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第202話 『HOPE』2

 やっぱり『ブレンド』か……というような蔑んだ声が客から聞こえてくる。どうやらこの街では問題児たちの集まりとして有名らしい。俺にとってはダントが一番の問題児なのだがあれみたいなのが他にもいるのか……。さっきまで『SWORD』の心配ばかりしていたが、この『ブレンド』の未来も心配になってくる。


 しかし、よくこんな所に入って行けるよな。俺だったらもし意義を申し立てたくとも無理だ。無駄な勇気って奴だな。

 でもなんだか面倒くさそうな展開になってきやがったな。『ブレンド』はしばらく見たくなかったのに、その翌日に見ることとなるなんて思いもしなかった。こんなことなら見に来るべきじゃなかったか?


「おいおい、俺ら『ブレンド』が最強だ。『SWORD』ごときがしゃしゃり出てんじゃねぇーぞ?」

「おい、ダント。その発言は聞き捨てならないな」


 そうダントの言葉に反応したのは『SWORD』のジェイサーだった。ジェイサーはとても仲間思いなようで、自身の仲間が貶されたのは許せなかったようだ。

 そんなジェイサーをダントは睨みつけた。一応このパレードが台無しにならないようにここら一帯は魔力量が制限される結界でおおわれているため、威圧で客が倒れることは無いが、これによって最悪の空気になってしまったことには間違いない。


「すみません、本当にすみません」


 何も悪くないマイが客一人一人に謝って廻っている。本当に健気でいい子だ。

 客もそんなマイを見てほっこりとする反面、ますますダントへの怒りが増幅していく。ちなみに俺も怒りが増してきている。


「本当にすみま――ジャックさん!?」

「よぉ、マイ。災難だったな」


 客一人一人に謝って廻るって事は当然俺のもとにも謝りに来るのだ。

 そんなマイを見て可愛そうになってしまったのでついつい頭を撫でてしまった。


「おい、マイ。んな奴らに謝って何してんだ」

「え、だって」

「そいつらに謝る必要はねぇ。だって俺らが最強なんだからな」


 最強最強って……最強だからってやっていい事と悪いことがあるんだ。そんな態度が気に食わない。だけどここで俺が出てどうなる訳でもないので我慢する。


「おい、なんで謝ったりしたんだ? 俺の主張が間違ってるって言うのか? あぁん?」

「痛い痛い!」


 ダントはマイのこめかみをグリグリし始める。とても痛がっており、見ていられない後継となっていた。

 そんな時、声が聞こえた。マイの心の叫び、「助けて」という言葉が。

 その瞬間、俺は居ても立ってもいられなくなった。後先考えずにダントの前に出たのだ。


「お、お前はあの時の卑怯者!」


 卑怯? どこがだ。俺は一度も卑怯な真似をした記憶はない。一回威圧を放っただけだ。つまりこの男は自分に都合が悪い事情は相手のイカサマだと決めつけて今まで傲慢に生きてきたって訳か。どこの世界にもいるんだな。

 例えばオンラインゲームで自分は強いと思って戦っていたのにいざ負けるとそのことを認めず、相手のチートだと自身の弱さを棚に上げて相手を責める。

 俺もオンラインゲームをやっていて、常に上位ランカーになれるくらい課金もしない、自身のPS(プレイヤースキル)のみで頑張っていた。

 なのに実際に戦って上位ランカーの人に勝ったら重課金勢と罵られる(・・・・・・・・・)。そういう人種が俺は大嫌いだ。禄に頑張りもせず、自分が勝てないのは相手のせいだという。


「嫌いだ」

「あぁ?」

「死ねばいいのにとすら思っている。だけど俺はそんなことはしないから安心しろ、今のところ俺が人族で殺したいと思っているのは一人だけだ」


 俺のその言葉はダントの逆鱗に触れてしまったらしい。血管ピキピキで怒っている。ついでに変な顔になっている。

 こいつは冒険者じゃなくて顔芸師になったらどうだ?


「決めたぜ! 今俺はこいつを殺すことに決めた!」

「ジャックさん、逃げて!」

「ただ死ぬだけじゃ物足りないからてめぇを永久に出てくることは出来ず死ぬことも許されない時空の狭間に閉じ込めてやる」


 ほう、俺の肉体じゃなくて精神を殺すときたか。これは予想以上の外道っぷりだ。


「ジャックさん! 逃げて」

「もう遅い! 『永久の牢獄(エターナルプリズン)』」


 ダントは直ぐに詠唱を済ませると俺に魔法を放ってきた。その瞬間、俺の意識は別次元の何もない真っ白な世界に飛ばされた。

 どうやらこの魔法は回避不可能の必中技のようだ。これだけの効力のくせにチートすぎるんじゃねぇの? この発動速度は……。

 でもこれからどうしたものか。さすがに俺もここにずっと居るのは気が狂いそうだ。俺以外だったら完全に出ることは叶わずに気が狂ってしまうだろう。

 だけど俺には上書きがある。


「上書き」


 出力を弱く設定した上書きを使うと空間が少し揺れたような気がした。これならいつでも出られそうだ。

 ここは何もない世界。ここでなら普段は練習することが叶わない危ない魔法の練習もできるな。


 まずは……


爆裂魔法(エクスプロージョン)


 しかし何も起こらない。やっぱりダメか……なら、これならどうだ。


「スキル発動『身体強化』」


 スキルなら無詠唱魔法も打てるんだし、これなら打てるんじゃないかという考えだ。


「爆裂魔法」


 その瞬間だった。俺の目の前で大爆発を起こしたのだ。つまり、俺を巻き込んで大爆発。スキルを使っていたからいいものの、生身だったらかなり危なかった。

 でもこれでスキル状態なら捨て身の技としてなら使えるってことがわかった。捨て身ってのが気に食わないが……。

 これでもう出よう。


「上書き」


 こうして俺は確認に満足したため、真っ白で何も無い世界を破壊した。

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