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ヤドカリ姫は異世界の扉をひっそりと開ける  作者: モパ
【第1章】小さな波紋
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【本編&サイドストーリー】明暗(前編)

先頭を走るのはハウシさんとネクさんが操る2台のクアッド。



その後ろをコロツラさんが運転する、全長が約9メートルの巨大なダブルキャブのトラックが続く。


助手席に座るグンフさんと、2列目に座るグンミちゃんがサポートに入り、

同じく2列目に座る、ツネさんとフヤちゃんは、朝~昼の仕事に備えて座ったまま仮眠を取っているらしい。



その後ろを、スナギさんが運転するダブルキャブのピックアップトラックが続く。


フミナリさんとウミシシさんが、助手席と2列目に座り、周囲の警戒を行ってくれいているらしい。



そして、最後が僕達の乗るキャンピングカーが続く。


因みに、空のカーゴトレーラーは、邪魔だろうというハウシさんのアドバイスを受けて、

レイヒちゃんが、彼女のお母さんが調味料とか詰め替えていたというオシャレな小瓶に封印してくれた。


それを見たナシアタ君は、運転が楽になると大喜びしていた。


って‥…意識が脱線し始めたな。



僕達は、極寒の地の漆黒の闇夜の中を、

車やクアッドのヘッドライトや、車に取り付けられたライトバー等の灯りを頼りに移動し続けている。


今のところ、大きなトラブルは無い。


このまま、無事に朝を迎えたいものだ。



■■■



『こちらハウシ。

一旦、止まるよ。』


時刻は21時。


ハウシさんの声が頭の中に響き渡るのと同時に、

キャンピングカーのスピードがゆっくりと落ち始めた。



『この先にある、沢山の幽霊が住み着いている隧道トンネルから、

何故かは分からんが、幽霊達が、その住み着いている隧道トンネルから外に飛び出して来ている。


さりとて、索敵魔法では幽霊隧道トンネルの中も、その先にも、彼等を追い立てるような存在は見当たらない。


因みに、ネクも同じ見解だ。



どうする?突っ込むかい?


それとも……


ダメ元で獣道を迂回するかい?』


ハウシさんの困惑したような声が頭の中に響き渡る。



『私には幽霊達が、何かに怯えているように感じますわね。


ですが、その……

前にも、後ろにも、横にも、彼等を脅かすような強い力を持った者の存在を感じませんわね。



けど、まぁ……

それは、さておき、獣道の調査はしていませんわよね?


最悪、獣道で立ち往生。もしくは戻らざる得ない状況に陥り、

尚且つ、後方から、幽霊達が警戒している何かが追って来て場合……


私達は、詰んでしまいますわ。



だったら、まだ、幽霊隧道トンネルを、素早く通り抜けようとするほうが最良の手だと思いますわね。』


グンミちゃんの声が頭の中に響き渡る。



『ヤドカリ商会の連中は思ってたよりも動ける。


それに……このまま気温が下がり続ければ、クアッドでの先導は厳しいだろう。



だから、今の内に、2台のクアッドを小瓶か何かに封印し、

先導は俺達のピックアップトラックが行い、

その後ろを俺達のトラックが続き、

殿しんがりは、引き続きヤドカリ商会に任せる。


つう隊列に切り替えた方が良いんじゃねぇか?』


ウミシシさんの声が頭の中に響き渡る。



『ならば、ピックアップトラックの2列目は、ハウシとネクが座り、助手席のフミナリ様とともに、ドライバーのスナギのサポート。


そして、ウミシシ様には、我々のトラックの2列目に移って頂き、全体の指揮に専念して頂くのが宜しいかと思いますね。』


コラツラさんの声が頭の中に響き渡る。



『ヤドカリ商会が、この変更に異論がねぇならば、

今、言った隊列に速やかに変更したいのだが……どうだ?』


ウミシシさんの声が頭の中に響き渡る。



『ウチとしては、問題あらへんと思うけど、皆、どうや?』


レイヒちゃんの質問が携帯電話から聞こえてくる。


『問題無いと思うぞ。』


「妾も良いと思うぞ。」


ナシアタ君とムンナちゃんが即答する。


「皆が大丈夫。ってならは、良いんじゃない。

パパも問題無いよね?」


「うん。」


僕は、嫁の質問に頷く。



『ヤドカリ商会も隊列の変更に異論は無いです。』


レイヒちゃんの声が頭の中に響き渡る。



『よし。隊列を組み直すぞ。

トラック2台は、その場で待機してくれ。』


『畏まりました。』・『了解や。』


ウミシシさんの指示にコラツラさんとレイヒちゃんが短い返答を返す。



ーーーーーーー



『こちらハウシ。

待たせたね。出るよ。』


ハウシ様の声が頭の中に響き渡るのと同時に、

スナギがピックアップトラックを、ゆっくりと加速し始める。



「風や雪をシャットアウトしてくれるだけで、体感温度が全く違うな。


ヤドカリ商会の連中が、申告した以上に動ける奴等で助かった。


正直な話、

このまま、気温が下がり続けたら、朝まで身体が持たねぇんじゃね?って、内心、ドキドキしてたからね。」


ハウシ様が、ホッとした顔で話される。



「ハウシさん。

気持ちは分からなくもないですけど……

ホッとされるのは、幽霊隧道トンネルを通り抜けてからにして下さいませんかね?」


フミナリ様が苦笑いされながら、前方の幽霊隧道トンネルを睨みつけてられている。



「あんたは、ちと落ち着きな。

幽霊達は、折角、何もしようとしてないんだ。


こっちの殺気のせいで、自衛の為に攻撃を仕掛けて来られた。とか……マジで洒落にならんぞ。」


そんなフミナリ様をハウシ様が嗜められる。



「まもなく幽霊隧道トンネルに入ります。

お戯れは幽霊隧道トンネルを出てからにして下さいませ。」


「へいへい。」・「了解。」


スナギの苦言にハウシ様とフミナリ様が素直に頷かれる。



◇◇◇



「天井に張り付いている、ムカデやサソリすら落ちて来ない。


気持ち悪いぐらい何も仕掛けて来ないねぇ。」


「えぇ。


あの攻撃は、正直、心を抉られるようで嫌いではありますが……


こうも大人しいと逆に不気味ですね。」


ハウシ様のお言葉にフミナリ様が頷かれる。



結界の魔術で身体をコーティングし、

結界魔法が付与された外套も着ているとはいえ……

剥き出しの身体で夜の幽霊隧道トンネルに入るのは、気が引けていた。


そして、ハウシ様の仰られるように、刻一刻と寒さが増す状況にも不安を覚えていた。



あの時、ヤドカリ商会の連中にコンタクトを取る。というウミシシ様達のご判断は英断だったようだな。


しかも彼女達は能力だけでなく、

身分の差を考えれば生意気な奴等ではあるものの……

それを差し引けば気持ちの良い若者達。って事も、俺的には高ポイントだ。



◇◇◇



「さっぶ。」×4


俺達は、同時に呟いた。



『こちらハウシ。

隧道トンネルの外は死ぬほど寒い。

気をつけろ。』


『こちらグンミ。


私達も隧道トンネルを、今、出ましたわ。


確かに酷い寒さですわ。


先刻、隊列を組み換えて正解だったみたいですわね。』


どうやら念話を使ったハウシ様の情報共有は、グンミ様達には、少し、遅かったようだ。



『確かに、この寒さの中、クアッドで先導を続けるのは流石に無理。

ヤドカリ商会との善き出会いに感謝だわ。』


グンミ様のお言葉にハウシ様が頷かれる。



『ヤドカリ商会の方々も隧道トンネルを出られたみたいですが……


運行に支障は出ていませんよね?』


『ご心配、有難うございます。

今んとこ問題無いです。』


フミナリ様のご質問にレイヒちゃんがハキハキと答えてくれる。



『それは良かった。

我々は臨時とはいえチームです。

何か有れば、念話を使って連絡して下さいね。』


『了解です。

何かありましたら、頼らせて貰いますわ。』


フミナリ様のご質問にレイヒちゃんがハキハキと答えてくれる。


身分の差を考えなければ……本当、気立てが良い娘さんだわ。



ーーーーーー



『皆、大丈夫か?』


『ハウシの念話を聞いて、直ぐにワンゾウのクレートに飛び込んだにゃ。


そのお陰で事にゃきを得たにゃ。』


レイヒちゃんの質問にシャーコが元気な声で返答を返す。



「パパに【異空間加工倉庫】に保管して貰ってたペットボトルに入ったホットコーヒーを出して貰ったから、なんとかなりそうよ。


そっちも必要?」


『うん。

念力で取るさかい、驚かんとってや。』


「了解。

解放リリース』×2」


レイヒちゃんの嫁への返答を聞いた僕は、

【異空間加工倉庫】からペットボトルに入ったホットコーヒーを2個、取り出して、手に持った。



【ガチ。】


何かがペットボトルの下を掴んだ気がした。



『離して良えよ。』


「了解。」


僕はレイヒちゃんに短い返答を返すと、両手に1個づつ持っていたペットボトルから手を離す。



【ユラユラ】



運転席とダイネットを繋ぐ、小さなトンネル(ウォークスルー)を、プカプカと浮いた2個のペットボトルに入ったホットコーヒーが、ゆっくりと進んでいく。



『にしても……

ウチ達、この辺の幽霊達からめちゃくちゃビビられてはるみたいやね。』


『ハウシさん達が言ってた謎の存在。ってのは……俺達の事だったのか?』


レイヒちゃんの呟きにナシアタ君が反応する。


『せやで。』


レイヒちゃんが笑いながら頷く声が携帯電話から聞こえてくる。



『力が強くなり知恵を取り戻した幽霊は、

精霊やあやかし。猫系や犬系のモンスターや【祈祷師】のジョブ補正を持った人間。

特異点のアサグや妖人を恐れるようににゃるにゃ。


アタイ達にビビるという事は、それだけで、かなり強い幽霊が居るという事にゃ。


そんでもって、ハウシ達が訝しがっていのるは…… アタイ達の正体に気がつけていにゃいからだろうにゃ。』


笑いながら話すシャーコの声が携帯電話から聞こえてくる。



『結局のところ、人間が一番、賢くて、間抜けでもある。って事じゃな。』



【ドォォォォーン】・【ドォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォーン】

【ドォォォォーン】・【ドォォォーン】



断続的な爆発音が、僕達の通って来たトンネルの向こう側から聞こえてくる。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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