傲慢と無知(前編)
『ネギハタ高原国の第2王女。キテ・グンミと申します。
救援を求める旗を振られている、貴方達はキトナガエ帝国軍ミンボンの大湖の守備隊の方々とお見受けしますが……
具体的に、どんな支援をお求めですか?
我々に出来る支援ならば、支援を行うか考えさせて頂きますわ。』
グンミちゃんの穏やかに話す声が頭の中に響き渡る。
『はぁ?
何故、問いかけるのが貴女なの?
その隊のリーダーはグンフ殿下じゃなくて?
しかも「我々に出来る支援ならば、支援を行うか考えさせて頂きますわ。」って何?
我々が何者か分かったてるのならば、出来ない支援をどうすれば出来るかを考えるのが貴女達の役目じゃなくて?』
苛立つように話す女の人の声が頭の中に響き渡る。
『私はネギハタ高原国の第1王子キテ・グンフの妻のキテ・フミナリ。
カクコシ連合国のタカシュンレイ・コンファン殿とお見受けする。
何故、貴女がキトナガエ帝国軍ミンボンの大湖の守備隊の方々と、ご一緒しているのかについては言及しませんが……
私の義妹。グンミへの不敬については、後日、ギルドを通じて、広く世間に知らしめる形で抗議をさせて貰いますわ。』
『はぁ……妹の次は妻かよ。
私はキトナガエ帝国軍ミンボンの大湖の守備隊を監督する立場にあるキトナガエ帝国の西都の領主の息子 オビ・ハリトブの婚約者。
だから、貴方達は、私に最上の礼を持って接するのが筋じゃなくて?』
苛立つように話す女の人の声が頭の中に響き渡る。
『キテ・グンミの婿のキテ・ウミシシだ。
貴国(カクコシ連合国)と違い、我がネギハタ高原国はキトナガエ帝国の属国でははない。
その証拠に、貴国(カクコシ連合国)が3つの小国の連合体といえども、
その小国の1つの王族であらせられる貴女が、キトナガエ帝国の西方を統べているだけの伯爵家であるオビ家に嫁ぎ、
キトナガエ帝国の北部を統べるボツオオ侯爵家の出である俺はネギハタ高原国に婿入りをした。
何が言いたいかと言えば……
他国とはいえ王族である我々が、そちらへ敬意を払うよう注意をする事があれど、
そちらから、我々に敬意を払えと言われる筋合いはない。
先程、義姉であるフミナリも申したが、
後日、我が妻。グンミへの不敬について、ギルドを通じて、広く世間に知らしめる形で抗議をさせて貰うぞ。』
『はぁ?
あんた達、気は確か?
ミンボンの大湖の小島は、そこに建立された祠以外は、実質、オビ家の領地。
つまり……
ミンボンの大湖の小島に居る、雑食道造り飛蝗喰い鳥を、オビ家の領地であるキトナガエ帝国の西都や、その周辺の村々に連れて行っても問題無い。
でっ。そうなれば……どうなると思う。
この地域を納めるキトナガエ帝国と、あまり上手くいっていないネギハタ高原国において、
キテ・ウミシシ。お前の実家のボツオオ侯爵家や、
キテ・フミナリ。お前の実家のフトバル公爵家。
マゴクレ辺境伯家やパイアガタ伯爵家といった、
ネギハタ高原国がキトナガエ帝国の経済圏と繋がれている全てのパイプが壊滅的な被害を被る事になるんだよ。
それをされるのが嫌ならば……
今すぐ、ギルドを通じて、広く世間に知らしめる形で抗議を取り下げると宣言した上で、
乗り物から降り、私に土下座しろ。』
苛立つように話す女の人の声が頭の中に響き渡る。
◇◇◇
『『拘束』。
タカシュンレイ・コンファン。
「雑食道造り飛蝗喰い鳥を、オビ家の領地であるキトナガエ帝国の西都や、その周辺の村々に連れて行っても問題無い。」
流石に、この発言は、オビ・ハリトブの婚約者様と言えども看過する事は出来ません。
私はキトナガエ帝国軍ミンボンの大湖の守備隊の第2伝令部隊の隊長のクタゴダと申します。
今回の騒動の原因は、何者かがミンボンの大湖の小島に侵入した事で、
ニンムシュ様の懐刀のアタルハナ様が張られた、ミンボンの大湖の小島を覆う結界の強度を上げる為に、湖を覆う結界が切られた事で、
ミンボンの大湖から発生する瘴気を吸収し、浄化する力を持つ土で出来ているミンボンの大湖の小島で瘴気が吸収されず、今までとは比べ物にならない量の瘴気が、この森に流れ始めたからです。
オビ・ハリトブ様は、この事を、
キトナガエ帝国の西都に居られるオビ伯爵様だけでなく、ネギハタ高原国・ミンボン連邦・ベシアセ連邦・ツクソノ山脈連邦・ギルドが納めるテチス山脈の一番、近くの村ヘも、早急に、お伝えする事を決定され、
我々、ネギハタ高原国へ伝令を出された、第2伝令部隊が、様々な可能性を考慮して、一番、安全だと思われる貴国(ネギハタ高原国)に、第6補給部隊に賄賂を握らせて、勝手にオビ・ハリトブ様の仕事場へ押し掛けて来られたタカシュンレイ・コンファンを安全圏に避難させる為の任も受けました。
それが、我々が、タカシュンレイ・コンファンと行動を共にしていた理由でございます。
結界の強度が上がったミンボンの大湖の小島へも立ち入る事を許可された者の証となる特別な札を持つ、オビ・ハリトブ様は、
彼の私兵と共に、今も我が隊(キトナガエ帝国軍ミンボンの大湖の守備隊)の本体と協力しながら、
この騒動のせいで、餌を求めてミンボンの大湖の小島から離れようとした雑食道造り飛蝗喰い鳥が、強度が上がった結界のせいで阻まれて怪我をしたり、
餌を取りに行けずに餓死しないよう、今も最善を尽くされておられる筈です。
ですから、その……
タカシュンレイ・コンファンから、皆様への数々のご無礼な発言や、有り得ない問題発言は、彼女の個人的な発言であります。
とはいえ……
勿論、皆様には関係の無い話だと言う事は重々、理解しております。
ですが……平民の下士官である私には、皆様への数々のご無礼な発言を止める権利が無かった事をご理解して頂きたいと切に願う次第でございます。
ただ、流石に、タカシュンレイ・コンファンの有り得ない問題発言については、平民の下士官である私でさえ、看過する事が出来ないと考えました。
故に、たとえ、国(キトナガエ帝国)から処刑される事になろうとも、私は、私の正義に乗っ取って、この救いようの無い馬鹿を、引き渡す事に決めさせて頂いたのです。
また、本来ならば、我々も貴国(ネギハタ高原国)へ罪人の一味として赴くべきところではございますが、我々のトラックは壊れてしまっております。
故に、タカシュンレイ・コンファンの身柄と、オビ・ハリトブ様が貴国(ネギハタ高原国)へ宛てた手紙をお渡させて頂きますので、
ここで、皆様に処刑をして頂く事で罪を償わせて頂ければ有難いと考えておる次第でございます。』
『ド平民の下士官風情が、なに、私を拘束した上で、ペラペラと屁理屈を捏ねてるんだ!
あぁ。分かった。分かった。
ミンボンの大湖の小島へ侵入したのはグンフ。お前達だろ?
そして、グンフ達が、ミンボンの大湖の小島へ侵入する事が出来るように手引きしたのが、クタゴダ。お前だろ?
でっ。その事がバレないように屁理屈を捏ねて私を犯罪者に仕立て上げる事で、その疑惑の目を逸らそうとしている。
だけど……残念ね。
私が行方知れずになれば……オビ家は私を探さざる得ない。
だから、たとえ、ここで私を亡き者にしようとも……お前達は、その罪から逃れる事など出来ない。
とはいえ、まぁ……
私は、こんなところで死んで良い人間ではない。
お前達が、私に詫びを入れた上で、お前達の言う私の失言とやらを忘れ、
私を国賓としてネギハタ高原国まで送り届けるというのであれば……
お前達の罪を黙っていてやっても良いわよ。』
女の人の声が頭の中に響き渡る。
『我が国(ネギハタ高原国)の全ての国境を守る砦の中には【審議判定の魔道具】が設置されております。
その【審議判定の魔道具】を起動させ、
キトナガエ帝国軍ミンボンの大湖の守備隊の第2伝令部隊の隊長のクタゴダ殿に「湖に張られた結界を破って小島に侵入したのか?」という質問をして貰い、
その問に答える事で、
我々がミンボンの大湖の小島へ侵入したか否かについて、即座に判明します。
そして、我々が、キトナガエ帝国軍ミンボンの大湖の守備隊の第2伝令部隊の隊長のクタゴダ殿に「湖に張られた結界を破って小島に侵入をしようとした者の手引きをしたのか?」という質問をすれば、彼等が白か黒かも即座に判明します。
少なくとも、私には湖に張られた結界を破って小島に侵入をした覚えはありません。
もし、私以外の者や、キトナガエ帝国軍ミンボンの大湖の守備隊の第2伝令部隊の隊長のクタゴダ殿達の中に、貴女が言うような者が居ましたら、国賓として我が国(ネギハタ高原国)へ迎え入れましょう。
ですが……今の発言が正しくなかった場合……
それ相応のお覚悟は出来ておりますわよね?』
フミナリさんのドスの効いた声が頭の中に響き渡る。
『はぁ?
ニンムシュ様に好かれているオビ家やタカシュンレイ家の権力を、
グンヨ以外、ニンムシュ様から嫌われているキテ家と同列に扱わないでくれない?
たとえ【審議判定の魔道具】でお前達の潔白が証明されたとしてもだ、
ギルドがオビ家やタカシュンレイ家にとって不都合な事を公開する訳がないでしょうが。』
『フフフフフ。
無知とは……恐ろしいものですわね。』
グンミちゃんの大笑いしながら話す声が頭の中に鳴り響く。
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