対策案と穏やかな時間
『改まって、どないしはったんや?』
レイヒちゃんの心配そうな声が携帯電話から聞こえてくる。
「ニンムシュ達をより欺く為に、
ナブサモには妾と義姉妹の契りを交わして貰い、
ナシアタはワンゾウを、レイヒにはシャーコを使い魔にして欲しい。
その上で、妾が皆と行動を共にしておるのは、義姉妹のナブサモについて来ておるだけであって、ヤドカリ商会のメンバーには入れないで欲しい。」
「別に良いけど……
そうして欲しい理由は?」
嫁は、穏やかな口調でムンナちゃんに質問をする。
「エンクルに預けた勾玉は、妾が1人で盗み出した。
じゃから……
妾をヤドカリ商会のメンバーに加えねば、
たとえ嘘が見抜ける、レイヒのような特異点のアサグに、エンクルに預けた勾玉の盗みに関わっていないか?と聞かれて、
ヤドカリ商会のメンバーは関わっておらぬと言っても嘘をつかれたと認識が出来ないのじゃ。
じゃが……
それじゃと、ヤドカリ商会のメンバーと妾が行動を共にしておるのが不自然になる。
その不自然さを消す為に、妾と1番、一緒に居るであろうナブサモに義姉になって貰おうと考えたのじゃ。
因みに、ワンゾウをナシアタに預けようと考えたのは、
【人外地】で働く【無能者】の多くが、魔法や魔術を使えないハンディを従魔で補っておるからじゃ。
そして、レイヒにシャーコを預けようと考えたのは、レイヒにも妾との繋がりを持たせたかったからじゃ。」
ムンナちゃんが真剣な顔で話す。
『内容的には問題あらへん思う。
せやけど……恐縮しはるんはちゃう思うで。
ウチ達は、ウチ達の意志で、この世界を開く。って決めたんや。
ニンムシュ達を欺く為の建前上の立場を抜きにしたら、ワンゾウやシャーコを含めて、ウチ達、全員、対等な関係や。』
「そうそう。
何でも自分で背負おう。っていう心掛けは素敵だけど……
わたし達の間で、そういうのは無しよ。」
レイヒちゃんの言葉を嫁が繋ぐ。
「有り難う。」
ムンナちゃんは、目に涙を浮かべながら、満面の笑みを浮かべていた。
■■■
『こちらスナギ。
休憩をする予定の広場が見えて来たわ。』
スナギさんの念話が頭の中に響き渡る。
携帯電話を見ると、8時と表示されていた。
『了解した。
予定通り、不測の事態が起こらない限りは、
飯を14時から食い、15時過ぎから再び移動を開始する。』
『了解や。』
ウミシシさんの念話での指示に、レイヒちゃんが念話で返答を返してくれる。
◇◇◇
「今日はハンバーガーとポテトとコーンスープとフライドチキンにしよ。」
「フライドチキン。良いわねぇ。
それじゃあ、わたしは、スパゲッティーとサラダとフライドチキンと、飲み物はビールにしよ。」
レイヒちゃんと嫁が嬉しそうに話す。
時刻は8時5分。
僕達はキャンピングカーのダイネットニュース集まって、休憩中している。
「俺は寿司と味噌汁だな。
脂っこい物の気分じゃねぇ。」
ナシアタ君もお腹を空かしていたようだ。
「皆、サクサクと決めるのう……」
「お酒以外は、皆のをちょっとずつ取り分けてあげよう。
そしたら、そのうち、自分の好きな物が見つかると思うわよ。
でっ。パパは何を食べるの?」
嫁は困った顔をしているムンナちゃんにフォローを入れた後、僕に質問をしてくる。
「カレーライスとコンソメスープにする。」
僕は嫁の質問に笑顔で答える。
僕達が、この世界の食べ物を知らないように、
ムンナちゃんは、僕達の世界の食べ物を知らない。
だから、暫くは、色んな料理をシェアしてあげた方が良いだろう。
「マルチルームに異空間ハウスの扉を展開したから、各々、お家から食べたい物を取りに行ってね。
ナシアタ君は、ワンゾウとシャーコのご飯も忘れずに取って来てね。
後、ムンナちゃん。
異空間ハウスの中の、わたしの家の中に、もう1つ、異空間ハウスを展開したから、2つの異空間ハウスの外にワームホールを繋げるかの確認を宜しくね。」
「了解。」×5
僕達は、嫁の指示に頷いた。
■■■
「おやすみ。」
「おやすみ。」
僕の言葉にナシアタ君が欠伸をしながら返答を返してくれる。
時刻は8時40分。
僕とナシタア君はダイネットをベッドモードにした場所に寝て、
嫁・レヒイちゃん・ムンナちゃんがバンクベッドで寝る事にした。
単純に男女で分けただけだが……
運転席に一番、近い場所でナシアタ君が寝るのは、不測の事態に落ちいた時の対応を考えると非常に効率的な配置になったな。
「グォォォォー。 グォォォォー。」
ナシアタ君がイビキをかきはじめた。
僕も眠いが……
運動不足を解消を兼ねて、広場の周りを軽く捜索してくれているワンゾウをマルチルームに迎え入れてあげないといけないので、もう暫くは眠れない。
ムンナちゃんは、嫁が展開した異空間ハウスの中に展開した、もう1つの異空間ハウスの中からでも、ワームホールを2つの異空間ハウスの外に繋ぐ事が出来たらしい。
なので、さしあたってやる事はなくなった。
だから、携帯電話に入れているダウンロード済みのゲームでもして時間を潰すとしよう。
睡眠不足については、キャンピングカーが走り出してから寝れば問題無い。
■■■
『戻ったぞ。』
ワンゾウの声が頭の中に響き渡る。
携帯電話を見ると10時と表示されていた。
暖かい布団から出るのは辛いが……そうも言ってられない。
念話が使えないので返答が出来ないのが地味に辛い。
そんでもって、ワンゾウが戻って来たのが、僕がトイレに入ってる時じゃなくて本当に良かった。
てっ……そんな事を考えている場合じゃないな。
一秒でも早く、ワンゾウを外よりかは暖かいキャンピングカーの中に入れてあげないといけないのだ。
「もしかして、 ワンゾウが戻って来たの?」
バンクベッドの上から嫁が小声で話しかけてくる。
「うん。」
「じゃあ、わたしも行く。」
嫁がヒソヒソ声で、そう言うと、バンクベッドに設置された小さな梯子を伝って降りてきた。
嫁は、バンクベッドの一番、降り口の近い場所に寝ていたので、ムンナちゃんやレイヒちゃんを起こすことはないだろう。
【ガチャ】・【ガチャ】
僕と嫁は、大きな音が出ないように細心の注意を払いながら、ダイネットとマルチルームを繋ぐ扉を開く。
【ガチャ】・【ガチャ】
そして、僕と嫁は、マルチルームと外とを繋ぐ扉をソッと開き、ワンゾウをキャンピングカーの中に迎え入れた。
「お帰り。」×2
「ただいま戻った。」
僕と嫁に出迎えられたワンゾウはキャンピングカーの中に入ってくる。
相変わらず、雪は……止みそうになさそうだな。
◇◇◇
「動物に服を着せるのは変だと思ってたけど……
レインコートを着せてたら、後処理がすごく楽だわ。
これも、皆さんが動物に服を着せていた理由なのかもしれないわね。」
嫁が、そう言いながら、バスタオルでワンゾウの顔と、4本の足の先を丁寧に拭いている。
ペット用のレインコートを脱がすと、ワンゾウは足の先や顔などの露出している部分以外は、殆ど濡れてなかった。
まぁ……雪と違って雨ならば、ここまで上手くいかなかったかもしれないが、
嫁に、今はトイレだけを展開している異空間ハウスを、ワンゾウを拭いたり、ドライヤーを当てるスペースを確保して貰う為に広げて貰おうと思っていたが、
どうやら杞憂に終わったようだ。
「でっ。何か問題はありそうだった?」
「差し迫っては無さそうじゃが……
あまりにもモンスターや動物が居なさ過ぎる。
この辺りのモンスターや動物達が何処へ移動したのかまでは、雪のせいもあって分からんかったが……
この辺りに居たモンスターや動物達が移動した先で、モンスターや動物達が増えすぎた事が原因で、モンスター氾濫が起こるやもしれぬな。」
この辺りを見回ってくれていたワンゾウが、
淡々とした口調で、不穏な感想を話してくれた。
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