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ヤドカリ姫は異世界の扉をひっそりと開ける  作者: モパ
【第1章】小さな波紋
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異変(前編)

『このまま、走り続けて良いのか?』


『せやね。

止まるよりかは、まだ、まっしや。』


ナシアタ君の質問にレイヒちゃんが短い返答を返す。



「ムンナちゃん。


ニンムシュ。って奴は【空の目】の映像を見れるの?


そんでもって【空の目】の映像を録画したりしてると思う?


後……何時頃、ムンナちゃんが持っている勾玉が奉納されていた祠を調査しにくると思う?」


僕は、気になった事を片っ端から聞いてみた。



「詳しい話は、また、今度するとして、(あと)3日は、ニンムシュは【空の目】の映像を見れない筈じゃ。


それと……

妾が知る限りでは、主達が持っておる携帯電話のような持ち運びが可能な小型の通信機器は、この世界では管理者か神仏の代理人以外に持っておる者はおらぬ。


もし、この森の異変に気がついた冒険者の中に鳥系のモンスターを使役しておる者が居たとしても、

通信機器を持っておる最寄りのギルドの出張所に連絡が届くのは半日~1日は時間がかかる筈じゃし、


異変に気がついた冒険者達の中に鳥系のモンスターを使役しておる者が居らねば、

その連絡が最寄りのギルドの出張所へ届くのは更に遅れるじゃろう。


そして、ニンムシュが動くのは、

その報告がギルドに上がってから、最低でも1日~2日はかかると思う。



じゃが、楽観視は出来ぬ。


ニンムシュは、妾と同じ超越点のアサグで、

あの場所にマーキングをつけておる筈じゃ。


じゃから、あやつが動くと決めたら、

勾玉が奉納されておった、あの祠の最深部まで部下を引き連れて、瞬時に移動する事が出来るからじゃ。



最後に、妾の知る限りでは、【空の目】の映像の記録を過去に残せるような魔道具は見た事も聞いた事も無い。」


ムンナちゃんが、僕の質問に真剣な顔で答えてくれる。



◇◇◇



『ここから、一番、早く行けそうな森林限界を越えた場所にある町は、ネギハタ高原国ちゅう国の西都ちゅう町や。


シャーコやムンナちゃんの話を聞く限り、

目的地をジハリマの町から、ネギハタ高原国の西都に変えた方が良さそうやね。』


『だな。

レイヒ。ルートの再設定をしてくれ。』


レイヒちゃんの話を聞いたナシアタ君がルートの変更を求める。



『ルートの再設定をしたよ。


とりあえず、朝に着いて、

昼から採掘する予定の魔石が剥き出しになってはる場所まではルートの変更はあらへんよ。


そこから、北に向かってジハリマの町へ続く【ギルドの作業道】が続いてはって、

西に向かってネギハタ高原国へ続く【ギルドの作業道】が続いてはるんや。』


『了解。』


ナシアタ君が短い返答を返す。



「また、雪が降り始めたわね。

元の世界に居た時は、ワクワクしたものだけど……

今は、止んでくれ!って、本気で思うわ。」


嫁が窓の外をタメ息をつきながら眺めている。



「主達に迎えて貰っていなければ、

今晩も、シャーコとワンゾウと洞窟の中で寒さに震えながら、夜が明けるのを必死で待っておったじゃろうな。


主達には、本当に感謝しかないわ。」


『だにゃ。


特に足元が暖いのが嬉しいにゃ。


ワンゾウは、冬ににゃると寒いのが苦手なアタイを気遣って、ちょくちょく、起きてくれるんにゃが……


今日は、安心しているのか、明日の朝からの警備に備えて、イビキをかきながら爆睡してるにゃ。』


ムンナちゃんとシャーコが嬉しそうな声で話す。



そして、先刻から、ワンゾウが何も言わなかったのは、既に寝ていたからみたいだな。



■■■



【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】

【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】

【ゴロゴロゴロ】・【ピカッ】・【ズドォォーン】



【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】

【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】

【ゴロゴロゴロ】・【ピカッ】・【ズドォォーン】



【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】

【ブォォォー】・【ブォォォー】・【ブォォォー】

【ゴロゴロゴロ】・【ピカッ】・【ズドォォーン】



時刻は3時。

吹雪だけでなく、雷まで鳴り始めた。



『敵か?』


『雷にゃ。』


鋭い声を上げるワンゾウに、シャーコが笑いながら答える。



『そうか。

思ってたよりも深く寝入ってたみたいじゃのう……』


『気にするにゃ。

明日の朝からの警備に備えてゆっくり寝とくにゃ。』


『うむ。

おやすみ。』


ワンゾウは再び眠るらしい。



「妾が、ちょっと寝ておった間に、外は更に酷い事になっておるみたいじゃのう。


ナシアタには苦労をかけておるのう。」


ダイネットの中央に置かれた机に突っ伏して寝ていたムンナちゃんが、目を擦りながら窓の外を見ている。



『大丈夫だ。


このキャンピングカーのタイヤはスパイクタイヤだから、凍結した道も、雪が積もった道も、ガシガシ走れるんだよ。


あまり降りすぎるのは勘弁して欲しいが、これぐらいの積雪量ならば問題無いよ。』


笑いながら話すナシアタ君の声が携帯電話から聞こえてくる。



「そうか。

それは良かった。」


ムンナちゃんが、ホッとした顔をしている。



「ナシアタ君のご実家がスパイクタイヤの指定地域で、

このキャンピングカーやカーゴトレーラーにスパイクタイヤを履かせてくれてなかったら、


確実に詰んでいただろうね。」


『確かに。


何もないド田舎の出身だという事がコンプレックスだったのですが……


今はド田舎に生まれて良かった。って、堂々と言えますよ。』


ナシアタ君が笑いながら、僕に返答を返してくれる。



■■■



『はぁ……

後、30分もしやんうちに、昼から採掘する予定の魔石が剥き出しになってはる場所に着くんやけど……


よりにもよって、ネギハタ高原国の王家の紋章が入った旗を掲げてはる一団が動かずに居はる。



因みに、ミンボン連邦のジハリマの町のギルドの出張所が、

Fランクと呼ばれる見習いという立場からのスタートやのうて、Eランクと呼ばれる普通の登録者の底辺からスタートする事が出来る理由は、ギルドに登録をせずに、この森で狩猟や採集をする人が多いかららしいんや。


せやから、ギルドに登録せずに、この辺りをウロウロしてるんは、おかしない。



せやけど……

もし、色々、聞いてきはったら、ウチ達が、何の素材も集めてへん事に疑問を持ちはるかもしやん。


大きなお世話。ちゅうたら、それまでやし、

この森は、何処の国の領土でもあらへんから、無視っても文句を言われる筋合いもあらへん。


せやけど……

怪しい奴等や。ちゅうて、ネギハタ高原国への入国を拒否されたら面倒や。



考え過ぎかもしやんけど……

そうなっても乗り切れる設定を考えとかんといけん気がする。』


レイヒちゃんの真剣に話す声が携帯電話から聞こえてくる。



「今は、どうか知らぬが、

少なくとも30年前までは、妖魔虫キノコは薬の材料として高値で売られておった筈じゃし、最近も妖魔虫キノコを採集しに来る冒険者は、それなりに居る。


そして、この辺りでは妖魔虫キノコは、勾玉が奉納されておった湖の周辺のみ。


じゃから、妖魔虫キノコを採取しに来たが、異変を感じて引き返した事にすれば、何の素材も持っておらんでも不自然ではない筈じゃ。」


『ジハリマの町のギルドの情報機器を盗み見してみたら、妖魔虫キノコは高値で売り買いされてはるみたいやわ。


せやから、ムンナちゃんの考えてくれはった設定でいくんが良え思うわ。』


レイヒちゃんの弾んだ声が携帯電話から聞こえてくる。



【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】

【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】

【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】


【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】

【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】

【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】


【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】

【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】

【ボワァァー】・【ボワァァー】・【ボワァァー】



窓の外から紫色の光が射し込み始めた。



時刻は4時。


こっちの世界の朝焼けは、赤色ではなく、紫色なのだろうか。


それにしても……物凄い幻想的な光景だな。

まるで、紫色のスポットライトでライトアップされているように見える。



「そう言えば、ムンナちゃんが持っている勾玉が奉納されていた祠がある湖を【空の目】で見た時に、湖の周りの地面が、こんな感じの色で光ってたわよね……


この光も、やっぱり、地面が光ってるのかなぁ……

不思議よね……」


嫁が、そう言いながら、窓の外を見つめていた。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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