第219話 昇格試験1
俺たちは先程の事を報告するためにギルドに帰って来た。
ギルド嬢もこんなに早く俺たちが帰ってくるとは思っていなかったらしく、少し驚いた表情をした。
そんなギルド嬢の心情は知らんとばかりに俺はギルド嬢の元へ行ってクエスト用紙を提出する。しかし、もちろんこれはクエストをクリアするためではない。報告のためだ。
「このクエスト、虚偽だった。本当はこんなクエストなかったんだよ」
「と言いますと?」
「盗賊に襲われた。しかも、ただ襲われただけではなかった……待ち伏せされていた」
行商人が待ち伏せされて襲われるのはよくあることだが、俺たちのような無名の、しかもあんな森の中で待ち伏せされているなんて不自然以外の何物でもない。つまり、このクエストは俺たちを襲うために発注されたものだとわかる。
するとギルド嬢の顔が真っ青になっていく。この反応は予想外だ。俺の予想では「大丈夫でしたか?」位で済むと思っていたので、ここまで顔面蒼白にされるとこちらとしては反応に困ってしまう。
「大丈夫でしたか? 重症人は!?」
「なんで重症人が居る前提なんですか。いませんよそんなの、みんなピンピンしています」
「え、うそ」
今度は信じられないというような表情に。ちょっと俺たちを甘く見すぎじゃないですかねギルド嬢さん。
あの程度の盗賊ならどれだけ増えても関係なかった。何せ俺らは誰一人として本気を出さずに撃退することに成功したのだからな。このギルド嬢さんは心配しすぎだ。
「普通、Eランク冒険者は盗賊に出会ってしまったら全滅必至のはずなんです。ですがそれを全員無傷で……」
そうだったんだ。まぁ、戦い慣れていないEランク冒険者はいいカモになるだろう。しかし、俺らは今までずっと修行をしてきた集団。
確かに俺らの中に冒険者として慣れているマイがいるが、それ関係なしに俺たちは戦い慣れているってのがある。
つまり、あの盗賊たちはEランクでは自分たちに適う冒険者はいないと考えてカモが来たと思っただろう。
でも今回は運が悪かったってことだな。
「俺らは今までずっと戦ってきたもので戦い慣れているんですよ」
「なるほど、これならあなた方はもっと上に行けますね。上に掛け合ってみます」
ギルド嬢はそう言って裏に行こうとするが俺はそれを止めた。確かにランクが上がれるのは嬉しいが、ポイントを集めないとランクを上げられないはずだ。
なのでここで上げてもらってしまったらズルをしているような気分になってしまう。
「俺達はポイントを集めて地道に上げていきますよ」
「あなた、生真面目な方ですね」
俺が真面目? 笑わせないでもらいたい。俺ほど真面目じゃない人はこの世のどこを探してもいないレベルだと自負している。
俺が真面目ならばカナタに魔王討伐を頼まれた時に断ったりしないだろう。ってことある事にカナタの事を考えてしまっているな。全然忘れられない……。
「でも、あなた方のような強い方にはEランクで留まって貰ってては困るんですよ……。そうです!」
今度は何を言い出すのか。そう思っていたら俺が最も面倒くさいと思っている提案をしてきた。
「ギルドマスターと決闘してギルドマスターが認めたらランクを上げましょう。ついでにクランマスターが認められたらクランのランクも上げます! どうですか?」
「うん、面倒」
決闘なんて早々したくはない。決闘はたまに腕試しとしてやるくらいでちょうどいい。見ず知らずの人と決闘するのは絶対に避けたい。
でもこの答えはサキとスイの二人は分かっていたようで、呆れたような表情をした。でも、決闘なんてしても何もいいことないぞ? ただ疲れるだけだ。
そんなわけで俺が断ろうとしていると、一人の人物が手を挙げた。
「はい! 私、やるよ!」
そう言って手を挙げたのはユキだった。面倒くさいことをしてくれた。これで断りにくい雰囲気ができてしまった。
それに続いてサキ、スイも手を挙げる。これで残すは俺とマイだけ。
「マイはやるのか?」
「ん? やらないよ」
よし、救われた。これで味方が一人増えたぞ。そう思っていたのだが、マイの次の言葉を聞いて絶望のどん底に突き落とされた。その言葉とは――
「だって私、Cランクだし上げる必要がないですから」
「この裏切り者!」
まさかマイがCランク冒険者だったなんて。でもこれのせいで俺たちのクランは異様に見えたかもしれない。なにせ、Cランク冒険者が所属しているのにクランマスターはEランク冒険者なんだから。
でもこれで俺だけ断ったら変に目立ってしまう。うちのクランも『ブレンド』と同じ異様な好奇の目で見られてしまうかもしれない。それだけは避けたい。
「はぁ、仕方がない……やってやるよ」
「では全員昇格試験を受けるということでギルドマスターに掛け合ってみます」
面倒なことになってしまった……。でもポジティブに考えたらこれに合格したら討伐クエストを受けられる。討伐クエストをやりたかった俺としてはそう考えないとやってられない。
なら合格するために頑張るしかないか。




