘だ。
ネクの配慮に感謝の意を述べる事なく、短い返答だけを返してきた。
◇◇◇
『フミナリよ。
ギルドの教官のゼンゾウとセンメ。それと……
私達の調査団から【武聖】のジョブ補正を受けている、ネギハタ高原国 開発局の護衛のクノヤ・ツネと、
【料理人】のジョブ補正を受けている、ネギハタ高原国軍の司令部所属の料理人のフヤが、
オワトブ村へ同行する事になりましたわ。
そうそう。
フヤは優秀なサポート役だけど……戦闘は期待しないしです。
ですから、イココ団に護衛の任務を断られたら、砦から2~3人、新兵を借りる予定です。
なので、後日でも良いですから、イココ団の返答を教えて下さいな。』
『畏まりました。
格別のご配慮、感謝致します。』
ホンイの嬉しそうな声が頭の中に響き渡る。
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