初商談(後編)
「具体的に、どんな魔銃を、お求めなのですか?」
「取り敢えず、
魔力弾の拳銃を3丁。魔力弾のソードオフ・ショットガンが2丁。アンダーバレルに銃剣が付いた魔力弾のライフルと魔力弾の狙撃銃が各一丁づつ。
が欲しいとこやな。」
レイヒちゃんが、ホンイと名乗る女の子の質問に返答を返す。
「それならば、直ぐに、ご用意する事が出来ますね。
私達が、今回、貿易商人としてギルドの試験を受けるに当たって、実戦に近い形にする為に、トラックに商品を積む事を求められたのですが……
その商品の中に、今、貴女が仰られた商品を積んでいるのです。」
ホンイと名乗る女の子が笑顔で話す。
「さよか。
物々交換は可能か?」
「えぇ。
ですが……その前に質問があります。
皆様は、この後の予定が埋まっておられますか?
もし、予定が埋まってないのであれば、
私達と、ギルドのテチス山脈営業所が運営する村の1つであるオワトブ村へ商品を運ぶ仕事を請け負って欲しいのですが……」
レイヒちゃんの質問に、ホンイと名乗る女の子が上目遣いで答える。
「姉貴。
取り合えず、トラックから、ヤドカリ商会の方々が所望されている品を持って来くるわ。」
ホンミと呼ばれていた女の子が、そう言うと、彼女達のトラックに走り始めた。
◇◇◇
「でっ。商品とは?」
「穀物と乾燥野菜です。
実は私……銀狼貿易商会の商会長の娘で、経営側の末席に座る者なのです。
そして、この試験は、国境にある砦で終了するのです。
でっ。その試験が終了次第、
オワトボ村の村長の娘とギルドのテチス山脈支店の副ギルドマスターの息子が立ち上げた、サンスジ商会と協力して、オワトブ村へ商品を運ぶ仕事が入っているのですが、その……
ただ、この状況ですから、
父や母は、迂回を勧める事でしょう。
とはいえ、この状況ですから、
サンスジ商会は、一刻も早く、オワトブ村に行きたい。と言い出すと思います。
ですから、その……
銀狼貿易商会とサンスジ商会が、ルートを巡って、揉めると思うのです。
そこで、状況が状況だったとはいえ、
ウミシシ様から、グンフ様の調査団の殿を任せらる程、優秀なヤドカリ商会の皆様に護衛として同行して頂ければ、
父や母に最短ルートでオワトブ村を目指すを了承して貰えると思います。
ですので、その……
オワトブ村への護衛を依頼させて頂いたのです。
勿論、依頼料は弾ませて貰います。
ですから……その……
私の依頼を引き受けて貰えないでしょうか?」
レイヒちゃんの質問に、ホンイと名乗る女の子が上目遣いで答える。
「ウミシシさん達の一団で、ウチ達がやってたんは、後方の警戒だけや。
それに、基本、ウチ達は単独行動の商会や。
今は、お金の為に、運び屋の真似事や冒険者の真似事はさせて貰うとるけど……護衛はした事がアラへん。
せやから、期待されはるような事は出来ひんと思うで。」
レイヒちゃんが、嘘を交えつつ、ヤンワリと断りを入れる。
「そうですか……
そう言えば、カーゴトレーラーを持たれてましたよね?
しかも、ウミシシ様から、他国の高貴な出の罪人を運んで欲しいと頼まれるような腕前を持つ、ドライバーさんも居られるのでしょ?
でしたら、その……
運び屋として、ご同行者を願えませんでしょうか?
勿論、依頼料は弾ませて貰いますよ。」
レイヒちゃんの返答を聞いても、ホンイと名乗る女の子は引き下がるつもりは無いようだ。
◇◇◇
「皆……姉……商会長。
ウチ的には、彼女の依頼を達成した後、報酬とは別に、
銀狼貿易商会からギルドへ、
ヤドカリ商会のギルドのランクは、Cランク。もしくは、Bランクの貿易商会が相応しい。ちゅう推薦状を書いてくれはるんやったら、
この依頼を受けても良えんちゃうか?って思うんやけど……
どうやろか。」
レイヒちゃんが、悩んだ顔をしながら、僕達に話を振ってくる。
「そう。
パパとナシアタ君は、どう思う?」
嫁が自分の意見を言わずに、さり気なく、僕とナシアタ君にも意見を求めてくる。
「その辺りの判断は、商会長や秘書であるレイヒや、オーナーであるエンクルさんが判断する事です。
従業員である、俺が口を出すのは……あくまでも実務の話のみですよ。」
ナシアタ君は従業員。という設定を盾に上手く逃げた。
「依頼料を弾んでくれる理由を知りたいな。
それと……サンスジ商会のメンバーの詳細も知りたいかな。」
「サンスジ商会のメンバーは、
オワトボ村の村長の娘でドワーフのモクドウ・スジミと、
ギルドのテチス山脈支店の副ギルドマスターの息子でエルフのキンニチ・サンエモン。
【使役師】のジョブ補正を受けている人族と犬系の獣人のミックスのマイヨとカゾウの兄妹。
マイヨとカゾウが使役する雷豹と呼ばれる、シルバーウルフと同格の上位モンスターのアラレゾウとオカキコ。
年齢は、私達と同年代になりますね。」
ホンイと名乗る女の子が、サンスジ商会のメンバーの情報をくれる。
「でっ。依頼料を弾ませて貰うと言いましたのは、その……
この状況ですから、その……
ギルドは、ミンボン山脈の樹海の周辺にある街道等の交通が制限されるようになると予想されます。
具体的に言えば、
Cランク。下手したらBランク相当以下の運び屋や、貿易商会や行商人などは、
Cランク。下手したらBランク相当の冒険者のパーティーや傭兵団の分隊(12名前後)の護衛を受けないと通行の許可が下りないようになると、私は予想しております。
でっ。もし、私の予想が当たった場合、その……
交通制限を受けないレベルの運び屋や貿易商人。行商人や護衛等の価値は高騰すると考えております。
何故ならば、ミンボン山脈の樹海の周辺にある街道等の交通が制限される事で、近隣の町や村に住む人々は、先行きの不安を感じ、商品の発注数量を増やす筈です。
それに対して、供給が可能な数量は……
ミンボン山脈の樹海の周辺にある街道等の交通が制限される前よりも半減する。
つまり、需要に対して供給が全く追い付かなくなり、
それでも商品を求める人達が、まるでオークションが開かれているかのようなマネーゲームを引き起こすからです。
でっ。そうなれば……
何のしがらみもない貴女達は、より自分を高く買ってくれる仕事に乗り換えられると思います。
ですから、その……
そういう事をされない為に、依頼料を弾ませて貰おうと考えている次第であります。」
ホンイと名乗る女の子が真剣な顔で話す。
「ならば……
レイヒの言う条件にプラスして、
銀狼貿易商会がギルドに推薦してくれるランクの運び屋の適正価格でならば仕事を引き受けても良いと思う。
ナブサモちゃん。レイヒちゃん。ナシアタ君も、それで良い?」
「うん。」・「おう。」・「はい。」
嫁達が、僕の言葉に頷いてくれる。
◇◇◇
「あの……
私達にとっては、適正価格で仕事を引き受けて貰えるのは、凄く有難いのですが、その……
何故、適正価格で。っていう条件を付け足されたのですか?」
ホンイと名乗る女の子が真剣な顔で聞いてくる。
「僕達は見聞を広げる為に、暫くの間は、拠点を持たずに諸国漫遊の旅をするつもりだ。
その為には……お金も大事ですが、それ以上に信頼が大事なんだ。
だから、その……
君が言うような状況になっても、君が心配するような事はしないよ。
何故ならば、泡銭よりも、
割りの良い条件の仕事に鞍替えせずに、先に依頼を受けた安い仕事をキッチリと完遂させた誠実な商会。という実績の方が、
僕達にとっては価値があるからね。」
「成る程。
実は、今回の件、移動中に念話で、フミナリ様に相談したところ、貴女達を推薦されたのです。
そこで、朝にキヤリキやカンレツを差し向けてたり、私とホンミで貴女達の元を訪れさせて貰ったりしたのですが……
想像以上に良い出会いだったみたいですわね。」
ホンイと名乗る女の子が目を丸くしながら、僕を見ている。
◇◇◇
「ホンイ。
ホンミから聞いた品を持って来たぞ。
商談は纏まったか?」
カンレツと名乗っていた男の子が、
折り畳み式のリヤカーに、レイヒちゃんが言っていた魔銃を入れた木箱を載せながらやって来た。
「えぇ。最高の商談が出来たわ。
だから、それ……サンプルとして無償で提供するわ。」
「ドケチのホンイが……了解。
ヤドカリ商会の皆さん。ご確認、お願いします。」
カンレツと名乗っていた男の子が、一瞬、驚いた顔をした後、笑顔で僕達の方を見る。
念の為に、木箱に乗っている武器を確認したが、品質に問題は無いようだ。
「これは、その……
賄賂ではなく、先行投資。ってやつです。
快く受け取って頂ければ嬉しいです。」
「おおきに。
鑑定させて貰ったら品質に問題もあらへんかったし、遠慮なく貰うわ。」
「こちらこそ、有り難うございます。」
レイヒちゃんの返答を聞いたホンイと名乗る女の子が、何故かは分からないが、僕達に頭を下げてきた。
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