【サイドストーリー】脱走者達が描く未来
『君達も、僕達と同じで、
ズクダニ(ネギハタ高原国 第2近衛連隊の第20中隊の隊長)達を見限って逃げ出したんだろ?
第2近衛連隊の第20中隊がああなった以上、
グンヨ殿下(ネギハタ高原国の第3王女)や、第2近衛連隊のトップの連中達は、自分達の関与を隠す為に、僕達を消そうとする筈だ。
だから、国(ネギハタ高原国)には戻らない方が良いと思う。
てか……少なくとも、僕とメヨユは国(ネギハタ高原国)に戻るつもりはない。
そうそう。
今のところ、積極的に害を働いてくる気配はなさそうに見えるが、グンフ殿下達の庇護下に入るのも難しいだろうな。
君達も、それを分かってるから、敢えて救難を求める信号弾を上げてないんだろ?
もし、君達も、国(ネギハタ高原国)に戻るつもりがないのであれば、
僕達にとっての安全圏に着くまでの間だけでも一緒に行動しないかい?
勿論、これは貴族から平民への指示ではない。
何故なら、僕は……
マキジコ家の家名を捨て、メヨユと共に平民として生きるからだ。』
レコマ様の声が頭の中に響き渡る。
『我々にメリットとはありますか?』
『僕が優れた【錬金術師】だという事も、それなりに荒事も出来るという事も、今回の行軍で君達に示したつもりだと自負している。
武器や乗り物のメンテナンスが出来る者が同伴するのは心強いと思うぞ。
それに、連れのメヨユは【無能者】ではあるが、荒事も苦にしない一流の戦闘メイドだ。
暫くは、中々、宿に泊まれるないであろう君達に対して、炊事や服や身体を綺麗にする【洗浄の魔術】を使ったサポートが出来るだけでなく、
いざって時は回復役のトリースのお守りも出来る。
これらが、君達が僕とメヨユを仲間に加えるメリットだと思うけど……どうだろうか?』
俺の無礼な質問に対して、
レコマ様が穏やかな声で、ご返答をして下さる。
『レコマ様やメヨユ様は、スーやクーリに対しても差別的な言動をなされないお方だ。
それに、レコマ様が仰られた、ご提案の内容は申し分ない。
だから、共同戦線を張らせて頂いても問題無いと思うわ。』
『賛成。』
姉さん(トリース)の言葉にクーリが頷く。
『ペニーが問題無いと判断するならば、俺は、お2人を仲間として受け入れる。』
『レコマ様。メヨユ様。
期間は未定ですが、共同戦線を張るご提案を受け入れさせて頂きます。
それと……
お2人のご意見も、勿論、お聞かせ頂きたいですが、
最終的な決断は、俺に任せて貰いたいのですが、宜しいでしょうか?』
スーの義兄貴の話も聞いた俺は腹を括る事にした。
お貴族様という点を除けば、
レコマ様もメヨユ様も、お人柄も能力も仲間として迎えさせて頂く上で文句の1つもない。
『承知した。
僕とメヨユを仲間に加えてくれて有り難う。
ただ、僕達への様付けの敬称は止めて欲しい。
僕もメヨユも平民の夫婦として生きていくのだから。』
『分かったわ。宜しくね。』
レコマ様の話を聞いた姉さん(トリース)がタメ口で返答を返す。
向こうが望まれておられる事とはいえ……
肝が据わりすぎだろ。
■■■
「こんな事を言うとスーやクーリに申し訳ないが……
身体が剥き出しのクアッドでの移動とは寒さが全く違う。
僕だけでなく、メヨユも、かなりキツそうだった。
君達に仲間として迎えて貰えて助かったよ。」
トラックの助手席に座って頂いた、レコマ様が、そう言いながら頭を下げて来られる。
「兎系の獣人は人族よりも寒さに強い種族です。
それに……装備もしっかりしてますから、
レコマさま……んが、気に病まれる事はないですよ。
けど、レコマさんが仲間に加わってくれて助かりました。
流石に、今晩は、走行風を真正面から受け続けるクアッドで、クーリに先導して貰うのは控えたいところでしたからね。
ある程度、道が荒れていても、錬金術で整地が出来き、木々の伐採も出来る、レコマさんの存在は大きいです。」
「そう言って貰えると、押し掛けた者としてはホッとするよ。」
レコマ様が嬉しそうな顔をしながら、俺を見られている。
◇◇◇
俺達は荷台が、
先頭に近いのは約2メートルのダイネット。
その後ろは約5メートルの荷室。
そして、最後尾は80センチメートルの高さのアオリで後ろと左右が囲われただけの約1.5メートルのフリースペース。
という内容で3分割されている、約10メートルの巨大なシングルキャブのトラックに全員で乗り込んで移動する事にした。
運転手は【物情を繋ぐ者】のジョブ補正を受けている俺。
助手席に【錬金術師】のジョブ補正を受けているレコマ様が座る。
3分割されている荷台の中で一番、先頭に近い約2メートルのダイネットには、
姉さん(トリース)とメヨユ様。それと俺の従魔の魔猫のタゾウと、姉さん(トリース)の従魔の魔猫のマコマコが居る。
運転席とダイネットやダイネットと荷室を繋ぐ小さな小窓を行き来する事が出来る、タゾウとマコマコには、ダイネットと荷室をメインに警備するようにお願いした。
そして、最後尾のフリースペースに居る、
俺の嫁で兎系の獣人で【無能者】のクーリと、
ドライブボックスに乗った彼女の従魔の魔狼のポコと、
姉さん(トリース)の旦那で、クーリの実兄でもある兎系の獣人で【無能者】のスーの義兄貴と、
ドライブボックスに乗った彼の従魔の魔狼のチエモンは、
後方の警戒と荷室の番をしてくれている。
【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】
【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】
【ゴロゴロゴロ】・【ピカッ】・【ズドォォーン】
【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】
【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】
【ゴロゴロゴロ】・【ピカッ】・【ズドォォーン】
【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】
【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】
【ゴロゴロゴロ】・【ピカッ】・【ズドォォーン】
雪が降り始め、風も強くなり、雷まで鳴り始めた。
そのうち、昨晩のような吹雪になるのだろうか……
『このまま、ウミシシ様達の後ろを行けば、俺達の生存が丸わかりになる。
だから、俺達はウミシシ様達が選択しなかった【ギルドの作業道】の旧道のほうを行く。
この【ギルドの作業道】の新道よりも道幅が広くなる為、吹雪の影響をより強く受ける事になる。
スーの義兄貴。クーリ。
一旦、トラックを止める。
そしたら、ポコとチエモンのドライブボックスを横に倒し、出入口となる部分をテント生地の布で覆った巣モードにし、
その後、2人は周りを鉄で覆われている荷室の最後尾に設けている緊急避難用のスペースに移ってくれ。』
『了解。』×2
スーの義兄貴とクーリが短い返答を返してくれる。
■■■
時刻は0時。
俺が予想していた以上の猛吹雪となった。
1時間前に、
ポコとチエモンのドライブボックスを巣モードにして貰ったり、
スーの義兄貴とクーリに、周りを鉄で覆われている荷室の最後尾に設けている緊急避難用に空けているスペースに避難して貰っておいて正解だったようだ。
流石に、吹雪が吹き荒れている極寒の寒空の中、
火も焚かずに、吹きっさらしの屋外でジッとしているのは自殺行為だからな。
「幽霊が活発化する、この時間にトラックを止めるのは危険だ。
事前にスーとクーリを荷室の中に避難させ、ポコとチエモンにも吹雪の中の行軍に耐えられるような対策を施しておく。という君の判断は正しかったようだね。」
「お褒め頂き、有難うございます。」
俺の判断を褒めてくれたレコマ様に、俺は短い返答を返す。
◇◇◇
「運転中に申し訳ないのだが、少しだけ質問をさせて貰うぞ。
君達、トリース団は、グンヨ殿下からかけられた冤罪の罪に対しての恩赦を受けた後、
ネギタハ高原国政府へ国籍の再取得の申請を上げず、ギルドの登録の復活の申請もしなかったんだったよね?
つまり、君達は、何処の国にも組織にも所属しない者達だ。
それは、つまり、
今後、ネギタハ高原国政府が、今回のグンヨ殿下達暴走の罪を問おうとしたとしても、
ネギハタ高原国政府は、君達の足取りを追う為の資料的な物を揃えられない事になる。
もしかして、君達は……
こうなる事を予見して、
敢えて、ネギタハ高原国政府へ国籍の再取得の申請を上げず、ギルドの登録の復活の申請もしなかったんだったのかい?」
レコマ様が、ヒソヒソ声で質問をしてくる。
「えぇ。
グンヨ殿下達には……一度、酷い目に遭わされてますからね。」
「成る程ね。
賢い選択をしたもんだね。」
レコマ様が、そう言いながら、目を細められる。
「そうそう。
【祈祷師】のジョブ補正には、ジョブ補正の接続を外したり、
名前の登録情報を勝手に変える事は出来ませんが、貴族様が名とは別に登録されている姓の情報ならば外す事は出来るらしいんです。
まぁ、平民の俺達には関係がありませんが……
【祈祷師】のジョブ補正を受けてる、姉が、貴族であらせられる、レコマさんとメヨユさんの登録情報から姓を外せば、
お2人も何処の国にも組織にも所属しない者達の仲間入りを果たせますよ。
朝になって、状況が落ち着き次第、
お2人の姓の登録情報を姉に言って外させましょうか?」
「そう言えば、トリースも【祈祷師】のジョブ補正を受けていたんだったな。
後日、裏社会の連中に、
僕とメヨユの登録情報から、姓の情報を外して貰うよう頼むつもりだったんだが……
仲間である、トリースにやって貰ったほうが、後々の事を考えても安心だ。
是非とも宜しく頼む。」
「了解しました。」
俺は、嬉しそうな顔をされながら話させるレコマ様へ短い返答を返した。
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